秋晴れのMAX10当日。久しぶりの筑波サーキットのレースに緊張感と高揚感が交錯する。筑波サーキットでコンチネンタルGT650はどんなキャラクターを見せてくれるだろうか? MAXシリーズの中でもロイヤルエンフィールドの参戦は、当然唯一。存在感を示したい!
●文:ミリオーレ編集部(小川勤) ●写真:長谷川徹 ●外部リンク:ロイヤルエンフィールド東京ショールーム
コンチネンタルGT650レース参戦記 連載第5回の記事・MAX10参戦表明編はこちら
コンチネンタルGT650が筑波サーキットで開催されるMAX10に初参戦!
2023年9月24日(日)、筑波サーキットのコース2000で開催されるクラブマンロードレースの早朝は肌寒かった。「もう秋だね〜」「半袖だと寒いね〜」なんて会話に、「これなら空冷エンジンが走りそうだなぁ」というフレーズが交わり、テンションが上がる。
今回、ロイヤルエンフィールドのコンチネンタルGT650で参戦するのは『MAX10』クラス。クラブマンロードレースは、“外車メーカーによる大人のレースごっこ”をコンセプトに開催されるMAXシリーズ(タイムによってクラス分けされ、MAX4/6/10などがあり、たとえばMAX10は1分10秒を切った時点で卒業)の他にも様々なレースが開催され、クラシックバイクや旧いハーレーダビッドソン系も多い。何より気心の知れた仲間も多く、色々な人がコンチネンタルGT650に注目してくれている。
このMAX10参戦にあたり、コンチネンタルGT650レーサーを制作してくれたモトジャンキー代表の中尾真樹さんが九州から遠征。さらに、モトジャンキーのお客さんであり鉄馬で一緒に走って仲間になった山下和宏さんも手伝いにきてくれた。
そして、カスノモーターサイクルからも糟野友則さんと堤泰佑さんが駆けつけてくれた。ありがたい。
MAX10の予選は、様々なクラスと混走で27台が走行、決勝はMAX6(ちなみにMAX6は空冷と水冷クラスに分かれている)と混走で21台が走行する。
筑波サーキットはインフィールドが長いからなんとなる⁉︎
MAX10のエントリーリストを見るとやはりコンチネンタルGT650が最小排気量。ライバルは、ドゥカティの900〜1000ccの空冷Lツインエンジン搭載車、ハーレーのXR1200、そしてビューエル、ビモータなど。テクニカルなコース、という意味では筑波サーキットもHSR九州も同じだが、筑波はHSRと比べると僕的に走り慣れたコース。1コーナーからバックストレートまでのインフィールドセクションが長いから、HSRよりは排気量の差はなんとかなるかもしれない……という気持ちで挑む。
予選は9分しかなく、台数が多いため、前方にバイクを並べる。タイヤは新品のピレリ製ファントムスポーツコンプで、タイヤウォーマーはなし。どのタイヤもそうだが、ファントムスポーツコンプの新品のフィーリングは抜群。予選終盤の7周目でクリアラップが取れたため、アタック。1分9.308秒を出すことができ、MAX6との混走となる決勝は7番グリッド(MAX10では最上位)を確保できた。
「ダメだよ。10秒切ったら〜」「決勝前に卒業じゃん」とチームの皆から言われつつも、僕としては内心「10秒切れるかな?」とも思っていたのでひと安心。
「9秒3だって?」 LOC(レジェンド オブ クラシック)を走る知り合いからも驚きの声が上がる。「エンジンはノーマル?」「650ccだよね。意外と速いなぁ」「そんな走るんですかぁ〜」と言った声が嬉しい。
MAX10クラスの中では1台だけ旧車然としたスタイルのコンチネンタルGT650だが、ノーマルエンジンのままでここまで楽しいバイクに仕上がったのはとっても嬉しいこと。マシン制作、そしてこうして関東のレースまでサポートで来てくれるモトジャンキーの中尾さんに感謝しかない。
コンチネンタルGT650の武器はコーナリング。決勝ではベストタイムを更新!
それにしてもコンチネンタルGT650は抜群に楽しい。新品タイヤにしたらインフィールドでは17インチと同じようなコンパクトなラインを通ることができるし、フロントも落ち着きを得た感じ。とにかくライダーの操作に対する車体のレスポンスが良く、サーキットレベルのスポーツライディングもとても楽しいのだ。
その姿からは想像がつかないかもしれないけれど、コンチネンタルGT650の武器はコーナリング。インドの悪路を考慮した、国産車とは比較にならないほどしっかりとしたシャーシは、重量はあるもののさすがは名門ハリスパフォーマンス製と思わせてくれる仕上がりを見せる。
コーナリングマシンの特性を活かすために足周りをセットアップし、ピレリのファントムスポーツコンプでその特性を引き上げるようなイメージで仕上げていく。ハイグリップタイヤをここまでしっかり履きこなすのも、正直なところ意外だった。
さらに今回は、ファイナルをHSRよりもドリブンスプロケットで1丁ロングに変更。するとブレーキングからリーンのセクションでエンジンブレーキの効き方がマイルドになり、半クラッチ操作もかなり軽減できた。そしてこれが旋回速度向上に繋がったのだ。
しかし、様々なバイクと混走となる決勝レースは、走りのリズムが掴みにくく、苦戦。途中、MAX6のハーレーダビッドソンXR1200を駆る笠井大輔さんとのバトルを楽しむ。大排気量のハーレーはコーナーの脱出速度が速いため、ブレーキングから向きを変えるところで詰める。それでも第1ヘアピンで笠井さんがギヤ抜けしたところをパス。その後、スタートで出遅れていたMVアグスタのF3にパスされるとリズムに乗れなくなり、タイムも頭打ちに…。
3周目に1分8.904秒を出した後は9秒台前半で周回。自分が何位かわからないままゴールするとどうやら暫定でMAX10クラス1位だったよう。パドックではみんなが祝福して迎えてくれた。10秒を切ったため、正式には賞典外だが暫定表彰式では表彰台の頂点に立たせてもらい、シャンパンファイト。
最高の結果でMAX10を楽しむことができた。ちなみに今回のMAX10クラスでは5人のライダーが10秒を切って卒業することとなった。
今回、MAX10に参戦したマシンの詳細は、次回の連載で紹介したい。
いずれにしろ、今期のコンチネンタルGT650でのレース活動は、今回のMAX10で無事終了。この機会をくれたロイヤルエンフィールドの輸入元であるPCIの皆さん、マシンを制作してくれたモトジャンキーの皆さん、そしてマシン作りをサポートしてくれたサプライヤーの皆さん、レースの現場でサポートしてくれたみなさんに感謝。本当にありがとうございました。
来季の動きは未定だが、ロイヤルエンフィールドのサポートの下、コンチネンタルGT650の可能性をさらに追求してみたい。
コンチネンタルGT650のNewモデルが発表! キャスト仕様がラインナップに追加!
実はコンチネンタルGT650の市販車は、しばらく日本では在庫がない状況が続いていたのだが、MAX10の直後にニューモデルがリリース。これまでのスポークホイール仕様に加え、キャストホイール仕様が加わり、バリエーションを拡大。様々なユーティリティも充実している。ロイヤルエンフィールドの東京ショールームでは試乗も可能だ(要事前予約)。
また11月10日まで、鉄馬とMAX10を走ったコンチネンタルGT650レーサーがロイヤルエンフィールド東京ショールームに展示される。NewコンチネンタルGT650の試乗がてらぜひとも訪れていただきたい。
主要諸元■全長2119 全幅780 全高1067 軸距1398 シート高820(各mm) 車重212kg(装備) ■空冷4ストローク並列2気筒SOHC4バルブ 648cc 47ps/7150pmm 5.33kg-m/5150rpm 変速機6段 燃料タンク容量12.5L ■ブレーキF=φ320mmシングルディスク+2ポットキャリパー R=φ240mmディスク+1ポットキャリパー タイヤサイズF=100/90-18 56H(ダークは100/90-18 56H TL) R=130/70-18(ダークは130/70R18 63V TL)
小川勤(おがわ・つとむ)/1974年生まれ。1996年にえい出版社に入社。2013年に同社発刊の2輪専門誌『ライダースクラブ』の編集長に就任し、様々なバイク誌の編集長を兼任。2020年に退社。以後、2輪メディア立ち上げに関わり、現在はフリーランスとして2輪媒体を中心に執筆を行っている。またイベントレースも好きで、鈴鹿4耐/菅生6耐/もて耐などにも多く参戦。現在もサーキット走行会の先導も務める。
コンチネンタルGT650レース参戦記 連載第1回の記事・決意表明編はこちら
コンチネンタルGT650レース参戦記 連載第2回の記事・マシン軽量化編はこちら
コンチネンタルGT650レース参戦記 連載第3回の記事・鉄馬決勝編はこちら
コンチネンタルGT650レース参戦記 連載第4回の記事・マシン紹介編はこちら
コンチネンタルGT650レース参戦記 連載第5回の記事・MAX10参戦表明編はこちら
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