【1992~2018全カラー大図鑑】エストレヤは250単気筒ロングストローク専用エンジンを搭載した名車だった

【1992~2018全カラー大図鑑】エストレヤは250単気筒ロングストローク専用エンジンを搭載した名車だった


●記事提供: ライドハイ編集部 ●文:根本健 ●写真:カワサキ

直立単気筒はオフ車から転用せずロングストロークの専用設計!

1980年代のレプリカ全盛が過ぎると、各メーカーはパフォーマンス追求から多様なニーズを前提に様々なカテゴリーのモデルを投入した。

そんな中、トラディショナルやクラシカルといったキーワードで登場するバイクが増えはじめる。

カワサキも1992年5月に250単気筒のエストレヤを発表、ただそのアプローチには他と違い並々ならぬこだわりが貫かれていた。

トラディショナルやクラシカルなバイクといえば単気筒。このシングルエンジンを、売れるかどうかわからないこともあって、ほとんどがオフロードモデルからの転用をベースに開発するのが常套手段だ。

このカテゴリーのレジェンド、ヤマハSR400/500の単気筒もオフロードモデルのXT500がベース。

オフロードモデルは、マッドや瓦礫で方向転換にスパッと路面を蹴る俊敏なレスポンスが必須、それと凹凸を乗り越えるのにエンジンを路面に打ちつけたくないので上下に短いエンジン高も求められる。

だからどれもショートストローク。対してロードモデルのシングルはロングストロークに設定するのが英国などノウハウのあるメーカーの王道、低い回転域のトルクや高回転時のトップスピードを稼ぐためにも、クランクの慣性力を活用できるロングストロークが優位だからだ。

エストレヤは66.0mm×73.0mmと、明確なロングストローク。249ccで20PS/7,5000rpmと2.1kgm/6,000rpmは、インレットポートのストレート化やバルブタイミングとマフラー構造の工夫に1軸の1次バランサーも駆使して、250ccなのにセカンドギヤで発進もできるトルクを優先した特性だ。

また見た目にもクランクケースからバーチカル(直立)にシリンダーがにょきっと聳えるカタチにこだわり、バランサーやセルモーターをシリンダー背面に置かず、クランクケース上面をフラットにしている。

左のカムチェーントンネルも、テンショナーの膨らみが美しくないとシリンダーヘッドの上部内側に置き、カムチェーンカバーを防振構造を兼ね内側にラバーを挟むゆとりを与えたデザイン。

左右で表情のまるで違うルックスに、逞しく粘るチカラ強さ、弾ける低周波エキゾーストノート……エストレヤはそもそもからカワサキならではのこだわりを貫く、全く次元の異なる単気筒なのだ。

かくして1992年の登場以来、上の2017年にリリースされたファイナルエディションまで、25年以上ものロングセラーとして不動の人気を獲得していた。

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