今も絶大な人気を誇る’80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末永く楽しんでいくには何に注意し、どんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる本連載、今回はクラス初のDOHC並列4気筒を搭載した爆発的ヒットモデル「Z400FX」を紹介する。
●文:中村友彦 ●写真:富樫秀明/YM ARCHIVES ●外部リンク:ウエマツ東京本店
誕生から約40年を経て人気がさらに高騰中
’79年に登場した「Z400FX」は、’75年秋に施行された日本独自の免許制度、400ccを境とする中型/大型という区分を抜きにして語れないモデルだ。この免許制度改正で、若きライダーは夢を断たれたのだが(当時の大型二輪免許取得はとてつもなく難しく、またクラス唯一のOHC並列4気筒車だったCB400フォアは’76年に販売終了)、そんな中で彗星のように現れたのが、兄貴分のZ1/2系譲りにしてクラス初のDOHC並列4気筒を搭載する、Z400FXだったのである。
もちろんZ400FXは爆発的なヒットモデルとなり、以後は他メーカーからも、DOHC並列4気筒車が続々と登場。カワサキ自身も後継車として、Z400GP/GPz400/GPz400F/ゼファーなどを販売したものの、原点の人気はいっこうに衰えることなく、生産終了から約40年が経過した現在でも根強い人気を維持している。
その人気の理由には諸説があるけれど、細身でありながら、堂々たる車格と風格を備えていたことは、このモデルを語るうえでは欠かせない要素だろう。と言ってもそれは必ずしも意図的だったわけではなく、輸出仕様のZ500と同時開発した結果…と言えなくもないのだが、小型軽量化が徹底して行われていないことは、免許制度改正の影響を受けたライダーにとって、大歓迎したくなる要素だったのだ。
ちなみに、’90年代までは現役時代と同じく若者を中心に人気を集めていたZ400FXだが、今回の取材に協力してくれたウエマツ東京本店・峯尾真史氏は、ここ数年は大型二輪免許を所有するベテランが選択するケースが珍しくないと言う。
「最近はZ1やMkIIなどではなく、あえてZ400FXというお客さんが増えています。その理由を聞いてみると、若い頃に乗っていた、あるいは憧れていたという人がほとんどで、今後の体力低下を考えて、最後の愛車として購入する人も少なくないようですね」
そういったユーザーが増えたからだろうか、もともと高かったZ400FXの中古車相場は、近年になってさらに高騰。この分野の高額車と言ったら、筆頭は長きに渡ってホンダCBX400Fであるものの、もはやZ400FXの価格もほぼ同等になっているのだ。
ただし、Z400FXは決して維持が難しいモデルではない。事実、ウエマツでこのモデルを購入したお客さんは、トラブルに悩まされることなく旧車ライフを満喫していると言う。
爆発的な人気を獲得したものの、生産期間は意外に短い4年
大雑把に分類すると、Z400FXは前期型(E1~E3)と後期型(E4)の2種になる。前期型については、E2ではリヤホイール幅の拡大(1.85→2.15)とヘッドライト下のエンブレム追加、E3ではヘルメットロックの装備とガソリンタンク下のリフレクター廃止、という変更が行われたのだが、主要部品の基本構成はE1と同様だった。
一方の後期型E4は、メガホンマフラー/フルトランジスタ点火/セミエアフォーク/チューブレスホイール/左右一体型グラブバーといった新作部品を採用し、前後ブレーキも刷新。なおE4には、500台限定販売のE4A(GPスペシャル)、後継車のZ400GPの発売後に市場の要求に応える形で再生産が行われたE4Bが存在する。
余談だが、Z400FXと基本設計を共有するモデルとして、海外ではリアブレーキがドラムのZ400Jと、兄貴分と言うべきZ500/550が販売され、’81年には日本市場にも54psを発揮するZ550FXが投入された。
’21中古車相場は300~600万円:新車価格の10倍以上が珍しくない
新車販売終了後も人気がほとんど落ちなかったZ400FXの中古車価格は、以後30年以上の年月をかけて徐々に上昇。ただし兄貴分のZ1~Z1000シリーズを凌駕する相場になったのは、ここ数年のことのようである。なおネットオークションには200万円台以下のZ400FXが出品されているが、もちろんそれらのほとんどは要整備車だ。
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