
ホンダが「鞍乗り型車両の姿勢制御装置」の特許を登録していたことがわかった。公開日は6月2日で、ステアリング制御によってバイクの直進安定性をアシストするもののようだ。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ)
4輪の車線維持システムと類似
4輪の技術で『車線内の中央を走るように制御する』というシステムがあるのをご存じだろうか。ホンダで言えば「レーンキープアシストシステム=LKAS」と呼ばれるもので、日本語で言えば車線維持システム。高速道路などで車線内をふらつくクルマを見かけたことがあると思うが、ハンドル操作が雑だったり、変に力が入っていたり、または注意力散漫だったりとさまざまな理由によって、車線内を左右にフラフラと行ったり来たりする現象がある。
ホンダ LKAS(車線維持システム)のイメージ。アクティブセーフティのひとつだ。
LKASは車線逸脱を防ぐという名目で、カメラで捉えた車線を逸脱しないように電動パワーステアリングで操作を支援し、振動による注意喚起や実際のステアリング介入で車線の中央に戻す働きがある。もちろん人間の操作が優先されるので、人力で行きたい方向にステアリングを切ることは可能だし、ウインカーを点ければ介入も止まる。
そんなLKAS、実際に運転したことがある方は実感しているかもしれないが、じつは横風による進路の乱れにも補正が働く。これが意外なほどの効果を発揮するのだ。特に背の高いミニバン系では効果が大きく、体感的には横風で振られる幅が半分以下になる印象だ。
考えてみれば、予想できない外乱の場合、人間だったら認知から反応までに最低でもコンマ数秒はかかってしまうわけだが、電子制御であれば圧倒的に短時間で補正操作を開始できる。LKASがどの程度の反応時間かは公表されていないが、少なくとも人間の反応速度を大きく上回っているのは間違いないだろう。
ライダーの操作か外乱によるものか区別してくれる模様
電子制御を嫌う方の言い分として「そんなものは下手くそだから頼る必要があるんだ」というものがあるが、これは正しい部分もあるが間違っている部分もある。
人間の操縦スキルは、おおざっぱに言って予測と認知、判断、操作から成ると言え、このうち予測は経験によるものが大きく個人差があるものの、まだ人間がコンピュータに勝る部分が多い領域だろう。また、操作も熟練の操縦者であれば電子制御を上回る。
しかし認知~判断に関しては、とっくに機械が人間を追い越していると言わざるを得ない。センシングしている領域にもよるが、それこそ1000分の1秒単位で情報を拾い、演算し、その後にどのような反応をするか判断し、補正操作を開始する。そのリアクションタイムは長くても0.1秒程度だろうが、人間の場合は予測していない現象に出くわしたとき0.5秒程度の空白が生じてしまうのが普通なのだ。
……と、やや脱線しつつLKASについて長々と書いてきたが、これには理由がある。ホンダが特許を登録した「鞍乗り型車両の姿勢制御装置」なるものが、横風への対応について記述しているからだ。
これはバイクのステアリングにアクチュエーターを追加し、意図しない急激なロール(車体の傾き)が発生したときに姿勢を回復させるような制御が働くというもので、そのロール挙動が外乱によるものかライダーの操作によるものかも判別するという。また、LKASと同様に車線中央をキープする機能もあるようだ。
本特許のシステム図。
これにより、たとえば高速道路などで強い横風にさらされたり、大型トラックを追い越しまたは追い越される際にバイク側が風で左右に振られるのを補正してくれるわけだ。
また、本特許は横風への対応が主題だが、システム図にはカメラやレーダー装置、さらにはナビゲーション装置まで含まれているので、システム全体としては4輪のLKASと同様の機能や、さらには自動運転まで含む研究が行われていると推察できる。
じっさいにこうしたものが市販バイクに採用されるのか、採用されるとしてそれがいつになるのかはわからないが、ホンダがさまざまな周辺技術を幅広く研究していることに心強さを感じずにはいられない。
いつか続報を期待してまーす!
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
あなたにおすすめの関連記事
コーナリング中の自動ブレーキでも車体姿勢をキープできる これはライダーなら直感的に「そりゃ実現は難しいよね」と思う代物で、たとえばカーブで車体が傾いているときに自動ブレーキが作動したとしたら挙動が乱れ[…]
オートクラッチ操作とマニュアル操作を自在に切替可能? 2021年6月にお伝えした『クラッチもバイワイヤ! ホンダの新たな特許、指1本で軽々操作できる……だけじゃない?!』という記事を覚えている方はいら[…]
より操作に忠実な過給機付きエンジンを実現する! ホンダがアフリカツインに過給機を搭載?! そんなニュースが現実味を帯びてきたかもしれない。2020年の特許公開時には海外メディアを中心に話題となったが、[…]
2022年8月には新世代GSX-R1000と思われるエンジンの特許情報が公開され…… スズキは国内の公式HPで、リッタースーパースポーツ「GSX-R1000R」および軽二輪スクーター「バーグマン200[…]
動力伝達を切断することなく変速できるシームトランスレスミッション コンマ1秒のラップタイムを競うレースの世界では、昔から無駄のないシフトワークがライダーに必要なスキルとされてきた。できるだけ素早くシフ[…]
最新の関連記事(メカニズム/テクノロジー)
1983年の登場当時、各雑誌媒体向けに紹介されたスズキRG250Γの全部品の分解写真。こうした写真をわざわざ撮影したことからも、同車に賭けたスズキの意気込みが感じられる。 フューエルインジェクション([…]
6段変速ミッション:スズキ T20(1965) 戦前はGPレーサーも4段変速までだったが、戦後の1952年にモトグッツィが5段変速を、1953年にドイツのNSUのレーサーが6段変速を採用した。そして国[…]
そもそもボア×ストロークって? 最近ロングストロークという表現をみる。エンジンのピストン往復が長いタイプのことで、バイクのキャラクターを左右する象徴として使われることが多い。 これはエンジン性能で高い[…]
並列4気筒エンジン:ホンダ ドリームCB750Four(1969年) イタリアのOPRAというメーカーの空冷OHCが並列フォアの始まり。この技術の権利を同じイタリアのジレラが購入して、空冷&水[…]
[A] 前後左右のピッチングの動きを最小限に抑えられるからです たしかに最新のスーパースポーツは、エンジン下から斜め横へサイレンサーが顔を出すスタイルが主流になっていますよネ。 20年ほど前はシートカ[…]
最新の関連記事(ホンダ [HONDA])
その名も「V3R」と「V3R E-COMPRESSOR」だ! ホンダが全く新しい4ストロークV型3気筒エンジンのコンセプトモデルを公開したのは、2024年秋のEICMA(ミラノショー)でのこと。かつて[…]
“PLUS”=HondaGOの有料制会員プログラム HondaGOバイクレンタルやHondaGOバイクギアなど、さまざまなサービスを提供するHondaGO。そのサービスをひとつのアカウントで利用できる[…]
110ccベースの4kW制限モデル=新基準原付 2025年11月の新排出ガス規制導入によって50cc原付・現行モデルの継続生産が困難になり、新たに110~125ccのモデルをベースとした車両に4kW([…]
“エフ”にとらわれず、新世代のCBをゼロベースで追求 YM:まずはCB1000Fコンセプトの狙いどころや、車両のコンセプトを教えて下さい。 坂本:“CB”はレースと共に育ってきたブランドですが、その役[…]
排出ガス規制に合わせつつパワーアップ&各部熟成 ライバルがこぞって生産終了するなか、貴重な直4・400ネイキッドとなっていたCB400スーパーフォア(SF)&スーパーボルドール(SB)。2017年10[…]
人気記事ランキング(全体)
まず車間が変わることを理解しておこう! ツーリングでキャリアのある、上手なライダーの後ろをついてゆくのが上達への近道。ビギナーはひとりだと、カーブでどのくらい減速をすれば良いかなど判断ができない。そう[…]
ヤンマシ勝手に断言。これでレースに出るハズだ!! 「CB1000Fコンセプト モリワキエンジニアリング(以下モリワキCB)」は、見ての通り、ホンダCB1000Fコンセプトをレーサーに仕立てたカスタムモ[…]
ナンバー登録して公道を走れる2スト! 日本では20年以上前に絶滅してしまった公道用2ストローク車。それが令和の今でも新車で買える…と聞けば、ゾワゾワするマニアの方も多いのではないか。その名は「ランゲン[…]
モバイルタイプでも水の勢いは十分。洗車での活躍は間違いなし 今回発売されるケルヒャー「OC 5 Handy CB」は、もっと手軽に、どこでも洗浄したいというユーザーの持ち運びニーズに対応した、ガンタイ[…]
タイホンダ創立60周年を記念したスペシャルエディション 特別仕様車の製作に旺盛なカブハウスは、タイホンダの創立60周年を記念した「New Monkey Chrome Legacy Limited Ed[…]
最新の投稿記事(全体)
15番手からスタートして8位でフィニッシュした小椋藍 モナコでロリス(カピロッシ)と食事をしていたら、小椋藍くんの話題になりました。「彼は本当にすごいライダーだね!」と、ロリスは大絶賛。「ダイジロウ・[…]
筑波サーキット向けにカスタム中 「X350ウィズハーレー編集部号」は、2024年12月現在、サーキット、とくに筑波サーキットでタイムを削るためのカスタムを進めている。過去、全日本選手権に出場し、筑波サ[…]
2.5次元アイドルがアンバサダー!? モーターサイクルショー開催概要 東京モーターサイクルショーの共通するメインテーマは、「いいね、バイク」。大阪のサブテーマには「バイク&ピース」、東京には「バイクっ[…]
グローバル販売を見据えたフラッグシップモデル 新発売となるSRD 5 Proは、Amazonで販売ランキング1位(バイク用Gps 2024年12月4日調べ Amazonランキング)を記録したベストセラ[…]
Q.ツーリングへ出かけるとバイクのすぐ前の路面ばかり見てしまいます。そのため先のほうの様子に気づくのが遅れ、カーブの手前で慌てます。「遠くを見ろ」とよく言われますが、先を見ていると手前の路面が心配にな[…]
- 1
- 2