AT小型限定普通二輪免許で乗れる原付二種のうち、スクーターを除いたアンダーボーンスタイル/モーターサイクルタイプのバイクを紹介する。クラッチレバー操作不要なことがAT限定の条件だがマニュアルシフト操作を楽しめるものもある。ここではそんな“カブの操作系”を持つ8車を集めてみた。
●文:ヤングマシン編集部
最短2日間で修了可能な“AT小型限定普通二輪免許”で運転できる
バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付を除いてAT限定免許も設定されている。大型二輪免許は18歳以上でないと取得できないが、原付~普通二輪免許は16歳から取得可能だ。
ここで紹介する「AT小型限定普通二輪免許」を取得するには指定教習所に通って技能&学科教習を受講し、卒業検定で実技試験合格後、お住まいの各都道府県にある運転免許センター(運転免許試験場)で学科試験に合格すれば、めでたく免許保持者になる。
免許なし、もしくは原付免許のみ所有している場合は上記のような流れだが、普通自動車免許を持っていれば学科教習が1時間のみとなり、あとは技能教習を受ければOKだ。
さらに、2018年5月31日から道交法が見直され、1日に受けられる技能教習が4時間へと拡大されたことにより、AT小型限定であれば8時間を最短2日で修了可能、AT限定なしの場合でも3日で修了することができるようになった。
教習所に通わない場合は運転免許センターで学科および実技試験に合格すればいいが、実技試験はそこそこハードルが高いと言われている。5万円~15万円程度(所有免許による)とされる教習所費用は省略できるが、それなりのスキルと、不合格だった場合は再び受験するなどの手間が必要になる。また、指定教習所卒業者は学科試験合格後に技能講習と応急救護講習が免除されるが、運転免許センターで技能試験に合格した場合は受講義務が生じる。
125cc・カブ系ATバイクのメリットは?
AT小型限定普通二輪免許で運転できる
原付二種スクーターや今回紹介するカワサキのEV、カブ系の操作システムを搭載したモデルは、原付免許の次に取得が容易な“AT小型限定普通二輪免許”で運転できる。一方で、カブ系はマニュアルトランスミッションを搭載しているので、クラッチ操作は不要だがギヤチェンジ自体はマニュアルで行う。これも楽しみのひとつだ。
軽い
ひとつ上の軽二輪(126~250cc)クラスでは車重160kg前後が一般的なのに対し、原付二種クラスはフルサイズのカウル付きでも140kg台にとどまり、前後12インチホイールのダックス125などは100kg少々。押し引きや跨った瞬間にも軽さを実感しやすく、運転への不安は小さい。
維持費が安い
車両価格は50万円未満で、110ccクラスは30万円台からラインナップされる。税金は1年に2400円(91~125ccの場合)で済み、自賠責保険は12か月で6910円(離島と沖縄県を除く)、任意保険はファミリーバイク特約なども使えてかなりリーズナブル。そしてなんといっても燃費がいい。実燃費で40km/L以上走るのが普通で、50km/Lを超えることも全く珍しくない。
2人乗りできる
原付一種(50cc以下)は1名乗車しか認められていないが、原付二種以上はタンデムシートやタンデムステップを備えていれば2人乗りが可能。ただし二輪免許を取得してから1年が経過した後じゃないと違反になるので注意が必要だ。
二段階右折が不要
原付一種では、二段階右折禁止の標識がある場合を除き、進行方向が3車線以上の道路で二段階右折が必要になるが、原付二種からはクルマや大型バイクと同じように右折レーンを使えるようになる。
125cc・カブ系ATバイクのデメリットは?
操作が煩雑と感じるかも?
カブ的な操作系を持つモデルはギヤチェンジは自分で行う必要がある。ギヤシフト時の回転合わせに少しコツがいるので、慣れていないとギクシャクしがちだ。これを面白いと受け取るか面倒と受け取るかで印象がガラリと変わるだろう。
高速道路を走れない
高速道路を走行できるバイクは126cc以上と決まっており、原付二種以下は走行不可。一部の車種ではエンジンパワー的に問題ないだろうと思われる方もいるかもしれないが、そのぶん任意保険料が安かったりするという棲み分けがあるのだ。
必要十分だが速くはない
街中や郊外の交通の流れに乗るには十分なパワーを持っているのが125ccバイク。とはいえ大排気量車に比べれば余裕があるとは言えず、山岳路などの登り勾配ではけっこう頑張ってる感が出てしまう。それが楽しくもあるのだが。
上のクラスに比べて装備は簡素
フルカラーメーターやパワーモードといったものはなく、シンプルでコスパに優れた装備になりがち。とはいえABSまたはコンビブレーキは必ず装備しており、LEDヘッドライトといった商品性を高めるものも採用例は多い。
2024年、125ccのATバイクはどんな状況?
ホンダが“クラシックウイングシリーズ”と呼ぶ、過去のモデルをリスペクトしたデザインのバイクがモンキー125、スーパーカブC125、CT125ハンターカブ、ダックス125の全4車あり、このうちモンキー125はマニュアルクラッチを備えているので今回の8選からは除外される。これらにスーパーカブ110/プロ、クロスカブ110が加わり、ホンダが盤石の態勢を敷く。
海外ではタイの大手メーカーであるGPXがPOPz 110というモデルを販売し、国内仕様のスーパーカブが標準装備しないタンデムシートや、カラフルな5色展開で独自の魅力をアピール。
さらにタイとベトナムで発売されたヤマハ「PG-1」が少数ではあるが国内に流通しており、こちらもタンデムシート標準装備やオフロードでの爽快な走りでハンターカブの向こうを張る。実際の比較試乗はリンクを参照されたし。
【2024年10月版】125ccバイク、AT限定免許で乗れるけど“スクーターじゃない”原付二種おすすめ8選!
ホンダ CT125ハンターカブ
ボアストローク50.0×63.1mmの新型エンジンを、クラシックウイングシリーズで最後に採用して2022年12月に発売されたCT125ハンターカブ。その際に写真のグレーが新色として追加された。往年のCT110ハンターカブをオマージュして誕生したレジャーバイクで、軽いオフロードなら難なくこなすようエンジン下のスキッドプレートや転んでも壊れにくいハンドルバーマウント式のフロントウインカーなどを採用。アップマフラーや巨大なリヤキャリア、50cm程度の水深ならそのまま走れる走破性など、小さいながらも本格的なマシンとして多くのファンに支持される。
前後ディスクブレーキ+ABS、LEDヘッドライトといった現代的な装備も自慢。気軽に引き返すことができるという取り回しのよさも含め、ヤングマシンメインテスター丸山浩さんをして“真のアドベンチャーマシン”と評された。AT限定免許で運転可。
ニューカラーの2025年モデルは12月発売だ。
主要諸元■全長1965 全幅805 全高1085 軸距1260 シート高800(各mm) 車重118kg(装備)■空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ 123cc 9.1ps/6250rpm 1.1kg-m/4750rpm 変速機4段リターン(停止時のみロータリー式) 燃料タンク容量5.3L■タイヤサイズ=前後80/90-17 ●価格:47万3000円 ●色:ベージュ、灰、赤 ●発売日:2024年12月12日
ホンダ ダックス125
2022年9月に発売された、ホンダ“クラシックウイング”シリーズの最新モデル。胴長短足がカワイイ犬種「ダックスフンド」をイメージして1969年に登場した「ダックスホンダ」のスタイリングを現代に復刻したもので、エンジンはスーパーカブC125と同じく50.0×63.1mmのロングストローク単気筒に自動遠心クラッチ+4速トランスミッションを組み合わせ、AT限定免許で運転できる。
車体はダックスらしい胴長スタイルをつくり出す鋼板プレス製のTバックボーンフレームの中に燃料タンクやエアクリーナーボックスを収め、足まわりは前後12インチのキャストイールにチューブレスタイヤを履く。φ31mm倒立フロントフォークや前後ディスクブレーキ+ABS(前輪のみ働く1チャンネル)を装備し、価格は8月22日発売モデルから最新スーパーカブC125と横並びの45万10000円に。
主要諸元■全長1760 全幅760 全高1020 軸距1200 シート高775(各mm) 車重107kg(装備)■空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ 123cc 9.4ps/7000rpm 1.1kg-m/5000rpm 変速機4段リターン(停止時のみロータリー式) 燃料タンク3.8L■タイヤサイズF=120/70-12 R=130/70-12 ●価格:45万1000円 ●色:黒、青、灰 ●発売日:2024年8月22日
ホンダ スーパーカブC125
2021年に令和2年排出ガス規制適合の新エンジンに切り替わり、最新カラーは2024年3月に登場したばかりのパールボスポラスブルー。これにマットアクシスグレーメタリック、パールネビュラレッドを加え、全3色でのラインナップだ。。スーパーカブC125は、1958年に発売された初代スーパーカブC100の誕生60周年を記念して2018年に初登場し、仕上げの美しい専用キャストホイールやフロントディスクブレーキ、スマートキーといった装備が自慢。自動遠心クラッチ+4速トランスミッションを組み合わせたエンジンは、のちにダックス125にも展開された。2024年モデルで初の値上げ(1万1000円)。
主要諸元■全長1915 全幅720 全高1000 軸距1245 シート高780(各mm) 車重110kg(装備)■空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ 123cc 9.8ps/7500rpm 1.0kg-m/6250rpm 変速機4段リターン(停止時のみロータリー式) 燃料タンク3.7L■タイヤサイズF=70/90-17 R=80/90-17 ●価格:45万1000円 ●色:青、赤、灰 ●発売日:2024年3月28日
ホンダ クロスカブ110
2022年3月に新型の空冷単気筒エンジンと前後キャストホイールを搭載してモデルチェンジ。2023年末にはプコブルーを廃止して新たにマットジーンズブルーメタリックがラインナップされた。スーパーカブ110をベースとしたレトロスタイル+オフロードテイストが可愛いクロスカブ110は、CT125ハンターカブよりもリーズナブルな価格と優しいキャラクターで定番モデルとして愛されている。エンジンは63.1mmのストロークをクラシックウイングシリーズと共通としながら、ボアを50.0→47.0mmへとボアダウンした仕様で、自動遠心クラッチ+4速トランスミッションを採用している。くまモン・バージョンもラインナップ。
主要諸元■全長1935 全幅795 全高1110 軸距1230 シート高784(各mm) 車重107kg(装備)■空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ 109cc 8.0ps/7500rpm 0.90kg-m/5500rpm 変速機4段リターン(停止時のみロータリー式) 燃料タンク容量4.1L■タイヤサイズF=80/90-17 R=80/90-17 ●価格:36万3000円/くまモン=37万4000円 ●色:青、緑、灰/くまモン=黒 ●発売日:2023年12月14日
スーパーカブ110
クロスカブ110と同時にモデルチェンジされ、新型エンジンや前後キャストホイールも同じく採用。2017年のモデルチェンジで丸型LEDヘッドライトを採用しており、令和の時代でもスーパーカブらしいシルエットは変わることなく継承した。キャストホイールはシングルチャンネルABSを採用するためにフロントブレーキをディスク化したことにともない採用、またビジネスユースで要望が多かったチューブレスタイヤに対応するためでもあった。メーターはクロスカブ110と同様に、ギヤポジションインジケーターと時計も表示する。写真は2023年末に追加された新色のフレアオレンジメタリックだ。
主要諸元■全長1860 全幅705 全高1040 軸距1205 シート高738(各mm) 車重101kg(装備)■空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ 109cc 8.0ps/7500rpm 0.90kg-m/5500rpm 変速機4段リターン(停止時のみロータリー式) 燃料タンク容量4.1L■タイヤサイズF=70/90-17 R=80/90-17 ●価格:30万2500円 ●色:橙、青、ベージュ、白、緑 ●発売日:2023年12月14日
スーパーカブ110プロ
2022年春にモデルチェンジされ、スーパーカブ110やクロスカブ110と同様に新型エンジンやディスクブレーキ+前輪ABSを採用。前後輪に14インチキャストホイールを採用しているのがスーパーカブ110らとの違いで、フロントに大型バスケット、リヤに大型キャリアを装備する。荷物を満載してもヘッドライトを邪魔しないよう、バスケットを照らすポジションランプ/前方のヘッドライトを配置するのが特徴だ。メーターはギヤポジションと燃料残量を常時表示し、時計や平均燃費、距離計を切り替え表示できる。バックミラーの締結部は工具を使用せずに位置の調整が可能といった工夫も嬉しい。
主要諸元■全長1860 全幅730 全高1065 軸距1225 シート高740(各mm) 車重111kg(装備)■空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ 109cc 8.0ps/7500rpm 0.90kg-m/5500rpm 変速機4段リターン(停止時のみロータリー式) 燃料タンク容量4.1L■タイヤサイズF=70/10-14 R=80/100-14 ●価格:34万6500円 ●色:青 ●発売日:2022年5月19日
ヤマハ PG-1
前後16インチという、ライバルの17インチ勢よりも小径のホイールに太めのタイヤを履き、自動遠心クラッチの横型エンジン、シンプルなアンダーボーンフレームで車体を構成。前後にフラットなかつ細身な分割シートでオフロードでも扱いやすく、2人乗りも容易になっている。ライバルはハンターカブやクロスカブだろうが、スーパーカブの亜種であるそれらに対し、モーターサイクルを自動遠心クラッチ化したような乗り味が特徴になっている。柔らかいサスペンションも街乗りやオフロードで好印象だ。
バルブ式ヘッドライトや角パイプのスイングアームなど割り切った部分と、ギヤポジションインジケーターやテレスコピック式フロントフォークなどの走りにこだわった装備があり、安価だが乗って楽しいというコンセプトが明快な1台。
主要諸元■全長1980 全幅805 全高1050 軸距1280 シート高795(各mm) 車重107kg(装備)■空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ 113.7cc 8.9ps/7000rpm 0.96kg-m/5500rpm 変速機4段 燃料タンク容量5.1L■タイヤサイズFR=90/100-16 ●価格:── ※諸元はベトナム仕様
POPz 110
2020年までラインナップされていたPOPz 125の後継モデルとして2022年に登場したレトロスタイルの原付二種。アメリカのデルファイ製フューエルインジェクションを採用する空冷横型シリンダーの単気筒エンジンは、新たに排気量を109ccに。始動方法はセル&キック併用で、スーパーカブなどと同じロータリー式の4速ミッションを採用している。最高出力は未発表だが、ボア×ストロークは50×55.5mmとややロングストローク設定だ。
灯火類はフルLEDで、液晶を組み合わせたメーターを採用するなどライバル(もちろんスーパーカブ)にない魅力が与えられている。簡単に取り外せるタンデムシートを標準装備するのも特徴で、リヤのツインショックは2段階に調整することで1人乗り/2人乗りそれぞれに合わせたセッティングにできる。価格は初出時26万円台だった。
主要諸元■全長1880 全幅745 全高1070 軸距未発表(本国では1230) シート高760(各mm) 車重111kg(装備)■空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ 109cc 出力未発表 変速機4段ロータリー 燃料タンク容量4L■タイヤサイズF=2.25-17 R=2.50-17 ●価格:29万7000円 ●色:緑、橙、赤、銀、黒
まとめ
原付二種クラスは、普通二輪免許や大型二輪免許保持者のセカンドバイクとしても、また気軽にバイクライフを楽しめる“これ1台”としても人気のカテゴリー。なかでもAT小型限定普通二輪免許で運転できるカブ系はレジャーや通勤、ツーリングなど幅広く、自動変速機のスクーター系よりも優れた燃費などコスパ面でも長く楽しめる要素が満載だ。高速道路を走れないのは数少ないデメリットだが、それゆえに下道縛りのツーリングなどスパルタンな楽しみ方も提供してくれるだろう。
よくある質問
速度はどこまで出していいの?
法定最高速度で走ってOK。一般的には60km/hだが、一部の70km/h道路ではそれが法定最高速度になる。つまり、自動車専用道路や高速道路を除く一般道ではクルマや大型バイクと同じ速度で走っていいので、交通の流れに安心して乗れる。
ピンクナンバーが嫌なんですが……
原付一種の白ナンバー、原付二種(51~90cc)の黄ナンバーに対し、91~125ccはピンクナンバーになる。黄ナンバーの新車は現在ラインナップがなく、原付二種クラスの新車は自動的にピンクナンバーになるので諦めよう。ただし、一部自治体のご当地ナンバーであれば、同じピンクでもデザインに自然に溶け込んでいるものもある。
燃費ってどのくらい?
スーパーカブ110は実燃費に近いとされるWMTCモード燃費で同67.9km/Lを誇り、信号のないエリアのツーリングでは実測でさらに伸ばすことも難しくない。今回のライバル勢はどれも似た傾向にあり、燃料タンク容量は4L程度でも航続距離は250km以上確保できる。
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