’80s国産名車・カワサキZ400FX完調メンテナンス【エンジン腰上オーバーホールで往年の輝きを復活!】

’80s国産名車|カワサキZ400FX|スタイリング

今も絶大な人気を誇る‘80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末永く楽しんでいくには何に注意し、どんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる本連載、今回は爆発的な人気を博した4気筒マシン・カワサキZ400FXを紹介。本記事ではきちんとメンテナンスしておきたいウィークポイントについて解説する。


●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明/YM ARCHIVES ●外部リンク:ウエマツ東京本店

【取材協力:ウエマツ東京本店】’92年に創業したウエマツは、’70~’80年代の国産旧車全般を得意とするショップ。東京本店に加えて、岡崎店、関西店、福岡店、沖縄店が存在し、在庫車と情報をグループ全店で共有している。中型車ではZ400FX/CB400フォア/CBX400F/SS KH400/GT380/GS400などを豊富にストック。 ●所在:東京都八王子市宇津木町728-1 ●電話:042-696-6667

好調を取り戻すためにはエンジン腰上オーバーホールが不可欠

ウエマツの納車整備には、現状販売のステージ1、’90年代以降の車両を対象としたステージ2、88項目の点検整備を行うベーシックプランのステージ3、エンジン腰上OHを行うステージ4(点検整備項目は96)、エンジンフルオーバーホール(OH)を行うステージ5(点検整備項目136)の5種が存在する。もっとも近年は1と3が廃止され、’70~’80年代車は4が基準になっているそうだ。「Z400FXに限った話ではないですが、生産から30~50年前後が経過した旧車のコンディションは、年を経るごとに悪くなっています。一昔前はステージ3で好調を取り戻せることが多かったのですが、現在はエンジン腰上OHが不可欠になりました。逆に言うならステージ4以上でないと、お客様に自信を持って販売できないんです」

これまでに数百台以上のZ400FXを手がけている同店の視点で見て、この機種特有の弱点はあるのだろうか。「意外に思われるかもしれませんが、Z400FXに弱点と言うべき要素はありません。あえて言うなら、キャブレターのリンク周辺から2次エアを吸いやすいこと…くらいでしょうか。もちろん当社が下取りした車両を点検すると、ゴム部品や電装系、車体各部のベアリング、リヤショックなどはヘタッているし、エンジンのオイル上がり/下がりもよくある話ですが、生産年式を考えればそれらは当然のこと。いずれにしても、いったんきちんとした整備を行えば、以後は現行車と大差ない感覚で付き合うことが可能です」

※写真は’81年型E3

キャブレター:リンク周辺で起こる2次エア吸入に注意

純正のTK21はリンク部から2次エアを吸うことが多いため、ウエマツではシール材で対処している。各種ジェット類やガスケットは、アフターマーケット市場で販売されているリプロ品のキットを使用。

インテークラバー:前側だけではなく後ろ側の劣化も確認

キャブの前後に備わるラバーパーツは、エンジン不調の原因になりやすい。熱の影響をモロに受ける前側=インシュレターのほうが劣化は早いが、後ろ側=インテークダクトも消耗部品と考えたい。

バルブステムシール:ゴム部品の劣化がオイル下がりの原因

基本的にエンジンが丈夫なZ400FXだが、過酷な環境にさらされるゴム製のバルブステムシールは、経年変化で必ず劣化する。マフラーから白煙が出ている場合は、まずこのパーツを疑ってみるべき。

クラッチ:摩耗が少なくても3点を同時交換

クラッチ関連パーツは、後継モデルのZ400GP/GPz400/GPz400Fと共通。長期使用で明らかに摩耗するのはフリクションプレートのみだが、交換はスチールプレートとスプリングもセットで行いたい。

オイル漏れ:多少のにじみなら気にしなくてもいい?

旧車のオイルにじみ/漏れを、どのくらい気にするかは人それぞれ。ダラダラ漏れているなら要修理だが、多少のにじみは許容するべき…かもしれない。Z400FXの場合は、ヘッドカバーガスケットの目玉部分やシリンダーベースが、にじみ/漏れを起こしやすいようだ。

マフラー:今となってはノーマル美品は貴重

現役時代に多くのユーザーがアフターマーケットの集合式に変更したからか、純正の2本出しマフラーを維持している車両は少ない。美品の場合、ネットオークションでは5万円前後の価格がつく模様。

フロントフォーク:最終型のE4は加圧で性能を発揮

フォークはオイルとシールの交換で性能を取り戻せることが多いが、インナーにが錆びている場合は再メッキを行う。トップキャップにバルブが備わるE4はセミエア式で、基準値は0.6±0.1kg/cm3

ステムベアリング:操安性を左右する3種のベアリング

テーパーローラー式という選択肢もあるが、ウエマツでは純正のボール式を使用。同店の納車整備では、スイングアームピボットとホイールのベアリングも点検整備、場合によっては交換を行う。

フロントブレーキ:ブレーキパッドはベスラが定番

E1~3とE4でディスクとキャリパーが異なるものの(写真はE4)、前後ブレーキの補修部品は現在でもほとんどが入手可能。同店の推奨パッドは、タッチがマイルドなベスラのオーガニックタイプ。

リヤショック:純正然とした外観のIKONが一番人気

写真は純正だが、ウエマツの旧車は細身のボディとシックなカラーリングで、往年のKONIの意匠を継承するIKONを使用することが多い。逆に現代的なリヤショックは、めったに使わないという。

ホイール:E3以前のホイールはチューブの使用がマスト

E3以前のZ400FXの前後ホイールは、タイヤチューブの使用が前提。世の中にはチューブなしでもイケるという意見があるようだが、エア漏れの危険性を考えて、ウエマツでは必ずチューブを使用している。この件については、兄貴分に当たるZ1000Mk II/Z1-R/Z750FXなども同様。

タイヤ:推奨品は2種類だが選択肢はかなり豊富

ウエマツがZ400FXに履くタイヤの二大巨頭は、大昔から同じパターンを維持するダンロップF17/K87(左)と、バイアス界の定番として多くの旧車好きから支持を集めているブリヂストンBT-46(右)。

イグニッションユニット/コイル:ASウオタニのキットでメンテナンスフリーを実現

E3以前の点火は昔ながらのポイント式(左)だが、現在のウエマツが販売するE3以前のZ400FXは、ほぼすべてがASウオタニが販売するフルパワーキット(フルトラ化に必要なすべてのパーツを含んで、価格は9万750円)を装着。このパーツを採用した背景には、昨今ではポイントをいじれるライダーやショップが少なくなった…という事情があるそうだ。

レギュレーター/レクチファイア:電力の安定化を図るBRCのリプロ品

オルタネーターが発電した電気を、制圧/変換するのがレギュレター/レクチファイアの仕事。写真はBRCが販売しているリプロ品で、E1~3用とE4/A/B用が存在。希望小売り価格はいずれも2万1120円。

バッテリー:開放式バッテリーはマメな点検が必要

バッテリーは純正と同様の開放式が同店の定番で、オーナーは定期的な液面点検を心がける必要がある。

メインハーネス:年式で細部が異なる電装系部品の要

電装系の要となるメインハーネスはすでにメーカー欠品だが、絶版バイク部品専門店のBRCが強化タイプを販売している。E1&E2用/E3用/E4用の3種が存在し、希望小売り価格はいずれも2万7720円。

パーツ流通:補修部品は現在でもほとんどが入手可能

大物部品の多くは欠品になっているが、リプロパーツを併せて考えれば、Z400FX用の補修部品は現在でもほとんどが入手可能。もともとのコンディションが劣悪な場合を除けば、整備/レストアで困ることはないそうだ。

「Z400FXに限った話ではないですが、同時代のライバル勢と比べると、カワサキの空冷4気筒は維持が容易なほうだと思います。基本的に各部の造りが頑丈なうえに、補修用の純正部品が意外に出るし、リプロ品も豊富ですから」

【定番は0.5/1mmオーバー】純正ピストンは廃盤。ただしアフターマーケット市場では、補修用のオーバーサイズが販売されている。極端なボアアップを希望する人は、最近の同店ではほとんどいないそうだ。

【ガスケットはセット販売もアリ】レストアで必須のガスケットとシール類は、現在でもすべて入手可能。純正はバラ売りだが、アフターマーケット市場では、エンジン1基分をセット販売を行うメーカーも存在する。

【吹け上がりが一変するFCR】基本的に純正のTK21キャブレターをOHすることが多いウエマツだが、動力性能の向上を求めるライダーには、フラットバルブタイプのケーヒンFCR28を薦めることがあると言う。

【リプロではなく、純正を使用】近年ではリプロ品が登場しているものの、ウエマツが手がけるZ400FXの外装部品は純正が基本。ただし場合によっては、海外から里帰りしたZ500/550用を移植することもある。


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