2022年6月下旬に南仏で開催されたイベント「Wheels And Waves(ホイールス・アンド・ウェーブス)」に、海外経験豊富なジャーナリストの河野正士さんが参加した。現地の様々なエキシビションの中から、ユニークなカスタム車両を10台ご紹介。
●文/写真:ヤングマシン編集部(河野正士) ●協力:Wheels And Waves
- 1 風光明媚な地域で開催される、いわばバイクの“フェス”
- 2 Triumph Speed Twin Flat Tracker
- 3 Custom Indian Chief ‘GRIND Machine’ by Tank Machine x Rise Designs
- 4 ERS1000 1987 & 1989
- 5 Boxer Design
- 6 JAB YAMAHA XS650
- 7 APEX MOTO / Triple Snake Power
- 8 HONDA Europe REBLE 1100 custom contest
- 9 Royal Enfield Twins FT
- 10 COLNEM GARAGE /Memento audere semper
- 11 SUZUKI KATANA Cutstom
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風光明媚な地域で開催される、いわばバイクの“フェス”
6月下旬、南フランスの避暑地ビアリッツで開催されたカスタムバイクとサーフィンとライフスタイルがミックスしたイベント「Wheels And Waves(ホイールス・アンド・ウェーブス)」に参加してきました。世界的な感染症拡大の影響で2020年および2021年にはイベントを開催できなかったので、3年ぶりの開催。しかも開催10回のアニバーサリーと言うこともあり、とても盛り上がりました。
イベントは、二輪車および二輪関連のメーカー、時計ブランドやファッションブランド、バイクやファッションのショップ、さらにはレストランやバーのテントが並ぶメイン会場を中心に、アートイベント、公道ドラッグレース、フラットトラックレース、ビンテージモトクロスなど、メイン会場とは異なる会場を使ってさまざまなエキシビションが行われています。
イベントが行われるビアリッツは、日本でも旅行先として人気が高いバスク地方に属し、大西洋に面しているほか、ピレネー山脈も近い。そんな風光明媚な地域にあることから、バイクでツーリングしながら各会場を訪れ、エキシビションを楽しみ、またメイン会場に戻ってきたり、ビアリッツの街中に戻ってきたりして、そこをブラブラしながら、ノンビリとバイクカルチャーを楽しむことができるのです。ネットで『Wheels And Waves』と検索すれば、過去回を含めて、会場を訪れたフォトグラファーやビデオグラファーが撮影した写真や動画を楽しめるはずです。ぜひ検索してみて下さい。
ここでは、その会場で見かけたユニークなバイクたちのなかから、厳選した10台を紹介したいと思います。
Triumph Speed Twin Flat Tracker
メイン会場「Village(ビレッジ)」のトライアンフブースに展示されていたこのマシン。前後17インチに倒立フォークを装着したネイキッドロードスポーツを、前後19インチホイールに正立フォークと三つ叉、それに外装類を変更して、完璧なフラットトラックスタイルを造り上げています。メインフレームを大きく改造しなくても、こんな本格的なフラットトラックスタイルが造れる好例ですね。じつは小さくスリムになった燃料タンクと、トラッカースタイルのシートカウルとの間は少し開き気味なんですが、それを感じさせないまとまり。ラジエーターカバーも、格好良く仕上がっています。
Custom Indian Chief ‘GRIND Machine’ by Tank Machine x Rise Designs
インディアン・モーターサイクルとWheels And Wavesのコラボ企画「インディアン・チーフ・デザイン・コンテスト」。イベント開催の約半年前になる2021年12月に、ヨーロッパをベースにする4人のカスタムビルダーにチーフをベースにしたカスタムバイクのデザインスケッチを依頼。それをもとに、世界中のカスタムバイクシーンを代表する4人の審査員と、ネットを通じた一般投票によるコンテストを開催。そこで優勝したフランスのカスタムファクトリー「タンクマシン」とデザインスタジオの「ライズ・デザイン」が制作した『グラインド・マシン』を実際にカスタムマシンとして制作し、2022年のWheels And Wavesのアートエキシビション「Art Ride(アートライド)」の会場で発表したのです。
スケートボードカルチャーとの融合がテーマとなったこのマシンは、タンク上面やシート周りにスケートボードのデッキをイメージしたカスタムが施されています。ちなみに、4人の審査員の中にワタシも加えていただきました。光栄です。
ERS1000 1987 & 1989
1986年、Joël Guilet(ジョエル・ギレ)によって設計された、ダカール・ラリーのためにマシン「ERS1000」。そのプロトタイプである1987年モデル(赤いフォークブーツを装着/Team L’Ecureuilとして参戦。そのうちの1台はゴール直前まで総合7位を走行中にトラブルでリタイヤ)と、ビークカウルを装着する1989年モデル(Team L’Ecureuilから参戦し総合10位でフィニッシュ)が、バイクとアートを一緒に楽しむエキシビション「Art Ride(アートライド)」に展示されていました。外装を兼ねるカーボンモノコックフレームの先端にフロントフォークを装着。そのフレームパートと、エンジン&ミッション&スイングアーム&後輪という駆動系パートを、ぱっくりとセパレートする革新的な作り。フレームパートの重量は僅か4.5kg、たった5分でフレームパートと駆動系パートを切り離せるそうです。これらの車両はスペインのBMWスペシャリスト、Natxo Barralによる展示でした。
Boxer Design
1980年代半ばに、そのアヴァンギャルドなデザインのコンセプトバイクを発表して話題となったボクサーデザインの車両も、バイクとアートを一緒に楽しむエキシビション「Art Ride(アートライド)」に展示されていました。その存在は、昔に海外のバイク雑誌で見て知っていましたが、実車を見たの初めて。欧州で活躍するドイツ人カスタムビルダーの友人もこの展示の前で長い時間たたずみ、細部をじっくりと眺めていました。彼自身も、実車を見たのは初めてだと言ってました。その特徴は、個性的な外装デザインにありますが、じつは早くからオリジナルデザインのアルミフレームや、BMWが採用したテレレバーのような、独自のフロントサスペンションシステムを採用したシャシーワークにもありました。その創始者でありデザイナーであるThierry Henriette(ティエリー・アンリエット)は現在、新生ブラフシューペリアのデザインを手掛けています。彼が手掛ける最新バイクのデザインを見ると、当時から脈々と受け継がれている、その技術やデザインに対する確固たる信念を感じます。
JAB YAMAHA XS650
フランスの「Atelier JAB(アトリエJAB)」は、木製外装のデザインおよび制作を得意としたユニークなファクトリーです。欧州では一時、シートカウルなど一部のパーツを木製化し、そこにLED化した灯火類を装着するカスタムが流行っていましたが、近年はそれも見なくなっていました。理由は、やはり手間が掛かるから。無垢の木から複雑な形状を削り出すのは大変だし、なによりも重い。誰もが気軽に手が出せる手法ではないのです。しかしJABのオーナーであるジャック・ジュバンは、さまざまな種類の木製素材はもちろん、それにアルミや鉄を接着させる素材と技術をあみ出しています。そこで造り上げた外装類のベース素材を削り出し、樹脂製パーツと変わらない重量で外装パーツを製作することに成功。燃料タンクは木製のアウターシェルにインナータンクという組み合わせなのです。このJABは会場で、いくつかのフルカスタムのオーダーを受注できた模様。しばらくすれば、その新作が見られるかもしれません。
APEX MOTO / Triple Snake Power
スイスとの国境に近いフランス・マルナをベースにするアペックス・モト。バイクの修理やカスタムに加え、ライディングギアやアパレルを取り扱うセレクトショップとして活動しています。その工房で誕生したこのマシンは、ヤマハのスノーモービル用の2ストローク並列3気筒700ccエンジンをベースに制作したもの。シリンダーヘッドカバーが独立しているそのエンジンが、八岐大蛇かキングギドラのように、多頭蛇に見えることからこのモデル名が付けられたそうです。
HONDA Europe REBLE 1100 custom contest
ホンダヨーロッパは、欧州で活動する10のカスタムファクトリーとともに、10台のCMX1100またはCMX500のカスタムバイクを制作。そのオンラインコンテストを開催し、8月中にそのコンテスト結果を発表予定です。そしてメイン会場である「Village(ビレッジ)」のホンダブースには、そのコンテスト出展車両を展示しました。それらはボバースタイルをさらに強調したモノ、フラットトラッカースタイルにカスタムしたモノ、ビンテージスタイルをトッピングしたモノなどなど、じつに多様でした。この車両は、そのなかの1台。イタリアのMann Motocicli Auduci(マン・モトチクリ・アウダッチ)は、昨年のEICMAホンダブースに展示された新型カブのカスタムバイク「Supercub X」も制作したチーム。オリジナルのスプリンガーフォークをセットして、クラシカルな雰囲気をプラスしています。
Royal Enfield Twins FT
ロイヤルエンフィールドのブースに展示されてたこのマシンは、ロイヤルエンフィールド本社がカスタムしたマシン。カスタムというか、フラットトラックレースに参戦するために制作した、いわゆるファクトリーマシンですね。エンジンはING650やコンチネンタルGT650に採用されている、ロイヤルエンフィールド製空冷並列2気筒。それをベースにS&S製のボアアップキットと排気系に変更。合わせてコンピューター周りもアップデートされています。フレームは、現在ロイヤルエンフィールド傘下のハリスパフォーマンスが、このマシンのためにクロモリ鋼管をロウ付け溶接して制作したスペシャル。このマシンは、イギリスのフラットトラック選手権で活躍中ですが、同仕様マシンはアメリカにもあり、昨年はアメリカのフラットトラック選手権AFTのプロダクションツインクラス(市販2気筒エンジンクラス)で、ヤマハやハーレーの水冷エンジン搭載車を相手に1勝をもぎ取るなど、その高いパフォーマンスを示しています。
COLNEM GARAGE /Memento audere semper
フランスのコルネム・ガレージが造り上げた、ホンダ・ダックスをベースにしたカスタムバイク。1960年代や70年代の、深海モノSF小説にインスパイアされ、そこに登場する潜水艦をビジュアル化。カスタムバイクを造り上げたというモノ。外装類はファイバーグラスで制作したもの。剛性を高めるために素材そのものが分厚くなってしまったので、今後はそれを改良していきたいとのこと。メインフレームはホンダ・ダックスのプレスフレームを使用していますが、フロントフォークは独自で設計したガーダーフォークシステムを採用。リア周りはスチール鋼管を利用したリジットタイプとしています。ちゃんと走るのかぁ?なんてことは二の次にして、こういったユニークな発想をカタチにしてしまう、その情熱は本当に素晴らしいと思います。
SUZUKI KATANA Cutstom
ビンテージモトクロスのイベント会場の駐車場で見かけた車両。ワタシはコースサイドでレース撮影をしていたので声を掛けられませんでした。なぜKATANAにこのハンドルを付けたのでしょうか。しかもよく見ると、シリンダーヘッドやオイルクーラーの形状から、油冷エンジン搭載のGSX-R1100がベースと思われます。
写真からも分かるとおり、このオーナーはかなり大柄。その身体でKATANAスタイルのマシンとのマッチングを考えると、このハンドルがベストだったのでしょうか…こんな多様なバイクが見られるのもWheels And Wavesの楽しさなのです。
※本記事は“ヤングマシン”が提供したものであり、文責は提供元に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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