11/26、東京・青山のホンダ本社にて、CB1000スーパーフォアの登場から30周年を記念した「プロジェクトBIG-1・30周年記念デザイナーズトークショー」が開催された。当日はBIG-1に関わったデザイナー2名によるトークショーが行われたのだが、その中で非常にショッキングな発言があり…。
●文:ヤングマシン編集部(マツ) ●写真(CB-Fコンセプト):真弓悟史
デザイナー自ら「(CB-Fコンセプトは)出ませんよ!」
本当に、実に残念なニュースだ。2020年の春に公開され、ホンダファンを歓喜させたネオクラシックジャンルの提案モデル「CB-Fコンセプト」。その市販化が断念されていたことがホンダの公式イベントの場で明かされたのだ。
この「CB-Fコンセプト市販化断念」が飛び出したのは、今年で30周年を迎えたプロジェクトBIG-1こと、CB1000/1300シリーズのトークショー。これは初代CB1000SF(SC30)と2代目CB1300シリーズ(SC54)を手掛けた岸敏秋さんと、初代CB1300シリーズ(SC40)を手掛けた伴哲夫さんという2名のデザイナーが、ホンダ本社1階のウエルカムプラザ青山で開発秘話を披露するという主旨だった。
そのトークショー終盤、司会を務めていたモータージャーナリストの丸山浩さんが「ファンとしては“30年間ありがとうございました”ではなく“これからもよろしく”という言葉が聞きたい。それには“これがCBだよ!”って皆が感じるような車両を見せて欲しい」と振られた伴さんが、無念さをにじませつつ次のように語ったのだ。
「2020年に提案したCB-Fコンセプトは、BIG-1同様に我々がボトムアップ提案した、今の40代が考えるカッコよさを追求した車両。あれを手掛けた世代にCBの将来を託し、CB-Fが世に出ることを確認して、僕は会社を去りたいと思っていたのですが…。(CB-Fコンセプトは)出ませんよ!」
発売を熱望していたヤングマシンとしても、この言葉はとてつもなく残念。発表から2年も音沙汰なしだから薄々そうだろうとは思っていたが、登場すればカワサキやスズキとバチバチにやり合って、二輪業界の活性化に大きく貢献してくれただろうと考えると、やっぱり無念というしかない。う〜ん、今からでも何とか再考いただけませんか? ホンダさん。
しかし、ホンダのフラッグシップCBは不滅です!
ただし、開発が中止されたのはあくまでもCB-Fコンセプト。それに代わる“次世代ビッグCB”はホンダ内で胎動を続けている。現状のCB1000Rに代わる“大排気量4気筒CB”の開発が進んでいるとの情報があるのだ(これはモデル概要の情報が得られ次第、続報をお送りしたい)。
加えてこちらは既報ながら、400〜500ccクラスの4気筒車が計画されているとの情報もあるし、さらにCB1300の記念モデルは「ファイナルエディション」ではなく「30周年記念車」。BIG-1もまだ先があるぜ…と、暗に認めているように思うのだ。つまりホンダCBはこれからも、まだまだ色々と話題を提供してくれるに違いない。
ちなみに前述のトークショーで「CBってどんなバイクか?」と問われたデザイナーのお二人は「スポーツバイクの標準器(岸さん)」「直4であること、カッコいいこと(伴さん)」と明快にCB像を語っている。筆者は同じことを初代、2代目BIG−1の開発責任者・原 国隆さんにお尋ねしたことがあるが、その際には「ホンダのど真ん中」と、これも非常に明快な返答を頂いている。近い将来、そんな次世代フラッグシップCBが登場することを願って、最後は岸さんのトークショーでの発言で締めたいと思う。
「CBはこれからも続いていくと思う。それがBIG-1というコンセプトかは分からないが、例えばEVの時代になっても、ホンダのスタンダードなスポーツバイクとして、CBという考え方は永遠に続いていくと思う。それは次世代の若いデザイナーに期待したいし、皆様も想いをホンダに伝えて欲しい。BIG-1の次のジェネレーションにどうぞご期待ください」
…ってやっぱり、次世代のCBはあるんですね、ホンダさん!
【おさらい】2020年発表の「CB-Fコンセプト」とは?
2020年の東京/大阪モーターサイクルショーで発表すべくホンダが開発した、CB1000Rベースのコンセプトモデル(ショーはコロナ禍で中止となり、WEB上で発表されたため、一般に向けて生披露されることはなかった)。‘80年代のホンダを代表する名機として名高い「CB750F/900F」をモチーフとする、いわゆるネオクラシックモデルだ。
ベースはCB1000Rで、バックボーンフレームや片持ちスイングアーム&モノショックなどの車体を踏襲しつつ、エッジの立ったロングタンクやWホーンといったモチーフ車の特徴を再現。2017年にカワサキからZ1をオマージュしたZ900RSが登場し、翌2018年にはスズキからカタナが復活していた時期だけに「Z、カタナと来て次はF!」と、業界が大いに盛り上がったのは記憶に新しい。
このCB-Fコンセプト、国内はともかく、開発コストを賄えるだけの世界的な需要が見込めない…といった中止理由があったと漏れ聞くが、コロナ禍で注目が集まるという逆転現象が起き、Z900RSやGB350、ハンターカブといった旧車イメージの車両が売れまくりという現状の二輪業界を鑑みると、CB-Fも発売されていればもしや…との想いもなくもない。
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