2023年末にタイ、そしてベトナムで相次いで発表され、2024年12月現在も国内導入が待たれるヤマハの「PG-1」。誰がどう見てもホンダのハンターカブ&クロスカブにブツけてきたライバル車だが、その実力やいかに。ハンターカブ&クロスカブも用意して、まずはストリートで試乗! 結論から言えば、意外とキャラクターが違ったぞ!!
●文:谷田貝洋暁 ●写真:真弓悟史
似ているようでカブとはまったく違うのだ
アウトドアテイストの強いCT125ハンターカブが人気だからといって、ここまでキャラクターを寄せてくることないんじゃない? なんて穿った見方で今回の主役であるPG‐1と対峙したのだが…。自動遠心クラッチの横型エンジンにアンダーボーンフレームといった共通点はあるものの、実車を前にすると、カブ系に比べてずいぶんと腰高な印象を受ける。
カブでは定番の前後17インチホイールではなく、やや小さめの16インチホイールを履いているものの、最低地上高が190mmと、ライバルであるCC110(163mm)、CT125(165mm)に比べると異様に高い。
またステアリングに関しては、CC110が採用するカブ系定番のユニットステアではなく、CT125と同じ上下ブラケット付きのフロントフォークを備えている。この時点でコミューターではなく、スポーツバイクとして作り込まれていることは明らかなのだが、跨ってみるとさらにカブ(とくにCT125)との違いが明確化してきた。
走るまでもなくステアリングまわりの剛性感がCT125よりも高く、ハンドルの抑え込みも効く。また車体剛性アップを狙ってだろう、メインフレームは思い切りセンタートンネル部分が高められいるが、走り出せばカブ系のマシンにありがちな車体の心許なさが皆無。
PG-1は、カブ系が属するビジネスバイクジャンルではなく、ファンバイクとかスポーツバイクのフィーリングに近いのだ。このあたりの関係性はCC110とCT125に近しいところがあるが、PG‐1はCT125よりもさらにスポーツ性を高めに設定した雰囲気だ。
エンジン性能に関しては、エンジン回転数でパワーを稼ぐCC110とは違い、中低速でのトルクを重視した設定で、その排気音や加速フィーリングはどちらかといえばCT125に近い。ただ排気音がやや大きめで早朝の配達業務にはちょっと使いにくそうである(笑)。
また3台同時でのシグナルダッシュもしてみた。出足こそ軽さで勝るCC110が先行するものの、後伸びするPG‐1とCT125がジワリジワリと追い越す感じ。ただトップスピードに関しては、意外なほど差を感じなかった。
ただ、これがコーナリングとなるとずいぶんと話が違ってくる。結論から書けば、ビジネスバイクの域にあるカブ系に対して、PG‐1はしっかりスポーツバイクしているのだ。
前述した剛性感あふれるステアリングはダイレクト感に溢れているし、センタートンネル高めのフレームは大きな応力がかかっても心許ないところがない。カブ系のユニットステアに比べるとPG‐1は格段にコーナーが攻めやすいのだ。
しかも同じ上下ブラケット付きのCT125と比べてもやはりPG -1の方がコーナリングでの限界性能は高い。後輪の荷重が多めに設定されたカブ系とは違い、しっかりフロント荷重がかかるようになっているところが大きい。ハングオフだの、リーンアウトだのを試してみたくなるぐらいコーナーを攻め込める。
PG-1/クロスカブ110/CT125ハンターカブのスペック比較
車名 | PG-1(諸元はベトナム仕様) | クロスカブ110 | CT125ハンターカブ |
全長×全幅×全高 | 1980×805×1050mm | 1935×795×1110mm | 1965×805×1085mm |
軸距 | 1280mm | 1230mm | 1260mm |
最低地上高 | 190mm | 163mm | 165mm |
シート高 | 795mm | 784mm | 800mm |
キャスター/トレール | 26.5°/83mm | 27°/78mm | 27°/80mm |
装備重量 | 107kg | 107kg | 118kg |
エンジン型式 | 空冷4ストローク単気筒 SOHC2バルブ | ← | ← |
総排気量 | 113.7cc | 109cc | 124cc |
内径×行程 | 50.0×57.9mm | 47.0×63.1mm | 50.0×63.1mm |
圧縮比 | 9.3:1 | 10.0:1 | 10.0:1 |
最高出力 | 8.9ps/7000rpm | 8.0ps/7500rpm | 9.1ps/6250rpm |
最大トルク | 0.96kg-m/5500rpm | 0.90kg-m/5500rpm | 1.1kg-m/4750rpm |
始動方式 | セルフスターター | ←(キック併設) | ←(キック併設) |
変速機 | 4段 | ← | ← |
燃料タンク容量 | 5.1L | 4.1L | 5.3L |
タイヤサイズ前 | 90/100-16 | 80/90-17 | 80/90-17 |
タイヤサイズ後 | 90/100-16 | 80/90-17 | 80/90-17 |
ブレーキ前 | 油圧式ディスク | 油圧式ディスク(ABS) | ← |
ブレーキ後 | 機械式ドラム | 機械式ドラム | 油圧式ディスク |
価格 | ── | 36万3000円~ | 47万3000円 |
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