
バイクショップの片隅で埃をかぶっている旧車が、実は「新車のまま売れ残っている」と聞いて驚いたことがあります。今となっては売れ残りなどとは呼べず、プレミアがついて新車価格よりも高く売れそうですからね。実はそんなケースはちょいちょいあるようで、今回はヤマハの伝説的トレールバイク、XT500の新車がフランスで見つかったというお話です。
●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部)
輝かしい歴史を持つXT500は、なんと2002年まで生産
そもそもXT500は、1976年にヤマハが初めて作った4ストロークのビッグシングル搭載のトレールバイク。2スト全盛ともいえる時期に、空冷4サイクルSOHC単気筒というのはずいぶん新鮮な印象だったはず。499ccの排気量から最高出力:30ps/5800rpm、最大トルク:3.9kgm/5400rpmというパワーも当時としては「物足りない」の声が上がっていたのも致し方ないところ。同社のRD250(1973)など半分の排気量で同じ馬力ですから。
とはいえ、XT500の魅力はなにしろ軽くて(乾燥重量139kg)コンパクト、加えて丈夫で壊れづらいエンジンにあったかと。それが証拠に、第1回パリ・ダカールラリーでは総合でワンツーを決めたり、ケニー・ロバーツがダートトラックレースにXT500でエントリーしたり、古の鈴鹿6耐でXT500のエンジンを使ったロードボンバーが8位入賞するなど輝かしい足跡だらけです。
こうした活躍による人気からか、XT500は2002年まで生産が続きました(ヨーロッパ向け)誕生から26年という長きにわたるモデルライフですが、2000年モデルといえども25年前なので、新車が発見されるのは極めて珍しいことに違いありません。どういう理由でストックされていたのか詳らかにされていませんが、木箱に入った状態で見つかったのはパリのバイクディーラーだったとのこと。
フランスで発見されたXT500は木箱に格納された組み立て前の新車というのがレアなポイント。430万円という予想落札額にも驚きです。
無論、付属品や書類も完璧な状態で保存されており、組み立てればすぐにでも走れる状態だとか。
オークショニアの説明では1986年のヨーロッパ仕様車がフランスで1988年に登録されたとされていますが、この車両のフレーム&エンジンナンバーが「1U6-205846」となると1977年のヨーロッパ仕様とも考えられます。ちょっとしたミステリーですが、写真にある通り、オドメーターは0kmのままという非常に珍しいケースであることは間違いありません。無論、オーナーズマニュアルをはじめとした付属品は完璧に揃っており、組み立てさえすればすぐにでも乗り出せるのだとか。
オークションに出品されたまっさらのXT500は、指し値1万5000~2万5000ユーロ(約260万~430万円)と当然ながらプレミア価格。出品地はXT500マニアが数多く存在するといわれるドイツですから、落札価格はさらに高騰することが予想されます。ちょい古XT500を手に入れて、ビカビカにレストアするコストと手間を考えればなかなか魅力的なオファーかもしれません。
こちらは1980年式のヨーロッパ仕様(4E5)の市販車。完成車のイメージはこんな感じでしょうか。
第1回のパリ・ダカールラリーでは2&4輪総合でワンツーフィニッシュという快挙を成し遂げたXT500。
木箱というよりフレームカーゴですが、天井はこのとおり付属品やマニュアルが格納されています。
左の冊子はSONAUTO発行の保証書で、右はオーナーズマニュアル。2本のキーが揃っているところも嬉しいポイント。
ピカピカのペグを見れば、取り付け前の新品であることがよくわかります。
オドメーターの数字にご注目。さすが走行前の新車らしく、ゼロが並んでいます。
ヤマハ初の空冷4サイクルSOHCビッグシングル。30ps/3.9kgmのパワーで、とにかく丈夫なエンジンだと定評があります。
出品者の説明では1986年モデルとされていますが、フレームに刻まれた1U6は1977年モデルのはず。どういう背景なのか、謎めいていますね。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(ヤマハ [YAMAHA] | 名車/旧車/絶版車)
様々な可能性が試された個性の時代 現代から過去を振り返って見ると、今に連なるメインストリームのマシン達が当然のように歴史を作ってきたように錯覚してしまう。しかし時代の王道を行くマシンの影には、無数の異[…]
浪漫の塊だったレプリカ 年末、あるいは正月にフランスのパリをスタートし、アフリカ大陸を走破してセネガルのダカールを目指す「パリ・ダカールラリー」(2009年からはコースを南米に移して開催)。1978年[…]
ヤマハポッケをレストア中 ヤマハの小さなレジャーバイク「ポッケ」のレストアが進行中です。 元の状態は、まぁ控えめに言って半分“鉄くず状態”。詳しい様子はYouTubeで見ていただくとして、とにかく最初[…]
国産スクーターの復権 スーパーカブのようなビジネスバイクが主流であった50ccクラスに、ホンダが送り出したロードパルは「女性でも手軽に乗れるお買い物バイク」として新たな市場を開拓。これに対抗し、ヤマハ[…]
ホンダNSR50が、12インチの景色を変えた 前後輪12インチの50ccロードスポーツバイクといえば、ホンダ「NSR50」「NSR80」を思い浮かべるバイクファンは多いことでしょう。それというのも、こ[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
ペダルを漕いでエンジン始動! ペダルを漕いでクランクを回し、フライホイールに運動エネルギーを蓄える。十分に勢いがついたところで、その回転(力)を利用してエンジンを始動する。 現代のオートバイしか知らな[…]
50ccで7.2馬力! 6速ミッションを操る快感 「50ccだからといって、走りに妥協はしたくない」。そんな熱い思いを持つライダーたちを、NSR50はたちまち虜にした。 心臓部には、最高出力7.2PS[…]
ドラムブレーキの固着がレベチだった件 古いバイクのレストアってまったく同じものはなくて、それぞれ車体ごとの「テーマ」みたいなものがあるようなのですがこちらのヤマハのポッケは、どうやら「固着」がテーマら[…]
伝説のV3ワークス直系、プライベーターを支えた名車「ホンダ RS500R」の軌跡 1983年に発売されたRS500Rは、ホンダが世界タイトルを獲得したワークスマシン「NS500」の技術を継承して作られ[…]
1986年、異端児の誕生。「融合」の名を持つスクーター ホンダの250ccスクーター「フュージョン」は1986年に登場しました。フュージョンは1970年代後期にかけて流行したジャズとロック、ラテンなど[…]
人気記事ランキング(全体)
技術的チャレンジ精神の結晶 まずは、特徴的なスタイリングこそボーラの目玉。ウェッジシェイプの鋭利なプロポーションでありながら、ステンレス製ルーフの質感や柔らかなリアフェンダーの曲線に、ジウジアーロの気[…]
83馬力へと進化した、完全新設計の2ストロークVツイン まず注目したいのは、なんといっても現代の環境規制に適合しながら公道を走れる完全オリジナルの水冷2ストローク250ccVツインエンジンだ。 ヴィン[…]
立ち乗りも座り乗りも自由自在。免許不要で広がる行動範囲 「近所の買い物や通勤を楽にしたいけれど、ペダルを漕ぐのは疲れるし、バイクの免許は持っていない」。そんな悩みを吹き飛ばしてくれる有力な選択肢が、こ[…]
50ccで7.2馬力! 6速ミッションを操る快感 「50ccだからといって、走りに妥協はしたくない」。そんな熱い思いを持つライダーたちを、NSR50はたちまち虜にした。 心臓部には、最高出力7.2PS[…]
SHOEI最新作『Z-9』に早くも登場するオリジナルグラフィック 『Z-9 BURNSIDE』は、ストライプを基調としたシンプルなグラフィックが特徴だ。フェイスガードから頭頂部を通り、後頭部下端まで抜[…]
最新の投稿記事(全体)
ディテールに妥協なし!全310ピースの緻密な造形美 一見すると「ブロックでどこまで再現できるのか?」と思うかもしれない。しかし、完成写真を見ればその完成度に唸らされるはずだ。 切れ味鋭いフロントマスク[…]
1940年代の伝統と現代技術の結晶「Thunderstroke 116」 近年、世界的な排出ガスや騒音規制の強化により、大排気量の純空冷エンジンは絶滅の危機に瀕している。油冷や水冷機構を部分的に取り入[…]
純正ミラーを活かしながら後方視界をアップデート 純正ミラーのデザインは気に入っているものの、「もう少し後方が見やすければ」と感じたことはないだろうか。デイトナの「ハイビジ貼り付けタイプミラー」は、その[…]
すわカウルが資源になる時代到来か ※今回の内容は神奈川県相模原市を例に取り上げています。お住まいの地域のルールについては、各自治体のHP等をご確認ください。 バイク弄りをしていると、地味に処分に困るの[…]
秋のツーリングに備える「着る疲労回復ウエア」 バイクで長時間同じ姿勢をとり、風圧に耐え続けるツーリングは、思いのほか全身の筋肉を酷使する。特に秋シーズンともなると、日中は暖かくても、夕暮れ時や山間部に[…]
- 1
- 2































