2022年シーズン、イデミツ・ホンダ・チーム・アジアが絶好調だ。第2戦インドネシアGPでソムキャット・チャントラが自身初の勝利を上げると、第3戦アルゼンチンGPでは2位にチャントラ、3位に小椋が入る。第4戦のアメリカズGPでは小椋が2位表彰台を獲得。第5戦ポルトガルは不運に見舞われたが、第6戦スペインで小椋が自身初の勝利を挙げた。
●文:ミリオーレ編集部(小川勤) ●写真:ホンダ・チーム・アジア
静かに野心を燃やす小椋 藍
2022年シーズンのMoto2第6戦スペインGP、イデミツ・ホンダ・チーム・アジアの小椋 藍が完璧な週末を過ごし、久しぶりに世界グランプリで君が代を聞くことができた。小椋は、静かにそして着実に自分の走りを分析し、未来を見据えながら走っている。
2020年末、初めて小椋と話をしたとき、彼はまだMotoGPを意識していなかった。子供の頃から走り続け、気がついたら今のような環境に身を置いていたという。自分の意志ではなく、周囲の流れに任せて世界グランプリに身を置いているような印象だった。
次に会ったのは2021年の夏。桶川でモタードを駆る小椋を見たときに、その芸術のような走りに感動した。バイクを完璧にコントロールする姿は速さの中に美しさを感じさせるものだった。そして、日本人ライダーの将来のことまでを考慮し、自ら少年たちに接し、行動していた。多くの少年たちに尊敬するライダーは? どんなライダーになりたい? と聞くと「藍君!」という答えがとても多かった。
直近に会ったのは2021年末。その時に走りの取り組み方を聞いて印象的だったのは、小椋はフィジカルのトレーニングに重きを置いていなかったことだった。自転車に乗ったりはするが、ハードな筋トレはしていないのだという。バイクに乗ることがトレーニングであり、バイクで走っていて疲れることもそれほどないのだという。「筋トレの必要性を感じたらします。けど、疲れるのは自分の乗り方が悪いんです」そんなふうに答える。色々と話を聞き、最後に「MotoGP少し見えてきました?」と聞くと、小椋は少し笑いながら静かに頷いた。
小椋は多くを語らないし、表彰台でも自分の納得のできないレースだと笑顔がないことも多い。しかし、MotoGPのことを問いかけた時は静かに野心を燃やしてるのが伝わってきた。
完璧なレースを見せた小椋 藍
2022年、Moto2第6戦スペインGPはヘレスで開催。ストレートは比較的短め、後半セクションは中高速コーナーが続き、立ち上がり時の数cmのラインを完璧にコントロールしなければならないテクニカルなコース。金曜日から好調だった小椋は、予選で自身初のポールポジションを獲得。そして決勝ではホールショットを奪うと、一度もトップを譲らない完璧なレースを見せ、世界グランプリ初勝利をあげた。
「120%満足しています」決勝直後の小椋のパークフェルメでのコメントがとても印象的だった。「100%以上の走りができないんですよ。でもときには100%を超える走りをしないといけのかもしれないですね」というのを以前聞いたことがあるからだ。小椋の走りは着実に強くなっているし、この日は120%の走りをしていたのかもしれないと思った。
以前、ライバルは人間的にも走り的にもセレスティアーノ・ヴィエッティとも言っていたけれど、まさに今シーズンはそんな戦いも激化。小椋は現在ランキング2位。1位のヴィエッティとの差は第6戦終了時で19ポイント。その走りはワールドチャンピオンに向け、力強く進化している。引き続き、応援したい。
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