
BMWモトラッドが「GS」シリーズでアドベンチャーバイクというカテゴリーを築き上げてから40年以上、その進化は止まらない。そんな中、デウス エクス マキナがBMWの新型ネオクラシックモデル「R12」をベースに、まったく新しい解釈を加えてカスタムしたアドベンチャーマシン、「Trail Breaker – Part 1」を誕生させた。
●文:ヤングマシン編集部 ●写真/外部リンク:デウス・エクス・マキナ
最小限のカスタムでクルーザーをアドベンチャーマシン化
1200ccという大排気量の水平対向エンジンを心臓部に持つBMWのヘリテイジモデル、R12シリーズ。その新しいバリエーションとして2025年5月に加わったのが、GSシリーズのアドベンチャーDNAを与えられた「R12 G/S」だ。
同車のオーストラリア上陸に合わせて、BMWは3人のカスタムビルダーにシリーズのベースともいえるクルーザーモデル「R12」の新解釈を依頼。その中の1人、デウス・シドニーのチーフカスタムビルダーであるジェレミー・タガン氏が手がけたのが、この「トレイルブレーカー」だ。
ジェレミー氏は「R12」のフレームに「野生的で制御不能な力強い何か」を感じ取り、それを隠すのではなく強調することこそが自身の目的だと語っている。彼のカスタム哲学は、単なるパフォーマンスの追求に留まらず、「機械とライフスタイルの対話」なのだ。
このマシンの特徴は、機能性と象徴性を兼ね備えた変更点にある。まず、エアクリーナーボックスが撤去。その代わりに、むき出しの2つのエアフィルターをフューエルインジェクションのスロットルボディに直接取り付けて、エンジンへのエア流入量を向上させた。
シートは、デウスで販売されているライディングジャケットを解体した生地から製作されており、そのトリミングはバッド・アース・トリム・カンパニーのデビッド氏が担当。「反骨精神と優しさが絶妙に調和したデザイン」が実現された。
燃料タンクとシートカウルには、驚くべき独自の加工が施されている。塗装を剥がし、サンドブラストで表面を均した後、マスキングテープで図柄を描き、再び異なる粒子の砂でサンドブラストを施すことで、塗装なしで鮮やかな模様を浮かび上がらせたというのだ。元々デザインされていたBMWのマークは取り外され、全体のパッケージに合った美しいブルーのPerspex製デウスバッジへと変更されている。
そして、「R12」はここから本格的なオフロードマシンへと変貌を遂げる。タイヤには、ゴツゴツとしたオフロードテイストが魅力のミシュラン製アナキーワイルドを採用。リアには、あらゆるセッティングが可能なYSSサスペンション製のフルアジャスタブルリアショックユニットをセット。
フロントフォークはスタンダードながら、これらの変更に合わせて調整され、周辺パーツとともにサンドブラスト処理を施すことで、スタイリングの統一感を高めている。ハンドルバーは3cm高く設定され、オフロードでのスタンディングポジションにも完璧にフィットするという徹底ぶりだ。
灯火類の選定にも抜かりはない。ヘッドライトとテールライトはスタンダードを維持しつつ、ウインカーはケラーマン製の小型ユニットに変更され、オイルクーラー脇にスマートに配置されている。
エンジンのシリンダー上部にはコンパクトなフォグランプが追加されており、これはオフロードで鍛え上げられたG/Sの伝統へのオマージュであると同時に、実用性とワイルドなスタイルを両立させている。
排気システムも手が加えられ、大きくて重い触媒は撤去。2本のエキゾーストパイプはYパイプで1本にまとめられ、車体左側にはSCプロジェクト製のサイレンサーが装着された。その排気音は「イイ感じ」で、その荒々しいサウンドは「厳しいオフロードで鍛え上げられたGSのDNAを表現し、自由の象徴でもある」とジェレミー氏は語る。
スタンダードなロードスターだった「R12」が、デウスの最小限でありながらも計算し尽くされたカスタムによって、荒ぶるアドベンチャーモデル「Trail Breaker – Part 1」へと見事に変貌を遂げた。その姿はまさに荒野を駆け抜けるにふさわしい佇まい。その野性味溢れる走りも確かめたくなる一台だ。
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