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バイクに乗る習慣がもたらす認知機能と心の健康に与える影響とは?【最終章】

これまでの記事では、一体どの種類の乗り物に乗った時に最も脳が活性化するのか、あるいは走行中のどのようなシチュエーションが最も脳を活性化するのかという結果についてご紹介しました。


●記事提供:MOTO INFO(初出2022年6月28日)

最終章となる今回は、バイク乗車に対してどのような付き合い方をしたら最も脳が活性化するのかを実証実験した長期研究の結果であり、当時の模様を例によって東北大学の川島隆太教授(以下、川島教授)と振り返りました。

まず、本実証実験における調査対象者はバイクを購入してまもない方(バイクに乗りたての方)を調査した方が良いだろうということになり、バイクショップならびに実際バイクを購入された方にご協力いただき、購入直後、1ヶ月後、6ヶ月後で認知機能テストを受けて頂き比較しました。バイクの乗ることを習慣に取り入れた前後を比較するためです。

さらに、バイクの使用頻度や購入したバイクの種類(バイクorスクーター)についても分析しました。

バイクを購入した全国47名を対象に調査

全国でバイクを購入した107名(年齢18~66歳/うち女性18名)のうち、データ欠損がなく取得データに明らかなエラーのなかった47名(年齢21~66歳/うち女性11名)を解析対象としました。なお、47名の中でさらに有効なデータのみ抽出して分析をしています。

※イメージ

それではさっそく受けていただいた認知機能検査とメンタルヘルスアンケートについて見ていきましょう。

認知機能検査

まずは認知するスピードを計るために認知機能検査を行いました。

単純計算課題として、小学校で習う算数レベルの計算問題を1分間にどれだけ解けるかテストしました。このテストは前頭前野機能の中でも情報処理速度を測るテストで(コンピュータに例えるならCPUの速度を反映)、50問ほど用意されました(下は抜粋)。

認知機能検査:単純計算課題

次の認知機能検査は、順番線引課題、前頭前野機能の中でも抑制機能を測るテストで、数字とカタカナを交互に線で結ぶものです。

認知機能検査:順番線引課題

最後に認知機能全般を計るテストとして符合問題です。計算問題同様、前頭前野機能の中でも情報処理速度を測るテストになります。上段のルールに従って、ひたすら1分間に何問解けるかを計るテストです。

認知機能検査:符合問題

この3種類のテストの点数を、購入直後と数ヶ月経過後で比較することで、認知機能に改善が見られたかどうかを測定します。

メンタルヘルスアンケート

さらにもう一つ、心理学で一般的に使われるメンタルヘルスアンケートとして、現在の心身状況を0〜10までで自己評価するテストに答えていただきました。

メンタルヘルスアンケート

これも認知機能テストと同様に、購入直後と数ヶ月経過後での変化を計測しました。

全体傾向としては、計算問題/符合問題にはっきり改善の結果

計算問題/符合問題に改善傾向

全てのデータを取得できた16名(女性3名含む)の平均ですが、1ヶ月後の時点ですでに脳機能に改善の傾向が見られ、6ヶ月後でも維持している様子が見て取れます。

乗車頻度で脳の活性化に差異は見られるのか?

使用頻度の違い

次に、バイク乗車頻度で脳の活性化に違いが見られるのかを調査するため、ユーザー分類してみたところ、改善は1ヶ月後から見られ、週1~2回乗車するユーザーの脳機能に大幅な改善傾向が出ています。

メンタルヘルスアンケートでは、残念ながら有意な変化はありませんでした。

購入車種でも脳の活性化に差異は見られるのか?

上のグラフからも分かるように、スクーターよりもバイクを購入したユーザーの方が、明らかに脳の機能が改善したという結果が出ています。

こちらもメンタルヘルスアンケートにおける大幅な変化はありませんでしたが、バイク利用の方が全体としてはストレスが減少する傾向が見られました。

結論=「バイクを週に1~2回利用すること」が認知機能向上+ストレス改善に役立つ!

バイクを購入して定期的に乗車しているユーザーの認知機能とメンタルヘルスの変化を、長期に渡って計測した結果をまとめると、購入後1ヶ月後、6ヶ月後のそれぞれの時点において認知速度と脳機能全般が改善し、メンタルヘルスも一部の項目で改善が認めらました。

購入後1ヶ月後の調査では、使用頻度「週1~2回利用のユーザー」、購入形態「リターンライダー」、購入機種「マニュアルバイク」のメンタルヘルスが改善する傾向にありました。また、スクーター購入ユーザーとマニュアルバイク購入ユーザーで比較すると、マニュアルバイク購入ユーザーに認知機能向上が強く認められました。

購入6ヶ月後の調査では、「マニュアルバイクを購入されて週1~2回乗られるユーザー」の認知機能に改善・向上の傾向が見られました。

高速道路のサービスエリアで若々しい中高年ライダーの笑顔を見たことでひらめき、始まった本実験。

バイクというと、まだまだネガティブなイメージを持たれる方も多いかもしれませんが、最近はむしろ親にすすめられてバイクに乗る若者も増えていたり、コロナ禍をきっかけにバイクに対する見方も本質的に変わり始めています。

認知機能向上や、ストレス改善にも役立つという科学的裏付けが出ているバイク。乗車に適したライディング装備と無理のない運転を心がけることで、長く楽しめる最高の趣味なのではないでしょうか。

※この実験は、東北大学 加齢医学研究所 川島隆太研究室とヤマハ発動機株式会社との産学共同研究として、2008年5月から開始され2014年6月には公益社団法人・自動車技術会の英文雑誌である「International Journal of Automotive Engineering」によって学術論文として採択されています。


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