
現行ラインナップとして今はなくても、あの頃の憧れや、もう一度乗ってみたいという思いを叶えてくれる絶版車。数ある絶版車オフロードマシンの中から、ホンダのレーススピリットが伝わる「FTR223D」を紹介する。
●文:ゴー・ライド編集部(青木タカオ) ●写真:栗田晃 ●外部リンク:レッドバロン
ホンダスピリットが宿るトリコロール
アメリカで広く行われているフラットトラックレースの競技モデルをイメージしたFTR。初代はレプリカブーム真っただ中の’86年に登場したが、ヒットには至らず、わずか3年で生産終了。アメリカでのホンダの偉業がもっと日本のバイクファンに浸透していれば、状況は変わっていたかもしれない。というのも、アメリカンホンダは米国でもっとも根づいているレース「グランドナショナルチャンピオンシップ」に’79年から参戦を始め、’84~’85年のシーズンを連覇していたからだ。
’82年までのNS750は、成績が振るわず1勝を挙げるのみ。これはCX500の縦置きVツインを750ccに拡大し、ハーレーXR750にならって横積みに直したマシンだった。フレディ・スペンサーをもってしてもコーナーからの立ち上がりは横滑りするばかりで前へ進まない。サイドワインダーと比喩され、強大なパワーがあるものの勝てなかった。トラクション性能に問題があると気づくと、XLV750Rのエンジンをベースに、ロードレーサーNS500の足まわりを流用したRS750Dを開発。リッキー・グラハムの活躍もあって念願のチャンピオンを獲得。
FTRのトリコロールカラーは、このRS750Dから受け継いだファン垂涎モノだった。しかし、日本のバイクファンにはこの偉業を達成したマシンの250cc版はまったく響かなかった。大型二輪免許が普及した今なら、そのままナナハンかそれ以上のVツインで発売でき、大ヒットは間違いなかっただろうと思うのは筆者だけだろうか?
さて、2000年にFTRは復活を遂げる。アメリカ・フラットトラックレースでのホンダの偉業に、日本のバイクファンがようやく気づいたからなのか? いいや違う。時代はストリートバイクブーム。カジュアルに、そしてイージーに付き合えて、カスタムベースとなるシンプルな単気筒モデルが世を席巻していた。シーンを牽引するのは、奇しくも同じ’80年代半ばに初代が誕生したヤマハTW200。バイク冒険家の相棒となって北極点に到達したタフなマシンが、まったくといっていいほど景色の違う都会を、オシャレな若者たちが乗って駆け抜けていく。
バッテリーレスにするなど、外せるものはすべて取り払った彼らのカスタムは、スカチューンあるいはトラッカースタイルと呼ばれ、ならばと再登場したのが、本家ともいえるFTRだった。ワイドなハンドルバーやスリムなフューエルタンク、ゼッケンプレート形状のサイドカバーなど、時代が求めていたものに合致したからか、基本フォルムは初代と大きく変わらない。そして、このFTR223Dは’02年に発売された。初代を彷彿させる赤白のツートーンシートとマグネシウムカラーのクランクケースを採用。アルミリムも前後に新たに用いられ、クリアアルマイトが施されている。いま改めて見れば、ホンダのレーススピリットがひしひしと伝わってくるではないか。じつに魅力的だ!

【’02 HONDA FTR223D】■全長2080 全幅910 全高1115(各mm) ■空冷4ストロークOHC単気筒 223cc 19ps/7000rpm 2.1kg-m/6000rpm セル始動 ■タイヤサイズF=120/90-18 65P R=120/90-18 65P ●発売当時価格:35万9000円 ※撮影協力:レッドバロン レッドバロンの”譲渡車検付き”であれば、絶版車でも安心して楽しめる。 [写真タップで拡大]

外観を’86年に発売した初代FTR250に近づけ、ダートでの走行性能を高めたスペシャルモデルが’02年式のFTR223Dだった。車体色はトリコロールのみで、カラーオーダープランもあるスタンダードと併売。車体はスリムなフューエルタンクのラインとシートのつながりにより、ライダーの前後体重移動がしやすい。 [写真タップで拡大]

[左]軽量低重心のスリムな車体に、820mmと幅広で絞り角の効いたハンドルバーをセット。[右]タイヤは前後輪が同じサイズで、ダートラタイヤのパターンを忠実に再現したダンロップK180を標準装備する。 [写真タップで拡大]
※本記事は”ゴーライド”から寄稿されたものであり、著作上の権利および文責は寄稿元に属します。なお、掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な記載がないかぎり、価格情報は消費税込です。
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