
世に出ることなく開発途中で消えて行ってしまったマシンは数あれど、それが表に出てくることは滅多にない。ここではそんな幻の名車を取り上げてみたい。今回はOTODAMA=V-MAX2000を紹介しよう。 ※ヤングマシン2009年5月号/1998年8月号より
●文:ヤングマシン編集部
【’09VMAX開発秘話】2リッター「音魂(オトダマ)」は失敗だった
新VMAXの開発には実に十数年の歳月が費やされた。このプロジェクトを長い間推し進めてきた中心人物は開発の経緯をおよそ次のように語る。
「’95年にNYのグッゲンハイム美術館で二輪車の美術展があり、そこに展示されていたのが先代V-MAXだったのです。私は日本車とは何か、ヤマハらしさとは、ブランドとは……と考えました。先代型をこのまま絶版にするのも惜しい、次世代につなげたいとの思いもありました。
コンセプトは魔神。英語のマシンともかけていますが、機械でありながら生命体でもあり、有機的なイメージ をもたせた『人機官能』の権化として君臨するものです。さらに『日本人であること、日本製である事を再認識した物づくり』をテーマに掲げ、その具現化を試みました。造り込みに妥協は一切ありません。しかし道のりは平坦ではなく、開発過程でのエンジン『音魂』は目標数値を達成したものの、あまりにも大きすぎたため車体のバランスも大きくなりすぎて、プロジェクトを一度白紙に戻す……という紆余曲折もありました。長い間お待たせしたのはそのためです」 ※ヤングマシン2009年5月号より
【YAMAHA OTODAMA 2001年東京モーターショー出品オブジェ】’01年の東京モーターショーで展示されたオブジェ「音魂」。排気量は非公式ながら2000㏄と噂され、これを搭載した試作車も造られたが、一旦計画中止に。
【YAMAHA VMAX 2009年型国内仕様】最初にトライされた音魂エンジンは、あまりにも質量が大きすぎたということから1500ccで再出発。しかしそれでは目標の200psを達成できず排気量を拡大し、結果的に要求値を満たす1679ccとなった。写真の国内仕様は当時国内最高の151psで発売された。
【スクープ】2000年に2000㏄、嘘のような本当のハナシ
※以下、ヤングマシン1998年8月号より
’85年の初登場以来、マッチョなモンスターとして君臨し続けて来たV-MAXが、ついに重い腰を上げる。ド迫力ボディに「V4ユニットという基本構成こそ踏襲するが、その排気量が衝撃。な、なんと2000cc!! これはまさに4輪並み。1200だ1300だと最大排気量争いを繰り広げるネイキッドをぶち抜き、新V-MAXは一気に頂点へ上り詰めるのだ。
一時代を築き、今なお根強いファンを持つV-MAXが、矢継ぎ早に登場するスーパースポーツやネイキッドに主役の座を追われはじめている。”ヤマハのビッグバイク”を強烈に印象づける財産が、このままでは風化してしまう……。だが、ヤマハは考えていた。僕らの想像をはるかに越えるスケールで、21世紀を見据えたスーパードラッガーを登場させる。核となるのは、もちろんエンジン。現行モデルの1200㏄に対して、なんと2000㏄へとスケールアップを図るのだ。今でさえ強烈な個性&迫力を持つ鉄の塊=V4ユニットが、どうしちゃったの? ってぐらいデカくなる。そうなれば当然、現行モデルよりさらに力強く頼りがいのある、熱い脈動を刻み続けることになるのだ。パワーやトルクだって、当然2000ccにふさわしいスペックになるはず。1Lあたり100ps&10㎏-mとかなり低く見積もったとしても、その2倍なら200ps&20kg-m。う~ん、これは楽しすぎる。
現段階ではあくまで、“検討中”モデルだが、ヤマハが発売を真剣に考えているのは紛れもない事実。期待して、2000年を待っていようぜ!
当時多くの人を驚かせたヤングマシンのV-MAX2000のスクープ。記事を掲載した1998年8月号から10年後、2009年5月号の開発秘話でその存在が明かされるというまさかの展開に。
20年前にこのレベルのCGを制作していたことにもビックリ。果たしてV型4気筒2000ccはどんな乗り味だったのか?! これもまた幻の名車と言っていいだろう。
それぞれ引用元のヤングマシン1998年8月号と2009年5月号。ハヤブサは175psで1999年に、V-MAXは1679ccになって2009年に、カワサキのスーパーチャージャーはH2となって2015年に発売された。
※本稿は2018年8月27日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事([特集] 幻の名車)
幻のヤマハロータリー〈RZ201〉 1972年東京モーターショウの最大の話題は彗星のように登場したこのローターリー車だ。水冷・横置きツインローターを搭載、また前輪とともに後輪にもディスクブレーキを採用[…]
石油危機で消えたポストZ1候補2台目はロータリーエンジン 1970年代初頭、ロータリーエンジンは一般的なレシプロエンジンよりも低振動でよりフラットなトルクカーブとスムーズなパワーデリバリーが実現できる[…]
イタリアンイメージをネーミングやデザインに注入 これらデザインスケッチ等は、1989年8月にウェルカムプラザ青山で実施された「MOVE」展で公開されたもの。これは本田技術研究所 朝霞研究所が企画して実[…]
2ストローク90ccの「CO-29」は、キーレスにポップアップスクリーン採用 1988年に劇場版「AKIRA」が公開された翌年、1989年8月にウェルカムプラザ青山で「MOVE HONDA MOTOR[…]
1984年にツインチューブフレームを採用していた これはホンダウェルカムプラザ青山で1989年8月に開催されたイベント「MOVE」に出品されたプロトタイプのCR-1。モトクロッサー、CR500Rのエン[…]
最新の関連記事(ヤマハ [YAMAHA] | 名車/旧車/絶版車)
ヤマハXJ400:45馬力を快適サスペンションが支える カワサキのFXで火ぶたが切られた400cc4気筒ウォーズに、2番目に参入したのはヤマハだった。FXに遅れること約1年、1980年6月に発売された[…]
手軽な快速ファイター 1989年以降、400ccを中心にネイキッドブームが到来。250でもレプリカの直4エンジンを活用した数々のモデルが生み出された。中低速寄りに調教した心臓を専用フレームに積み、扱い[…]
ヤマハ・ハンドリングの真骨頂、パイプ構成では得られないデルタ形状アルミ鋼板フレーム! 1980年に2スト復活を世界にアピールしたヤマハRZ250の衝撃的なデビューに続き、1983年にはRZ250Rで可[…]
RZ250を上回る新テクノロジー満載! 1979年にホンダがリリースした、まさかの2ストローク50ccスポーツのMB50(広告なでの名称はMB-5)。 250ccやビッグバイクのスケールダウン・デザイ[…]
ヤマハ・ハンドリングのこだわりを400レプリカ路線へ融合! 1980年にRZ250をリリース、レプリカの時代に先鞭をつけたヤマハも、4ストのスポーツバイクXJ400系ではツーリングユースを前提とした、[…]
人気記事ランキング(全体)
距離もブランドも関係なし!50人同時通話を実現 EVA Rモデルは、EVANGELION RACINGをモチーフとした特別デザイン(初号機A/B、2号機A/Bの全4モデル)をまとい、ナイトランでも存在[…]
最新の安心感と46worksテイストを両立した「究極のコンプリートモデル」 この『#02』は、2024年に限定販売された初代モデルに続くコンプリートカスタムモデル。今まで46worksが得意としてきた[…]
未塗装樹脂の白ボケ原因とツヤを復活させる方法 黒かったものが白っぽくなってくると古臭く見えてしまいます。…いいえ、「白髪」ではなくて「黒樹脂(未塗装樹脂)パーツ」のオハナシです。 新車の頃は真っ黒だっ[…]
APトライク250って高速道路で通用するの? チョイ乗り系トライクとして知られるAPトライク125は、125ccという排気量ながら「側車付き軽二輪」という区分のおかげで高速道路を走れます。しかしながら[…]
防寒着に求められる3要素を網羅 真冬のバイク乗りにとって、防寒は死活問題だ。アウターで風を遮断しても、その内側、つまりミドルレイヤーやインナーの選択次第で、ツーリングの快適度は天と地ほど変わってしまう[…]
最新の投稿記事(全体)
2023年からV4エンジンの開発は始まっていた CFMOTOは、すでに2023年のEICMAでスーパースポーツ向けV4エンジンのプロポーザルを行っており、昨年はV4搭載マシンのモックアップモデルを展示[…]
勝利の哲学を纏った限定モデル 世界最大級のモーターサイクル展示会であるEICMAにて初披露されたこの限定エディションは、Insta360が誇る最先端の技術と、9度の世界チャンピオンであるマルケスの不屈[…]
生活圏に牙を剥く「熊」から命を守れ!! 年、都市近郊や住宅地にまで出没し、甚大な被害をもたらしている**「人里の熊」。もはや登山家や釣り人だけの話ではない。愛車を駆る週末ライダーも、通勤・通学の一般市[…]
激白!プレゼントは「自分の欲しいもの」が圧勝! 「日頃の感謝を込めて…」なんて殊勝なことを考えてる男性も女性もいるだろうが、甘い! そのプレゼント、本当に喜ばれているのか? パナソニックが行った調査結[…]
愛知の熱きモビリティ企業、プロトが名古屋をジャック! JAIA(日本自動車輸入組合)会員としてベネリモーターサイクルの正規輸入元を務め、さらに愛知モノづくり企業「愛知ブランド」の認定も受けるプロト。オ[…]
- 1
- 2








































