2023年末にタイ、そしてベトナムで相次いで発表され、2024年12月現在も国内導入が待たれるヤマハの「PG-1」。誰がどう見てもホンダのハンターカブ&クロスカブにブツけてきたライバル車だが、その実力やいかに。ハンターカブ&クロスカブも用意して、徹底的に比べてみたぞ。
●文:谷田貝洋暁 ●写真:真弓悟史
カブとは違うのだよスーパーカブとはっ!
みなさんご存知のとおり、スーパーカブは2014年に立体商標として登録されている。この立体商標とは、いわば“形の特許”であり、立体商標として代表的なのは「コカコーラの瓶」や「キッコーマンの卓上醤油瓶」といったところ。余談だが、後者を手がけているのは、ヤマハの各種モデルデザインを手かけてきたGKデザインだったりする。
なんでも、立体商標を得るには“名前を聞いて誰もが思い浮かぶ形であること”が重要だそうだが、乗り物が立体商標として認められるというのは、とても稀なこと。スーパーカブは、乗り物として日本初の立体商標登録となったが、海外でもフォルクスワーゲン ビートルぐらいしか例がない。
そんな観点で見てみると、PG‐1はうま~く“カブらしさ”を外している(笑)。前後16インチのホイールもそうだし、レッグシールドもなければ、ユニットステアも採用していない。
横型エンジンとアンダーボーンフレームという基本構成は一緒だが、逆に言うとそのぐらいしか共通点が見つけられないのだ。似てはいるものの、遠目にみてもPG‐1とスーパーカブを見間違えることはないだろう。
スタイリング比較
シルエットは似通っているようで、ホイール構成/マフラーの高さ/キャリアの有無や大小といったあたりはかなり異なる。
ライディングポジション比較
PG-1:大柄なライダーも満足のポジション
PG-1は、シート高795mm。カブ系に比べてシート形状がスリムで足が出しやすく、数値の割りに足着き性がよく、踵までべったり。カブ系同様上半身の背筋は伸びるが、ステップポジションが低く、膝の曲がりに余裕があるのがポイント。【身長172cm/体重75kg】
クロスカブ110:足着きはよくコンパクト
クロスカブ110は、シート高784mm。3車種の中でもっともスーパーカブらしいフォルムで、足着き性もよく、踵までべったり付いた状態で膝にも余裕がある。ハンドル幅も795mmと狭めでポジションも全体的にコンパクトな印象だ。
CT125ハンターカブ:カブ系としてはハンドルがワイド
対して、CT125ハンターカブはシート高800mmで、カブ系としては最高数値。サイド回しのエキゾーストパイプ&吸気ダクトがあるおかげで車幅もあり、結果として踵が数センチ浮き、カブ系としては足着き性はよくない。ハンドル幅も805mmとワイドに設定されている。
スペック比較一覧表
車名 | PG-1(諸元はベトナム仕様) | クロスカブ110 | CT125ハンターカブ |
全長×全幅×全高 | 1980×805×1050mm | 1935×795×1110mm | 1965×805×1085mm |
軸距 | 1280mm | 1230mm | 1260mm |
最低地上高 | 190mm | 163mm | 165mm |
シート高 | 795mm | 784mm | 800mm |
キャスター/トレール | 26.5度/83mm | 27度/78mm | 27度/80mm |
装備重量 | 107kg | 107kg | 118kg |
エンジン型式 | 空冷4ストローク単気筒 SOHC2バルブ | ← | ← |
総排気量 | 113.7cc | 109cc | 124cc |
内径×行程 | 50.0×57.9mm | 47.0×63.1mm | 50.0×63.1mm |
圧縮比 | 9.3:1 | 10.0:1 | 10.0:1 |
最高出力 | 8.9ps/7000rpm | 8.0ps/7500rpm | 9.1ps/6250rpm |
最大トルク | 0.96kg-m/5500rpm | 0.90kg-m/5500rpm | 1.1kg-m/4750rpm |
始動方式 | セルフスターター | ←(キック併設) | ←(キック併設) |
変速機 | 4段 | ← | ← |
燃料タンク容量 | 5.1L | 4.1L | 5.3L |
タイヤサイズ前 | 90/100-16 | 80/90-17 | 80/90-17 |
タイヤサイズ後 | 90/100-16 | 80/90-17 | 80/90-17 |
ブレーキ前 | 油圧式ディスク | 油圧式ディスク(ABS) | ← |
ブレーキ後 | 機械式ドラム | 機械式ドラム | 油圧式ディスク |
価格 | ── | 36万3000円~ | 47万3000円 |
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