
縦置きV型エンジンといえば、バイク好きなら誰もがモトグッツィの名をあげるはず。この大排気量向けV型エンジンは1950年代末から構想が始まったとされていますが、それ以前のモトグッツィもまた魅力的なバイクを作っていたこと言うまでもありません。たとえば、1956年に生まれた商用3輪車「エルコリーノ」は、さすがモトグッツィと目を細めずにはいられない可愛らしさ。滅多にお目にかかれない、完全にレストアされた旧車をチェックしてみましょう。
●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotheby’s
創始者のカルロ・グッツィが愛情を注ぎこんだエンジン
そもそも、モトグッツィの創業は1920年に試作モデル「G.P.」を作り上げたタイミングまで遡れます。初手から「メトロノームのように正確なエンジン」と評価され、1921年には会社設立。現在の本拠地、ロンバルディア州マンデーロの地に工場を開いたのでした。
1930年代からは早くもレース活動を始めていたそうですが、前述の通り当時はまだV型エンジンでなく、2ストロークの単気筒がメインストリーム。
無論、排気量のバリエーションは広く、またシリンダーを水平に配置することで、排気側の冷却を促進するアイデアを盛り込むなどカルロ・グッツィらしい革新的なアイデアがてんこ盛りだったのです。
第二次大戦後、イタリアが復興期を迎えると、モトグッツィも多数の商用車をリリースしています。中でもヒット作となったのが「ガレット」と呼ばれるスクーターでした。
125ccの試作車両で開発が進み、1950年のジュネーブショーではけっきょく150ccとして発表、1966年に最終モデルがリリースされた頃には175や192cc仕様も登場。なにしろ、イタリアだけでなく、ヨーロッパ全土で売れまくったと伝えられています。
1959年モデルのモトグッツィ・エルコリーノをレストア&カスタムした3輪トランスポーター。ウッドデッキと布製ルーフがリゾート風です。
ベースは第二次大戦後の復興期に作られた商用車で、エルコリーノはイタリア語で「小さな力持ち」という意味。
爆売れスクーターを商用3輪車にアレンジ
このガレットをベースにトリポリトゥール(3輪商用車)としたのが、今回ご紹介する1956年発表のエルコリーノ。
192ccの2ストローク単気筒を搭載し、出力は7hp/5200rpm、350kgの最大積載能力が持たされていました。4速ギヤを介して、最高速は60km/h、オプションの低速ギヤを装備すれば500kgの積載、45km/hで走れたといいます。
また、スタンダードモデルのスターターはクランク式だったものの、オプションで電動スターターも用意されるなど商品力は実に高かった模様。
そんな商用トライクが、リゾートで使うようなユーティリティバイクにレストア&カスタムされました。エルコリーノの荷台を、ベンチシートとファブリックトップを持った客席にカスタムすることで、なんともレトロなトランスポーターに仕上がっています。
標準的なエルコリーノは、運転席後部がオープンな荷台で、いかにもトラック然としたもの。ここに目を付けたレストアラーのセンスは抜群といえそうです。
エルコリーノの最大荷重は350kgとされていたので、大人3人と荷物ぐらいなら余裕で走れるはず。ちなみに、最高速は60km/h程度とされています。
リッチなトランスポーターにレストモッド
無論、エンジンをはじめとした車体やペイントもしっかり手が入り、ゴージャスなリゾートホテルなどが送迎用に使うといったアイデアもいいでしょう。実際、オークションに出品された際は、1万8000ドル(約280万円)となかなかの価格で落札されています。
もっとも、1950~1970年代のモトグッツィに関しては消耗パーツの入手がとても困難ということで有名。資本がデ・トマゾ・グループに変わるなど、会社が設備ごと迷走してしまった時期なので、それも致し方ないのかと。
手に入れてからのメンテナンスには気を遣いそう。とはいえ、このエルコリーノのキュートさを目の当たりにすれば、そんな些事は忘れてしまうこと請け合いです。
サドルは当時と同じデザインながら、パーツとしては新しいものに変えられています。座り心地は、微妙なものかもしれません。
お洒落で可愛らしい雰囲気に。
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