
キースターがキャブレターユーザーのニーズに応える新製品を開発。立て続けに2アイテムがデビューした。圧入式の非分解タイプバルブシートの弱点を克服する「バルブシート蘇生キット」と、レーシングキャブとして人気の「ミクニTMR用燃調キット」だ。
●文/写真:モトメカニック編集部(栗田晃) ●外部リンク:岸田精密工業
キャブレターユーザーのニーズに応えるキースター
フロートチャンバー内のガソリン油面を一定に保つために重要なニードルバルブとバルブシート。バルブシートには着脱可能なタイプと圧入式の非分解タイプがあり、後者はバルブシートがダメージを負うとキャブ自体が使えなくなる弱点があった。
そんな状況を打破するためにキースターが開発したのが「バルブシート蘇生キット」である。圧入式バルブシートは純正部品が存在しないが、キースターにはバルブシート製造に関するノウハウがあるため、圧入されたバルブシートを交換するための専用治具を開発することで市販化を実現した。
もうひとつの新製品は、ケーヒンFCRと並ぶレーシングキャブとして人気の「ミクニTMR用燃調キット」である。キット化したのはシングル用スモールボディ/ラージボディの2種類で、マルチ用は今後追加される予定だ。
セット内容が決まった純正キャブ用燃調キットと異なり、TMR用燃調キットはユーザーが必要なサイズを指定するオーダーメイドシステムを採用。現状のセッティングを基準にジェットやニードルが選択できるのが特長だ。
非分解指定で部品設定もないベンチュリーブロック底部の特殊ガスケットも独自に開発しており、フルオーバーホール作業でも重宝する。
フューエルインジェクションばかりで肩身が狭くなるかと思いきや、趣味性の高さはどんどん増しているキャブレター。そんなキャブと付き合う上で、キースターの存在感はますます高まっている。
【ケーヒンVB系キャブレター用バルブシート蘇生キット】圧入式バルブシートはケーヒン製キャブの一部に採用されており、第1弾としてホンダCB750F用VBキャブレター用キットをリリース。カワサキ ゼファー向けケーヒンCVK用キットの開発も計画中だ。●価格:8800円
バルブシートは純正部品と同じ形状で、ニードルバルブだけを交換しても不調が解消しないユーザーにとって待望のパーツとなるのは確実。バルブシートサイズに合わせて、円筒状の固定治具と取付治具も同時に開発した。
古いバルブシートに付属のタップで雌ネジを切り、固定治具をかぶせてボルトを締め付けたら、ナットを回して圧入されたシートを引き上げる。
バルブシートを引き抜く工程は、ベアリングプーラーのようにホイールベアリングを取り外す要領と同じ。専用治具なので実にスムーズ。
新たなバルブシートは、固定治具の中に収めた取り付け治具を上部のボルト越しに叩いて圧入する。ボディに対して傾かないよう注意する。
シート圧入量によってニードルバルブの高さが変化する。CB-F用フロートは油面調整用のリップがないので、圧入作業は慎重さが必要。
バルブシートを深く圧入すると油面が高くなるので、圧入途中でフロートを仮組みしてレベルゲージで測定しながら油面を合わせる。これでガソリン漏れを完治できる。
CB750/900/1100F用燃調キット+エアカットバルブセットが登場。エアカットバルブのダイヤフラムが破損するとスロットル急閉時に混合比が薄くなり、アイドリング不整になる。1気筒分で6050円。
【TMR燃調キット スモールボディ単気筒車用】メーカー純正キャブレター用やケーヒンFCR用と同様に、セッティングパーツとメンテナンス部品がパッケージ化されたミクニTMRキャブレター用燃調キット。ベンチュリー径φ28/φ32/φ34のスモールボディ、φ36/φ40のラージボディ用キットは同一価格。●価格:8250円
油面設定に重要なニードルバルブ(フロートバルブ)はアッセンブリー設定。スムースボアを実現するベンチュリーブロックは非分解で、底部のガスケットも部品設定はないが、キースターは独自に開発。清掃時に使用するケミカルの種類によっては純正ガスケットが膨潤していることもあるので、この設定はありがたい。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
バイクいじりの専門誌『モトメカニック』のお買い求めはこちら↓
あなたにおすすめの関連記事
メンテの頼りになるNTBの規格部品 使い勝手の良さと頑丈さを両立し、1億台を超える膨大な台数が160を超える国と地域に行き渡っているホンダスーパーカブ。実用車に必要な機能/性能/長年に渡って変わらぬデ[…]
友人に手伝ってもらいつつ、エンジンを乗せ換えました。その代価としてC50のエンジンは貰われていきました。もう後戻りはできません… このカブラを入手したのは2021年の11月。ヤフオクで発見し、気持ちが[…]
手軽に使えるサビキラープロ。ヤレ感を生かした絶版車ケアに最適 バイクユーザーにとって、サビとの対決は永遠のテーマ。特に交換用部品が簡単に手に入らない絶版車には常に悩みのタネとなる。 ケミカルやサンドブ[…]
ケーブルレイアウトが変な感じ!? だったら修正 このカワサキ バリオス、モトメカニック編集部ガレージにやって来るかなり前、メーターギヤが壊れて交換した際に、適合する純正部品ではなく、おそらく適合外モデ[…]
3年ぶりの開催で過去最高の参加者を記録 2004年に第1回が開催されて以降、’80年代のバイクにこだわるライダーから圧倒的な支持を受けて開催されてきた「80’sミーティング」。CB750フォアやZなど[…]
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
ある日チョークが折れてた エンジン始動でチョークを引っ張ったらいきなり「スポッ」と抜けた。何事かと思ったら・・・折れてたんですよ、チョークケーブルのアウターが。 アクセルやクラッチ、スロットルやチョー[…]
構成要素のすべてに技術的な裏付けがあるSP2シリーズ そもそも山口県のバイクショップからスタートしたASウオタニ。SP2フルパワーキット/SP2パワーコイルキット/SP2ハイパワーコイルセットといった[…]
レストアでのつまづきはそこかしこに 古いバイクをレストアしていると意外なところでつまずいたりするものですが、今回引っかかったのが8インチのチューブタイヤの「リムバンド」。 こちらのホイール、別にリムバ[…]
ガソリン添加剤の役割 ガソリン添加剤といってもその用途はさまざまですが、大まかなカテゴリーとしては 洗浄効果 性能向上 の2つに分けられます。 洗浄効果について 現在主流になっているPEA(ポリエーテ[…]
ヤフオクで入手したバイクのフレーム。ネジ穴に折れたボルトが詰まってた!? ヤフーオークションでとあるバイクのフレームを買ったところから話が始まります。 フレーム曲がりや大きな傷もなく、塗装面も小傷があ[…]
最新の関連記事(キースター)
バイクいじりの教科書として愛され続けるホンダ原付50ccモデル スーパーカブ/モンキー/ゴリラ/DAX/JAZZなど、数あるホンダ50ccモデルで多くのライダーに親しまれてきたのが「横型」と呼ばれるエ[…]
メンテナンスで覚えて、カスタムで楽しむモンキー&ゴリラ 今回登場するのは、88ccにボアアップした初期型Z50J-IIIゴリラ(1978)。排気量アップに合わせてキャブセッティングを行う必要性があると[…]
高いポテンシャルを持ちながら肩の力を抜いて乗れる二面性で大ヒット セローが登場した1985年は、オンロードでは本格的なレーサーレプリカブームが到来する頃でした。オフロードも同様で、パンチのある2ストロ[…]
キャブレターボディ内部の汚れは漬け込みタイプのクリーナーが効果的 キャブレターやガソリンタンク内に長期間溜まったガソリンは、時間の経過とともに劣化、変質します。どの程度の期間で劣化するかは保管状況など[…]
ビスを緩めるドライバー、電動ツールやショックドライバーも欲しい フロートチャンバーやトップカバーなど、キャブレターボディ外部に取り付けられた部品の多くはプラスまたはマイナスのビスで固定されており、ビス[…]
人気記事ランキング(全体)
50年の眠りから覚めたBSA、復活のファーストモデルがゴールドスター 世界最古クラスの英国ブランド、BSAが再び日本に上陸した。輸入を手掛けるウイングフットが「BSA ゴールドスター」を取り扱い“ほぼ[…]
16歳から取得可能な普通二輪免許で乗れる最大排気量が400cc! バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付以外[…]
シリーズ累計で約3万台を生産したW1の系譜 約9年に及んだ販売期間の中で、W1シリーズの人気が最高潮に達したのは、ペダルの配置が左:シフト/右:リヤブレーキに改められたW1SA。それに次ぐのはツインキ[…]
懐かしの四角ライトに極太のブロックタイヤ 1987年に発売されたやまは「TW200」は、フロントに130/80-18、リヤには180/80-14という極太タイヤを履いたファットなオフロードスタイルで人[…]
ヤマハFZ400R:ワークスマシンと同時開発 市販レーサーと同時開発したNS250Rがリリースされた1984年5月。 400クラスにも同様の手法で開発されたマシンが、ヤマハから世に放たれた。 FZ40[…]
最新の投稿記事(全体)
ヤングマシン電子版2025年9月号[Vol.634] 【海外超速報】◆ついに本気のネオクラ来た!! スズキGSX-8T/TT◆待望のゴリラ125登場? ホンダGORILLA125(MONKEY125 […]
1位:直4ネオクラシックZ400RS最新情報/予測 最強400ccモデルであるニンジャZX-4Rをベースとした直列4気筒のヘリテイジネイキッド「Z400RS」(仮称)が開発されているという噂。77ps[…]
スズキ バンディット400:GSX-Rのエンジン流用ネイキッド 59psというクラス最強のパワーを持ち、1984年に華々しく登場したGSX-R。 レーシーに設定されたこのマシンの心臓部の実用域を強化し[…]
トリックスター初となるハーレー用マフラー トリックスター初となるハーレー用マフラーが、X350向けにリリースされた。今回、初の試みとして“ツインタイプ”のサイレンサーが採用されている。 X350の特徴[…]
ライディングポジション変更のおかげで操縦性も大幅アップ! 私が参戦する全日本ロードレース選手権のJ-GP3クラスは、5月下旬にシーズン初戦を迎え、私自身も今季のさらなる走りの進化に期待しているのですが[…]
- 1
- 2