
潤滑や冷却、駆動力の伝達にも重要な役割を果たしているバイクのエンジンオイルは、人間に喩えれば血液のようなもの。グレードや粘度にこだわり、走行距離や使用期間によって定期的に交換することが重要なのはもちろんだが、エンジン開発初期から使用されるヤマルーブなら、バイクならではの特性にマッチしている点も大きな安心材料となる。
●文/写真:栗田晃 ●外部リンク:ワイズギア
エンジンと同時進行で開発されるオイルの重要性を再確認
シリンダーとピストンやクランクシャフトのジャーナル部分、クリアランスが狭い部分など、エンジンの隅々にまで行き渡って潤滑や冷却などの役割を果たしているエンジンオイル。
その交換時期は走行距離/使用期間/使用状況などから判断するが、劣化したオイルは粘度の変化/耐摩耗性の低下/分散性の低下/清浄性の低下/摩擦低減制の低下等の不具合が生じ、エンジン性能低下の引き金になることもある。ベースオイルや添加剤の改良による進化はあるものの、定期的な交換は必要だ。
エンジンオイルは液体パーツであるという位置づけの下、早くからバイクの特性に合わせたエンジンオイル開発を行ってきたヤマハ発動機。「YAMALUBE(ヤマルーブ)」と名付けられた純正オイルは、リーズナブルな鉱物油/コストパフォーマンスの高い部分合成油/高性能を追求した化学合成油のそれぞれで粘度変化が少ない粘度指数が高いベースオイルを採用。
さらに、日本自動車技術会が定めたバイク用エンジンオイルのJASO規格よりも厳しいヤマハ基準を独自に設定し、その基準をクリアしたオイルをヤマルーブとして販売している。
メーカー純正オイルは価格も性能も中ぐらいで、大きな欠点がない代わりに取り立てて注目すべき点はないと思い込んでいるサンデーメカニックもいるかもしれない。
しかし、1970年代からエンジンの進化に合わせて連綿とオイルの開発を続けてきたヤマハは、時代ごとの最先端エンジン本来の性能を最大限に引き出すオイルを作り出してきた。つまりヤマルーブこそトレンドの最先端にあるエンジンオイルなのである。
どんなオイルでも、走行距離や使用期間によって交換時期は否応なく訪れる。その際にヤマルーブを選択することで、バイク専用オイルの真髄に触れることができるはずだ。
RS4GP:MotoGPテクノロジーをフィードバックしたヤマルーブシリーズの最高峰
高性能100%化学合成油をベースオイルに使用し、最新の添加剤技術を採用することで、油温が低い領域での柔らかさと高温時の強力な油膜性能を両立。
SAE粘度規格は10W-40だが、常温時の実粘度はヤマルーブの他製品よりも柔らかく、始動直後のスロットルレスポンス/シフトタッチ向上/燃費向上にも役立っている。
【ヤマルーブRS4GP】●価格:4400円(1L) /1万5840円(4L)
簡単な作業だからと手を抜かず、ミスやトラブルなくオイル交換を行おう
ヤマハWR250Rは、2007年に発売開始された公道用トレールモデル。最高出力31馬力を1万回転で発生する高回転型のエンジンを搭載し、走行6000kmまたは1年ごとのオイル交換が指定されている。
林道やエンデューロコースでクランクケースを保護するアンダーガードを取り付けている車両は、あらかじめ取り外してからオイルドレンボルトを抜く。エンジン底面の泥汚れも事前に掃除しておこう。
これまで使用したオイル(右)もRS4GPで、前回交換してから1年ほど経過。エンジン内部を洗浄して真っ黒というほどではないが、鮮やかな赤色が特徴の新油に比べれば明確に汚れている。
エンジン本体から抜けるのを待ちながら、3本のボルトを均等に緩めてオイルフィルター交換も行う。取扱説明書にはオイル交換3回に1度(走行距離1万8000kmごと)の交換が指示されている。
外筒のないエレメント式オイルフィルターは濾紙がキャッチした異物を確認しやすい。エンジン内部の状況を知る一助にもなるので、フィーリングに違和感はなくても、捨ててしまう前にチェックしておこう。
オイルフィルターカバーには大小2個のOリングがセットされている。ヤマハ純正パーツでは各リングが個別で設定されているが、社外品のオイルフィルターにはOリングが付属した製品もある。
カバー内側やエンジン側のフィルターケース内に金属の摩耗粉などが付着していないことを確認し、ブレーキ&オイルクリーナーで洗浄する。拭き取り時に毛羽が残らないウエスを使うことも重要。
クランクケースカバーとフィルターカバーの合わせ面にダウエルピンはなく、M6ボルト3本で締め付けるだけなので、Oリングがずれないよう少量のグリスやオイルで溝に貼り付けておくと良い。
小径のOリングはクランクケース側に加工してある座面にセットする。ここでも少量のグリスやエンジンオイルを塗布して貼り付けることで落下を防止できる。Oリングは大小どちらとも新品に交換する。
円筒形のオイルフィルターは両端面の形状が異なり、穴が空いている方を手前(フィルターカバー側)に向けてエンジンにセットする。逆向きだとカバーがセットできないため、誤組みすることはない。
泥まみれの状態でドレンボルトを取り外すと、ボルトやエンジン側のネジ山に砂利が付着してかじりの原因になる。それゆえオイルを抜く前の洗車が重要だが、組み付け前も再度クリーナーで洗浄する。
ドレンガスケットはボルトを締めると潰れてオイル漏れを防止する(右)。一度外すとボルトやエンジンとの当たり位置が変化してシール性が保てなくなることもあるので、締め付け時は新品を使用する。
ネジ山を傷めないよう、ドレンボルトは指で回してエンジンに取り付け、ガスケットが接したら工具を使って締め付ける。トルクレンチを使用する際は規定トルクの20Nmで締め付ける。
エンジンオイル量はオイル交換時が1.3L、オイルフィルター取り外し時は1.4Lとなる。ジョウゴやオイルジョッキなどを活用しながら、周囲にこぼさないよう全体の80%程度を注入する。
エンジンを短時間始動してオイルを行き渡らせ、2〜3分後にオイル点検窓で油量を確認して、ロアレベル以下の時は追加する。1.3L(または1.4L)という容量もさることながら、実際の油面確認が重要。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
バイクいじりの専門誌『モトメカニック』のお買い求めはこちら↓
モトメカニックの最新記事
ギボシ端子取り付けのポイントをおさらい バイクいじりのレベルやセンスは、その人が手がけた作業の跡を見れば一目瞭然。電気工作なら配線同士をつなぎ合わせる際、芯線をねじってビニールテープでグルグル巻きにし[…]
バイクとの親和性はスマホを圧倒的に上回る AKEEYOが販売する「AIO-6LTE」は、太陽光の下でもはっきり見える視認性の高い大型6インチのIpsモニター、Wi-FiとBluetoothによるスマホ[…]
販売終了が続く絶版車用純正部品を信頼のMADE IN JAPANで復刻 長期間不動状態だったバイクを再始動する際、キャブレターやガソリンタンクの状態もさることながら、クラッチの張り付きも懸念事項のひと[…]
フレキシブルプラグソケット:スリムな外径で汎用性をアップした、ユニバーサルジョイント一体ソケット 最初は指でねじ込んで、ネジ山が噛み合ってからプラグソケットを使うのが理想だが、雌ネジがプラグ穴のはるか[…]
メーカー自体が存在しない絶版車のメンテやレストアは難しい 日本のバイクメーカーは今でこそ4社に集約されていますが、1950年代には大小含めて数十社のメーカーが林立していました。第二次世界大戦で疲弊した[…]
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
ギボシ端子取り付けのポイントをおさらい バイクいじりのレベルやセンスは、その人が手がけた作業の跡を見れば一目瞭然。電気工作なら配線同士をつなぎ合わせる際、芯線をねじってビニールテープでグルグル巻きにし[…]
販売終了が続く絶版車用純正部品を信頼のMADE IN JAPANで復刻 長期間不動状態だったバイクを再始動する際、キャブレターやガソリンタンクの状態もさることながら、クラッチの張り付きも懸念事項のひと[…]
フレキシブルプラグソケット:スリムな外径で汎用性をアップした、ユニバーサルジョイント一体ソケット 最初は指でねじ込んで、ネジ山が噛み合ってからプラグソケットを使うのが理想だが、雌ネジがプラグ穴のはるか[…]
皮脂や汗に含まれる尿素が生地を痛めてしまう ──一般の方が汗でびちょびちょのヘルメットをリフレッシュさせたい場合、どのように行えばよいでしょうか? 「どこが外せるのか、どういうふうに洗えばいいのかは、[…]
論より証拠! 試して実感その効果!! 世界的に知られるプレミアムカー用品ブランド・シュアラスターが、アメリカのカリフォルニア州ロングビーチで創業したのは1947年のこと。以来、カーシャンプーやワックス[…]
最新の関連記事(オイル/ケミカル)
論より証拠! 試して実感その効果!! 世界的に知られるプレミアムカー用品ブランド・シュアラスターが、アメリカのカリフォルニア州ロングビーチで創業したのは1947年のこと。以来、カーシャンプーやワックス[…]
Yoeyang 高圧洗浄機 場所を選ばず使える高圧洗浄機。本体わずか574gの業界最小最軽量(約20×7×18cm)ながら、8MPaの強力な水圧を発揮し、車やバイクの泥汚れや窓の隅など頑固な汚れも簡単[…]
ユーザーからのリクエストで開発! ホイールの鉄粉をスプレーひと吹きで溶解 バイク/クルマを問わず、ディスクブレーキでもドラムブレーキでも発生するブレーキダスト。制動時にブレーキローターやブレーキドラム[…]
赤サビの上から直接塗って黒サビに転換。愛車を守るBAN-ZIのラストロックシステム 【RUSTLOCK(サビ転換下処理剤)サビキラープロ】赤サビの上から直接塗ることで黒サビに変化する転換剤機能と、上塗[…]
ドロ汚れだけではなく油汚れにも効果てきめん。分解前には周囲の汚れ落としが基本 台風被害による河川越水時にエンジン腰下まで水没したカワサキW1‐SA。その後、放置期間がしばらく続いたが、嫁ぎ先が決まった[…]
人気記事ランキング(全体)
“グローバルカラー”をうたうマットパールホワイト インディアヤマハモーター(IYM)は、水冷単気筒エンジンを搭載するフルカウルスポーツ「R15 V4(V4=第4世代の意 ※日本名YZF-R15)」の新[…]
9/10発売:スズキ アドレス125 まずはスズキから、原付二種スクーターの定番「アドレス125」がフルモデルチェンジして登場だ。フレームを新設計して剛性を高めつつ軽量化を実現し、エンジンもカムシャフ[…]
20年ものロングランは、ライバルに気をとられない孤高を貫く開発があったからこそ! カワサキは1972年、DOHCで900ccと先行する初の量産4気筒のCB750フォアを上回るハイクオリティなZ1を投入[…]
9月上旬~中旬発売:アライ「RAPIDE-NEO HAVE A BIKE DAY」 旧車やネオクラシックバイクにマッチするアライのラパイドネオに、新たなグラフィックモデルが登場した。グラフィックデザイ[…]
イタリア魂が込められたフルサイズ125ccネイキッド 2018年デビュー以来、その美しいスタイリングと俊敏なハンドリングで世界を魅了してきたキャバレロは、今回の2025年モデルで「クオーレ・イタリアー[…]
最新の投稿記事(全体)
急速充電に対応する出力性能 KaedearのクランプUSB KDR-M3Dは、タイプAとタイプCの2ポート構成で、タイプCはPD 30W、タイプAはQC3.0 最大18Wに対応。スマホ/アクションカメ[…]
片手でサッと装着できるクイックホールドII KaedearのクイックホールドIIは、スマホを押し付けるだけで瞬時に固定できる操作性が最大の特長です。解除は両側のリリースレバーを握るだけで簡単、片手での[…]
軽さと装着感/充電対応で普段使いに最適 HVUYALのPloom AURAケースは高品質TPU素材を採用し、手に馴染む柔らかな触感とスリムな外観を両立しています。装着による余分な重さを感じにくく、デバ[…]
オーバー500cc・ビッグシングルの力強さ 世界最古クラスの英国ブランド、BSAが再び日本に上陸した。 歴史的ビッグネームの「ゴールドスター」は1938年から1963年まで製造された、BSAの代名詞の[…]
50レプリカのフルサイズからミニバイクレースを経てデフォルメフルサイズへ! VR46カラーのTZR50……実はヨーロッパで1997年から2012年まで生産されていたイタリアのミナレリ製エンジンで、現地[…]
- 1
- 2