
1960〜70年代、CB750フォアを尖兵に、ホンダ/カワサキ/ヤマハ/スズキの日本4大メーカーが世界の頂点に君臨する時代が幕を開けた。本記事では、世界初の国産4気筒として世に生まれ落ちたホンダ CB750フォアについて振り返ろう。※本記事はヤングマシン特別号 青春単車大図鑑からの転載です。
●文:ヤングマシン編集部
「日本の旗艦が世界を討つ」
今から約半世紀前の1959年は、ホンダがマン島TTレースおよび世界GPに挑戦を開始した年だ。
同年、戦後より国民の移動手段として補助エンジンや実用二輪車を製造販売してきたホンダは、ベンリィCB92スーパースポーツを発売。マン島参戦とともに長年の伝統を誇る名ブランド”CB”がここに誕生する。
ホンダは戦後の高度経済成長期に最も躍進した企業のひとつ。その技術力は世界屈指といえ、実際に1960年代にマン島TTや世界GPなどで幾多の優勝を獲得したことは偉業と言える。当時のレーサーたちは排気量によって1〜6つのシリンダーを持ち、9段ミッションを備えるものまであった。
1965年にはDOHC2バルブヘッドを搭載した、2気筒のCB450で英国650㏄勢に挑んだが、性能で上回りながら、販売は不振。大排気量のステータスが求められた。
これを受けて1968年10月の東京モーターショーで発表されたCB750フォアは空冷4気筒を搭載し、翌1969年から市販を開始。最高速度200㎞/hに迫る圧倒的な動力性能や、前輪ディスクブレーキなどの先進装備が注目された。
同年の鈴鹿10時間耐久レースでは、1・2フィニッシュで勝利。1970年デイトナ200マイルレースでも凱歌を上げ、世界的な大ヒットを記録した。
1972年にはカワサキZ1が投入され、大型車市場に拍車がかかる。
さらにスズキ、ヤマハも加わり、日本製ビッグバイクは世界のトップブランドに成長していく。そのルーツにホンダCBの名があったことは紛れもない事実なのだ。
【1969 HONDA CB750Four】■空冷4スト並列4気筒 SOHC2バルブ 736cc 67ps/8000rpm 6.1kg-m/7000rpm ■218kg ■タイヤF=3.25-19 R=4.00-18 ●価格:38万5000円
初期型K0はあまり売れないと考えて砂型鋳造のクランクケースを採用。消音対策の都合上、エンジン出力の取り出しにはプライマリーチェーンを組み合わせている。GPマシンとは異なった、市販を考慮した手法だ。
片押し1ポッドキャリパーを採用したフロントディスクブレーキ。ドラムブレーキが一般的だった当時からすると先進的な装備。
開発目標は68ps/8500rpm。初期型K0の公称値は67ps/8000rpmでほぼ狙いどおりだ。最高速度200km/hを目指したこの出力は、DOHCでなくても実現可能とされ、エンジンの小型化を優先して空冷/ドライサンプ/SOHCを採用した。
ホンダCB750フォアの系譜
【1969 HONDA CB750Four K0】国産初の4気筒エンジンを搭載。736ccの排気量と合わせて圧倒的スペックを実現。初期型K0はサイドカバーにスリットがあるのが特徴だ。
【1970 HONDA CB750Four K1】シート下のオイルタンクを車体内側に追い込んでスリム化して、足着き性を向上。キャブレターは強制開閉式となり、燃料タンク容量は19→17Lに。
【1972 HONDA CB750Four K2】パッシングとポジションランプが新設され、尾灯や反射板は大型化。アシストバーはグラブレールに変更して、リヤショックも一新した。K3は1973年輸出仕様。
【1975 HONDA CB750Four K4】リヤサスのプリロードを3→5段に。燃料タンクキャップは鍵付きに改められた。左右スイッチやトップブリッジ、シート表皮も形状変更されている。
【1976 HONDA CB750Four K6】K4のマイナーチェンジモデル。タンデムステップの取り付け角度が斜め後方となり、ウインカーブザーを追加するなど安全対策が施された。
【1977 HONDA CB750Four K7】外装デザインはK6までとは別物。後輪を17インチ化して、リヤディスクブレーキ(輸出仕様は一部にリヤドラムあり)も採用。
ホンダ CB750フォア 派生モデル
【1975 HONDA CB750Four-II】カフェレーサーブームに乗り、ロングな燃料タンクにシートカウル、集合マフラーなどをアレンジしたバリエーションモデル。ハンドルはアップタイプを採用し、リヤもディスクブレーキ化された。
【1977 HONDA Eara】K7と同じ車体構成のオートマモデル。ただしリヤブレーキはドラム式で、サイドケース対応の2本出しマフラーなどもK7とは違うポイントだ。当時としては異例な2速ATを採用し、女性ライダーにも操作の簡便さをアピールした。
ホンダ CB750フォア 兄弟モデル
【1971 HONDA CB500Four】怪物と言われた750をひと回り小さくした日本人向けモデル。並列4気筒SOHC2バルブに4キャブ、ディスクブレーキという先進性は750譲りだ。1974年には排気量を544ccに拡大したCB550フォアが登場。
【1972 HONDA CB350Four】クラス唯一の4気筒を搭載。4本マフラーも備えたCBフォアシリーズの末弟である。排気量に対してやや高値だったこともあり、販売は低迷した。後にカフェレーサースタイルの“ヨンフォア”が登場し、圧倒的な人気を誇った。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事([連載]青春名車オールスターズ)
ナナハン並みの極太リヤタイヤに見惚れた〈カワサキ GPZ400R〉 レーサーレプリカブーム真っ只中の1985年。技術の進化に伴い、各社はレースで培ったテクノロジーをフィードバックさせたモデルを多く打ち[…]
ヤマハXJ400:45馬力を快適サスペンションが支える カワサキのFXで火ぶたが切られた400cc4気筒ウォーズに、2番目に参入したのはヤマハだった。FXに遅れること約1年、1980年6月に発売された[…]
ヤマハFZR400:極太アルミフレームがレーサーの趣 ライバルがアルミフレームで先鋭化する中、ついにヤマハもFZの発展進化形をリリースする。 1986年5月に発売されたFZRは、前年に発売されたFZ7[…]
スズキ バンディット400:GSX-Rのエンジン流用ネイキッド 59psというクラス最強のパワーを持ち、1984年に華々しく登場したGSX-R。 レーシーに設定されたこのマシンの心臓部の実用域を強化し[…]
ヤマハFZ400R:ワークスマシンと同時開発 市販レーサーと同時開発したNS250Rがリリースされた1984年5月。 400クラスにも同様の手法で開発されたマシンが、ヤマハから世に放たれた。 FZ40[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
〈1988年8月〉SR400[3HT1]/500[3GW1]:負圧式キャブ採用 負圧式BSTキャブレターに変更して始動性や加速性を向上。カムシャフトも変更して、扱いやすさを高めた。エアボックスの容量ア[…]
GSX-Rで培ったフラッグシップでもライダーに優しい高次元ハンドリングを追求! 1999年にデビューしたスズキGSX1300R HAYABUSAは、いまも最新世代がカタログにラインアップされるロングラ[…]
4気筒CBR250との棲み分けでさらに長期モデル化の一途へ! ホンダが1982年5月にリリースしたVT250Fは、パワフルな2スト勢に対抗できる唯一の存在として瞬く間に10万台を突破するベストセラーと[…]
〈1983年3月〉SR400[34F]/500[34A]:STDもスポークホイール化 標準モデルもスポークにマイナーチェンジ。新設計のピストンリングやバルブ、オイルライン等も見直して耐久性を高め、セミ[…]
ホンダにとって英国はスポーツバイクの奥深さを学んだ特別なカルチャーのの土地柄! 1985年、ホンダはGB400/500と名づけられたビッグシングル(単気筒)スポーツをリリース。 その風貌はトラディショ[…]
人気記事ランキング(全体)
さほど高性能でもない2台のスズキ製250ccスポーツは、なぜ意外と目立つのか? 車検がないのに高速道路に乗れるのが、125cc超~250cc以下の軽二輪モデルのメリットだ。そのため国内各メーカーもこの[…]
3Mシンサレート採用の4層構造で冬走行の冷えを軽減する 本商品は、防風ポリエステル生地/3Mシンサレート中綿/裏起毛の4層構造で手全体を効率よく保温する設計。一般的なポリエステル綿と比べて中綿が軽く、[…]
想像を上回る使い勝手のよさ SHOEIが2026年1月9日にSHOEI Gallery(SHOEI Gallery Online Storeを除く)で先行発売する電子調光ドライレンズ「e:DRYLEN[…]
16か所発熱で走行中の冷えポイントを広くカバーする 冬の走行時にとくに冷えやすいのが、肩/背中/腹部などの体幹部である。本モデルは16か所にヒーターを内蔵しており、一般的な電熱ベストより発熱面積が広い[…]
ホコリや汚れを呼ぶ潤滑スプレー 鍵を差すときに動きが渋いなーとか、引っ掛かるなーと感じたことはありませんか? 家の鍵や自転車の鍵、倉庫の南京錠など、身の回りにはいろいろな鍵がありますが、屋外保管しがち[…]
最新の投稿記事(全体)
自分好みの仕上がりにしたいなら、製作途中でのオーダーがおすすめ どんな極上車と言えども、製造から何十年もの歳月を経たバイクを販売するには、整備や修理が不可欠。だが、ショップが仕上げた仕様やスタイルが万[…]
Thrashin supply(スラッシンサプライ):アグレッシブな走りとスタイルを実現。新作フットコントロール ストリートに馴染むカジュアルなデザインと走りを前提とした機能性の高いパーツで、瞬く間に[…]
開口幅調整不要でピッタリフィット。潰れたネジを掴める縦溝付き 通常のウォーターポンププライヤーは掴む相手に合わせてあらかじめ開口幅を調整する必要があるが、この製品は最大開口幅のままグリップを握るだけで[…]
失敗したくない中古車選び、レッドバロンなら安心できる 「新車よりも安い」というのは一般的な中古車の特徴の一面であって、それだけがすべてではない。「空冷のスポーツスターが欲しい!!」となれば中古車を探す[…]
映画の世界を正確に再現したEVバイクをカスタムビルド トロンは1982年にディズニーが作ったSF映画で、全面的にコンピュータグラフィックスを使ったのは世界初の試みでした。コンピュータのプログラム世界の[…]
- 1
- 2






















































