
開放式でもメンテナンスフリーでも、いつかは使えなくなるバッテリー。ダメなバッテリーは交換するしかないが、ただ新品に載せ替えるだけでは能力を十分に発揮できないこともある。本記事では、バッテリーと車体の事前準備を再確認しておこう。
●文/写真:モトメカニック編集部 ●外部リンク:丸中洋行
バッテリーの性能を長く発揮できるよう準備を整える
バイクや自動車に搭載されているバッテリー(鉛蓄電池)は、充放電を繰り返すことでサルフェーションにより容量低下を起こす。
サルフェーション除去機能つきの充電器が普及し、利用しているサンデーメカニックも多いだろう。それでも長期間の使用により、結晶化した硫酸鉛を完全に除去できなくなったり、電極が腐食や破損したり、自己放電によって寿命が来る。
バッテリーを交換する際は、バッテリー容量を確認するのは言うまでもない。ただし容量が同じでもターミナル位置の左右が異なるバッテリーがある場合、プラスとマイナスの方向を正しく選択することが重要。
バッテリーケースやバッテリーケーブルのサイズや長さはピッタリ設計されているため、ターミナルの向きが逆だとまったく届かない場合が多い。開放式の場合、排気パイプの取り付け方向にも注意が必要だ。
「すぐに使える即用式」と箱に書いてあっても、車体に取り付ける前に一度補充電を行うこともバッテリーの長寿命化にとって有効。旧車や絶版車の場合、配線側の端子が腐食によって接触面積が減ったり抵抗増加につながるので、搭載前にワイヤーブラシや不織布で磨いておこう。
マイナス側がクランクケースにアースされている機種では、丸端子が酸化皮膜に覆われていることもあるので、一度取り外して確認しておくと良い。せっかくバッテリーを交換するのなら、なるべく長く性能を発揮できるよう準備を整えておこう。
マイナスアースの場合、バッテリーを取り外す際はマイナスが先でプラスが後。取り付ける際はプラスが先でマイナスが後だ。電気系のアクセサリーが満載で付属ボルトでは長さ不足の時は、配線自体の見直しを検討しよう。端子をいくつも重ねることで抵抗も増えてしまう。
端子表面の腐食はワイヤーブラシや不織布で清掃しておく。アース線の反対側で芯線が緑青を吹いていないか、丸端端子が黒く酸化していないかを確認する。
ショートによる車両火災などを避けるため、プラスのターミナルはしっかりカバーしておく。破れたり切れてしまったら純正部品や汎用用品で入手して装着する。
開放式には排気孔があり、内部から希硫酸を含むガスが放出されるため、必ず付属のパイプを差し込む。これを怠ると排気孔周辺が腐食でボロボロになってしまう。
バッテリーケースやサイドカバー裏などにパイプの通し方が記載してあれば、それに従う。途中で折れたり潰れることなく、マフラーの熱で溶けないように通す。
リチウムイオンバッテリーの特徴(BSバッテリーの場合)
鉛バッテリーに比べて圧倒的に小型軽量で、見た目もカッコいいリチウムイオンバッテリー。丸中洋行が取り扱っているBSバッテリーの場合、5タイプのリチウムフェライトバッテリーを発売。ここでは「何がイイのか」をおさらいしておこう。
スマホやノートPCの電源としておなじみのリチウムイオン電池は、充放電が可能な二次電池の中でもエネルギー密度がきわめて高い。鉛バッテリーと比較すると、重量あたりのエネルギー密度が5倍、体積あたりのエネルギー密度は4〜5倍となるらしく、同じ電力量なら圧倒的に軽く小さくできるのは当然だ。
また、内部抵抗が非常に小さいため一気に大電流を放電でき、発熱が少ないので急速充電が可能。自己放電が少なく繰り返し充電に強く、低温でのクランキング性能を維持できるようになったことで、冬季使用の不安も払拭。
さらにバイクにとって大きな利点なのが電圧。リチウムフェライトの1セル電圧は3.2Vで、12V車用バッテリーの実電圧は13Vを超えるのだ。電圧が高く電流がスムーズに取り出せれば、点火系や灯火系に流れるエネルギーも大きくなる。これは現行車だけでなく絶版車にとっても、うまく活用すれば相当のメリットがあるはずだ。
BSバッテリーのリチウムバッテリーは、リチウムイオン電池の中で「リチウムフェライトバッテリー」と呼ばれるタイプ。鉛バッテリーと比べると自己放電が少ないため、長期間使用していなくてもエンジン始動が可能。バッテリーの性能を測る基準の一種であるCCA(コールドクランキングアンペア)でも、鉛バッテリーを大きく上回る能力がある。BSリチウムバッテリーのラインナップは、容量別に4サイズ、端子方向の違いで5タイプとなり、鉛バッテリーよりも種類が少ない。これは1製品で複数の鉛バッテリーを包括できる能力があるのと、鉛バッテリーよりも搭載時の自由度が高いことが理由。本体上部には充電状態を示すインジケーターがあり、ボタンを押せばコンディションを把握できる。
開放式/MF/SLAといった鉛バッテリーの需要も高いが、性能面でそれらを圧倒的に上回るリチウムバッテリー。BSバッテリーの場合、同容量の鉛バッテリーに対してリチウムは70%軽量で、それだけで大幅な軽量化となる。
6V⇔12V切り替え&リチウム対応の高性能充電器
バッテリーのコンディション維持に補充電は不可欠。BSバッテリーのスマートバッテリーチャージャー&メンテナー「BS10」は、6Vと12Vの鉛バッテリーだけなく、リチウムバッテリーにも対応する守備範囲の広さが特長。本体のデザインもオシャレだ。
【BSバッテリーチャージャー BS10】
バイクに乗らなくても、バッテリー内部では一定の割合で化学反応が進行し、自己放電によって性能が低下する。頻繁に走行すれば充電できるが、それができない時には補充電が必要。BSバッテリーの場合、絶版小排気量車ユーザーが喜ぶ6Vモードを備えた(もちろん12Vも充電可能)充電器「BS10」を販売している。
鉛バッテリーより自己放電の少ないリチウムバッテリーに、補充電が必要な場面はそれほどない。しかし電気系アクセサリーの切り忘れなどで放電してしまった場合は充電しなくてはならない。
鉛バッテリーとリチウムバッテリーでは充電メカニズムが異なり、リチウムは電圧と電流のコントロールがシビアなため、一般的な鉛バッテリー用充電器は使用できない。だがこの充電器は、バッテリーに繋ぐと鉛かリチウムかを自動で判別して、それぞれに適したプログラムで充電を行う賢さを備えている。
充電状況、LEDインジケーターの色で表示されて、維持充電も行える。BS10充電器は、6V/12V/リチウムに対応できるマルチプレーヤーぶりが魅力だ。
コンセントに差し込むプラグが充電器本体にあり、側面のスイッチで鉛バッテリーの6Vと12Vを切り替える。6V対応の充電器が少数派となる中、この設定はありがたい。通常、鉛バッテリーユーザーがリチウムバッテリーを導入すると、専用メンテナーも購入することになるが、BS10なら1台でOK。対応容量は最大20Ahで、接続時のスパーク防止/逆接続/短絡/オーバーヒート保護機能も搭載。バッテリーへの接続は、クランプとターミナル直結の常時接続コードの2種類。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
バイクいじりの専門誌『モトメカニック』のお買い求めはこちら↓
モトメカニックの最新記事
整備部門に加えて塗装や磨き作業まで社内で行うエルオート。コンディションに応じた最善策で販売車両を製作できるのが最大の強み 数ある絶版車の中で頂点に君臨し続けているカワサキZシリーズ。人気車種ゆえ大物の[…]
メンテナンスで覚えて、カスタムで楽しむモンキー&ゴリラ 今回登場するのは、88ccにボアアップした初期型Z50J-IIIゴリラ(1978)。排気量アップに合わせてキャブセッティングを行う必要性があると[…]
作業環境を整えるアイテムが、ミスを減らして仕上がりを向上させる 塗装好きのサンデーメカニックといえども、整備で使う工具に比べて塗装関連の道具を使う機会は少ないはず。スプレーガンの置き場が定まらずひっく[…]
「失敗したかも…」を最小限に食い止めるアイテムも欲しい 最初から最後までトラブルなく進行すれば文句はないが、ペイントブースを使えない場合、ゴミが付いたり虫が飛んでくることもある。多くのサンメカが経験す[…]
塗装の仕上がりは段取り次第。作業前と作業後に必要な用品にも注目 塗装するパーツが小さなエンジンカバーなのか、ガソリンタンクなのかで、難易度や緊張感は異なるものの、作業に必要な道具には大差はない。エアコ[…]
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
放置車両にやってくるエンジン始動不良 久しぶりにバイクに乗ろうと思ったら、エンジンが始動しない…! セルを回しっぱなしにしてもエンジンに火が入る気配はなく、ガソリンタンクの中身をチェックしてもちゃんと[…]
論より証拠! 試して実感その効果!! 老舗カー用品ブランド・シュアラスターが展開するガソリン添加剤「LOOP」シリーズ。そのフラッグシップアイテムである「パワーショット」をさまざまなバイクやクルマに実[…]
マジックフォームとは? 「マジックフォーム」とは、シャンプーを泡状にして広範囲に噴霧する、プロのような洗車を自宅でも実践できるアイテムです。 泡噴射ができるフォームガン2種(蓄圧タイプ/高圧タイプ)と[…]
自分のミスではないアクシデントで運命を分ける空気圧! タイヤの空気圧は大事……わかっちゃいるけど、つい面倒でチェックが疎かになりがち。 しかし脅かすワケではないけれど、実は空気圧が適正に保たれていない[…]
メンテナンスで覚えて、カスタムで楽しむモンキー&ゴリラ 今回登場するのは、88ccにボアアップした初期型Z50J-IIIゴリラ(1978)。排気量アップに合わせてキャブセッティングを行う必要性があると[…]
最新の関連記事(バッテリー)
セルが弱くなったらバッテリー交換のサイン スクーターのバッテリーが弱ってきたのか、始動性がイマイチになってきました。 そういえば、このバッテリーもずいぶんずいぶん古くなってきたので、バッテリーを買い替[…]
開放式/MF式/リチウムイオン式が揃うBSバッテリー。充電電圧を管理して優位性の高いリチウムを活用したい 市販車の一部にも純正採用される例はあるが、リチウムバッテリーは鉛バッテリーに比べるとまだまだ少[…]
たしかな選択と工夫でシート下スペースを拡大! バッテリーを交換する際には、車両に適したバッテリー容量(10時間率容量)とともに、物理的な寸法を合わせる必要がある。そのためカスタムにおいては、大きく重量[…]
バッテリーコンディションがいまひとつ…。Kナナゴー用バッテリーを載せたら、これがイイ!! 還暦をすぎた筆者は、大型バイクで気楽に走り回ることができない情けない体調…。リハビリのつもりでバイクいじりは積[…]
リチウムフェライトは構造と素材的に“燃えない” スマートフォンなどデジタル機器の「リチウムバッテリーが発火」というニュースを見聞きする機会は少なくないし、バイクにリチウムバッテリーを付けたら爆発した![…]
人気記事ランキング(全体)
自分のミスではないアクシデントで運命を分ける空気圧! タイヤの空気圧は大事……わかっちゃいるけど、つい面倒でチェックが疎かになりがち。 しかし脅かすワケではないけれど、実は空気圧が適正に保たれていない[…]
1位:「モンキー125」で黄色いモンキー復活【欧州】 ホンダが欧州で、125ccモデル×3車種を発表。いずれも、日本で販売中のカラーリングを纏ったモンキー125、ダックス125、スーパーカブC125の[…]
1990年に撤廃された、国内販売車の排気量上限自主規制 大排気量ランキングの話を始める前に、少し歴史を遡ってみよう。日本では、1969年のホンダCB750Fourの登場を機に、当時の国産車の最大排気量[…]
整備部門に加えて塗装や磨き作業まで社内で行うエルオート。コンディションに応じた最善策で販売車両を製作できるのが最大の強み 数ある絶版車の中で頂点に君臨し続けているカワサキZシリーズ。人気車種ゆえ大物の[…]
オイルの匂いとコーヒーの香り。隠れ家へようこそ。 56designが4月12日に奈良県奈良市にオープンさせる「56design NARA」。以前から要望が多かったという、同社初となる関西圏の新店舗だ。[…]
最新の投稿記事(全体)
放置車両にやってくるエンジン始動不良 久しぶりにバイクに乗ろうと思ったら、エンジンが始動しない…! セルを回しっぱなしにしてもエンジンに火が入る気配はなく、ガソリンタンクの中身をチェックしてもちゃんと[…]
バニャイアの武器を早くも体得してしまったマルケス兄 恐るべし、マルク・マルケス……。’25MotoGP開幕戦・タイGPを見て、ワタシは唖然としてしまった。マルケスがここまで圧倒的な余裕を見せつけるとは[…]
スロットルバイワイヤでさらに進化 オーバーリッタークラスのフラッグシップネイキッド「CB1300 SUPER FOUR」「CB1300 SUPER BOL D’OR」および各々のSP、すべてのラインナ[…]
6段変速ミッション:スズキ T20(1965) 戦前はGPレーサーも4段変速までだったが、戦後の1952年にモトグッツィが5段変速を、1953年にドイツのNSUのレーサーが6段変速を採用した。そして国[…]
XSR900 GPの登場によりカジュアル寄りに回帰したXSR900 ヤマハは、クロスプレーンコンセプトの888cc並列3気筒を搭載するスポーツヘリテイジ「XSR900」をマイナーチェンジ。ライディング[…]
- 1
- 2