
今も絶大な人気を誇る‘80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末永く楽しんでいくには何に注意し、どんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる本連載、今回は爆発的な人気を博した4気筒マシン・カワサキZ400FXを紹介。本記事ではきちんとメンテナンスしておきたいウィークポイントについて解説する。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明/YM ARCHIVES ●外部リンク:ウエマツ東京本店
好調を取り戻すためにはエンジン腰上オーバーホールが不可欠
ウエマツの納車整備には、現状販売のステージ1、’90年代以降の車両を対象としたステージ2、88項目の点検整備を行うベーシックプランのステージ3、エンジン腰上OHを行うステージ4(点検整備項目は96)、エンジンフルオーバーホール(OH)を行うステージ5(点検整備項目136)の5種が存在する。もっとも近年は1と3が廃止され、’70~’80年代車は4が基準になっているそうだ。「Z400FXに限った話ではないですが、生産から30~50年前後が経過した旧車のコンディションは、年を経るごとに悪くなっています。一昔前はステージ3で好調を取り戻せることが多かったのですが、現在はエンジン腰上OHが不可欠になりました。逆に言うならステージ4以上でないと、お客様に自信を持って販売できないんです」
これまでに数百台以上のZ400FXを手がけている同店の視点で見て、この機種特有の弱点はあるのだろうか。「意外に思われるかもしれませんが、Z400FXに弱点と言うべき要素はありません。あえて言うなら、キャブレターのリンク周辺から2次エアを吸いやすいこと…くらいでしょうか。もちろん当社が下取りした車両を点検すると、ゴム部品や電装系、車体各部のベアリング、リヤショックなどはヘタッているし、エンジンのオイル上がり/下がりもよくある話ですが、生産年式を考えればそれらは当然のこと。いずれにしても、いったんきちんとした整備を行えば、以後は現行車と大差ない感覚で付き合うことが可能です」
キャブレター:リンク周辺で起こる2次エア吸入に注意
純正のTK21はリンク部から2次エアを吸うことが多いため、ウエマツではシール材で対処している。各種ジェット類やガスケットは、アフターマーケット市場で販売されているリプロ品のキットを使用。 [写真タップで拡大]
インテークラバー:前側だけではなく後ろ側の劣化も確認
キャブの前後に備わるラバーパーツは、エンジン不調の原因になりやすい。熱の影響をモロに受ける前側=インシュレターのほうが劣化は早いが、後ろ側=インテークダクトも消耗部品と考えたい。 [写真タップで拡大]
バルブステムシール:ゴム部品の劣化がオイル下がりの原因
クラッチ:摩耗が少なくても3点を同時交換
オイル漏れ:多少のにじみなら気にしなくてもいい?
旧車のオイルにじみ/漏れを、どのくらい気にするかは人それぞれ。ダラダラ漏れているなら要修理だが、多少のにじみは許容するべき…かもしれない。Z400FXの場合は、ヘッドカバーガスケットの目玉部分やシリンダーベースが、にじみ/漏れを起こしやすいようだ。 [写真タップで拡大]
マフラー:今となってはノーマル美品は貴重
フロントフォーク:最終型のE4は加圧で性能を発揮
ステムベアリング:操安性を左右する3種のベアリング
フロントブレーキ:ブレーキパッドはベスラが定番
E1~3とE4でディスクとキャリパーが異なるものの(写真はE4)、前後ブレーキの補修部品は現在でもほとんどが入手可能。同店の推奨パッドは、タッチがマイルドなベスラのオーガニックタイプ。 [写真タップで拡大]
リヤショック:純正然とした外観のIKONが一番人気
ホイール:E3以前のホイールはチューブの使用がマスト
E3以前のZ400FXの前後ホイールは、タイヤチューブの使用が前提。世の中にはチューブなしでもイケるという意見があるようだが、エア漏れの危険性を考えて、ウエマツでは必ずチューブを使用している。この件については、兄貴分に当たるZ1000Mk II/Z1-R/Z750FXなども同様。 [写真タップで拡大]
タイヤ:推奨品は2種類だが選択肢はかなり豊富
ウエマツがZ400FXに履くタイヤの二大巨頭は、大昔から同じパターンを維持するダンロップF17/K87(左)と、バイアス界の定番として多くの旧車好きから支持を集めているブリヂストンBT-46(右)。 [写真タップで拡大]
イグニッションユニット/コイル:ASウオタニのキットでメンテナンスフリーを実現
E3以前の点火は昔ながらのポイント式(左)だが、現在のウエマツが販売するE3以前のZ400FXは、ほぼすべてがASウオタニが販売するフルパワーキット(フルトラ化に必要なすべてのパーツを含んで、価格は9万750円)を装着。このパーツを採用した背景には、昨今ではポイントをいじれるライダーやショップが少なくなった…という事情があるそうだ。 [写真タップで拡大]
レギュレーター/レクチファイア:電力の安定化を図るBRCのリプロ品
バッテリー:開放式バッテリーはマメな点検が必要
メインハーネス:年式で細部が異なる電装系部品の要
パーツ流通:補修部品は現在でもほとんどが入手可能
大物部品の多くは欠品になっているが、リプロパーツを併せて考えれば、Z400FX用の補修部品は現在でもほとんどが入手可能。もともとのコンディションが劣悪な場合を除けば、整備/レストアで困ることはないそうだ。
「Z400FXに限った話ではないですが、同時代のライバル勢と比べると、カワサキの空冷4気筒は維持が容易なほうだと思います。基本的に各部の造りが頑丈なうえに、補修用の純正部品が意外に出るし、リプロ品も豊富ですから」
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