
1980年代に巻き起こったバイクブーム、およびその源流となった2ストレーサーレプリカブーム。そのうち今回は、ワークスマシンを徹底的に再現したレーサーレプリカ、スズキRG500Γ(ガンマ)を取り上げよう。※本記事はヤングマシン特別号 青春単車大図鑑からの転載です。
●文:ヤングマシン編集部
“2スト最強”と呼ばれた栄光のレプリカ
ヤマハのRZV500Rと並び立つ不世出の500レプリカが、このRG500ガンマである。
1976〜1982年までスズキはWGP500でメーカータイトルを7年連続獲得。その中核となったのがF・ウンチーニらが駆ったワークスマシン、RG500Γだ。
しかし1983年以降、スズキはワークス参戦を休止してしまう。
休止から2年後の1984年、海外仕様として、ワークスマシンとまったく同名の公道モデル、RG500Γが姿を現す。
すでに発表されていたヤマハRZV500Rとの違いは、徹底した「レプリカ度」。とにかくレーサーのRGガンマに似せることを至上命題に設計されていた。
【1985 SUZUKI RG500Γ】■水冷2ストスクエア4気筒 ロータリーディスクバルブ 498cc 64ps/8500rpm 5.8kg-m/7500rpm ■156kg ■タイヤサイズF=110/90-16 R=120/90-17 ●発売当時価格:75万9000円 ※写真は1986年のウォルターウルフカラー。
RZV500Rと異なるのは”徹底した「レプリカ度」”
とくにエンジンは本家に忠実。スクエア4のレイアウトはもちろん、排気量、吸気方式のロータリーディスクバルブ、ボア×ストロークまでレーサーと同じ。
クランクケースの設計もレーサーがベースで、2軸クランクの軸間距離まで同一とし、高価なカセット式ミッションさえ搭載した。
1985年に投入された国内仕様は64psに抑え込まれたが、フルパワーで驚異の95psをマーク。
アルミ製MR ALBOXフレームとグラム単位で軽量化した156kgのライトウェイトも相まって、「2スト最強」の称号を手に入れたのであった。
価格と免許制度の壁によりセールス的には奮わなかったものの、市販車としての生産性とコストを度外視したレプリカぶりに誰もが感服。
Γ(ガンマ)とは、ギリシャ語で「栄光」を意味する「ゲライロ」の頭文字を示すが、その名に恥じない性能とスピリットは間違いなく後世に残るだろう。
リヤから見るとスクエア4のメリットであるスリムさがよくわかる。当時の記者会見で、「なぜこのパーツはこの形なのですか」との質問に対し、「それはレーサーがその形だったからです」と回答した逸話が残っている。
並列2気筒を前後に配置したようなスクエア4は、コンパクト&高出力で理想的なレイアウト。当時の2スト500ccワークスレーサーの主流だった。ただし量産化は困難で、市販車では唯一、500/400Γのみが採用する。
6500rpmから異次元。瞬時に1万500rpmまで達するワープ加速は市販車最強レベルの評価も。寝かし込みの軽さやフルバンク中の安定感も抜群だった。
全日本TT-F1でワークスRG500Γがまとっていたウォルターウルフカラー。東海の暴れん坊こと水谷勝の代名詞で、ヤマハの平忠彦らと激戦を繰り広げた。GP活動休止中のスズキにとって水谷が国内のイメージリーダーだった。
スズキRG500Γ 兄弟モデル
1986 スズキRG400Γ WW
1985年2月、500に先駆けて国内に登場。排気デバイスSAECをはじめ、基本レイアウトは500と同一だ。1986年に500ともどもシングルシートカバーを採用した。写真は1986年の銀ウォルターウルフカラー。
【1986 RG400Γ WW】主要諸元■水冷2ストスクエア4気筒 397cc 59ps/9000rpm 4.9kg-m/8500rpm ■153kg ■タイヤサイズF=110/90-16 R=120/90-17 ●発売当時価格:65万9000円
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事([連載]青春名車オールスターズ)
公道モデルにも持ち込まれた「ホンダとヤマハの争い」 1980年代中頃、ホンダNS250Rはヒットしたが、ヤマハTZRの人気は爆発的で、SPレースがTZRのワンメイク状態になるほどだった。 しかしホンダ[…]
2ストエンジンの新時代を切り開いた名車 1980年代中頃、スズキのガンマ、ホンダのNSと、高性能レプリカが矢継ぎ早に出揃い、大ヒットを記録していた。 この潮流をみたヤマハはRZ250Rにカウルを装着し[…]
「その時、スペンサーになれた気がした」 MVX250Fの上位モデルとして400版の発売が検討されていたが、250の販売不振を受け計画はストップ。この心臓部を受け継ぎ、NS250Rの技術を融合したモデル[…]
ケニー・ロバーツが駆るYZR500のフルレプリカ 400レプリカが隆盛を極める1984年、ヤマハから究極のレーサーレプリカが送り込まれた。当時最高峰のWGP500王者に輝いたYZR500のフルレプリカ[…]
「ガンマ」が火をつけたレプリカ戦線にカワサキも参入 スズキRG250Γ(ガンマ)の登場で活気づいたレプリカ戦線に、勇んでカワサキも参入する。 1984年に投入されたKR250は、異彩を放つタンデムツイ[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
実車を前にすると違いは一目瞭然 アウトドアテイストの強いCT125ハンターカブが人気だからといって、ここまでキャラクターを寄せてくることないんじゃない? なんて穿った見方で、今回の主役であるPG‐1と[…]
ホンダ「モンキー125」(2018) 試乗レビュー この記事ではかわいらしいフォルムと実用性が同居したファンバイク、モンキー125の2018年モデルについて紹介するぞ。50ccのモンキーがディスコンと[…]
2020年モデル概要:600スーパースポーツが戦闘力を向上して復活 2016年に国内仕様の生産が一時ストップしていた、600ccクラスのスーパースポーツ「CBR600RR」が復活したのは、2020年の[…]
ストリートからワインディングまで、250レプリカをカモれるカフェレーサーを目指す! 1987年にヤマハがリリースしたSDR……それまでヤマハのスポーツバイク系ネーミング記号になかったアルファベットの組[…]
カブとは違うのだよスーパーカブとはっ! みなさんご存知のとおり、スーパーカブは2014年に立体商標として登録されている。この立体商標とは、いわば“形の特許”であり、立体商標として代表的なのは「コカコー[…]
人気記事ランキング(全体)
1998年登場のロングセラーモデル、ホンダCB1300シリーズの魅力とは? 今回は、私が白バイ隊員として約10年間、ホンダ CB1300に乗ってきた経験や感想を交えて、CB1300シリーズをお勧めする[…]
ストリートからワインディングまで、250レプリカをカモれるカフェレーサーを目指す! 1987年にヤマハがリリースしたSDR……それまでヤマハのスポーツバイク系ネーミング記号になかったアルファベットの組[…]
日本仕様にもニューカラー投入か 英国スズキは、マキシスクーター(日本でいうところのビッグスクーターにあたる)の「バーグマン400」にニューカラーを導入すると発表した。 深緑の『パールマットシャドウグリ[…]
カブとは違うのだよスーパーカブとはっ! みなさんご存知のとおり、スーパーカブは2014年に立体商標として登録されている。この立体商標とは、いわば“形の特許”であり、立体商標として代表的なのは「コカコー[…]
欧州で国内導入が明らかになったCL250の2025年モデル CL250の2025年モデルについて、国内導入が明かされたのは2024年11月のこと。フレームを共有するシリーズの長兄モデル「レブル500」[…]
最新の投稿記事(全体)
車種別専用パーツのラインナップも豊富なキジマ バイクメーカーが開発するニューモデルは、ビギナーからベテランに至る幅広いニーズに応えるべく仕様を決定しているが、それでもすべてのライダーの希望を叶えられる[…]
雨の日の滑るポイント「滑るMAXな四天王+1」 バイクが雨の日に滑る場所って、だいたい決まってます。もうわかりますよね? ライダーならみんな一度はヒヤっとしたことある、あの“定番トラップ”たちです。滑[…]
X500購入後、即サーキットへ! X500を購入して、初めて乗る場所に選んだのは筑波サーキット。目一杯、駆け抜けた! ストレートでスロットルを全開にし、はばかることなくパラレルツインが限界を迎えるまで[…]
ウエットレースで痛恨の転倒 2025年5月24日・25日に宮城県スポーツランドSUGOで開催された全日本ロードレース第2戦、SUPERBIKE in SUGO。JSB1000以外のクラスにとってはこれ[…]
グローバル展開では『500cc』のほうが有利になる地域も ホンダ「GB350」シリーズといえば、直近ではクラシカル要素を強化したGB350Cも新登場し、走りのフィーリングまで変えてくるこだわりっぷりが[…]
- 1
- 2