●文:ヤングマシン編集部 ●監修:青木宣篤 ●写真:Red Bull, Suzuki,Petronas SRT
D.ペトルッチ、ダカールラリー・ステージ優勝の快挙!
2輪モータースポーツ界にものすごい”事件”が起きてしまった。’21年までモトGPライダーとして活躍していたダニーロ・ペトルッチが、ダカールラリーでステージ優勝を果たしたのだ。
ペトルッチは’12年からモトGPライダーになり、10シーズンで表彰台に通算10回立ち、優勝を2回挙げているイタリア人だ。長くドゥカティを走らせていたが、’21年にKTMに移籍。1年契約を更新できず、モトGPを去ることになってしまった。
「モトGPのシートを失ったら、ダカールラリーに出たいんだ」と以前から語っていたペトルッチは、その希望を叶え、KTMからダカールに参戦。ステージ5で見事にステージ優勝を決めた。
モトGPを去った直後のライダーが、ラリーレイドに参戦して優勝するとは、異色中の異色。特にダカールラリーは苛酷な砂漠を進むため、ナビゲーション技術やトラブルからのリカバリー術などが必要で、経験が重視される。
そんな難しいラリーレイドでのステージ優勝には、2輪モータースポーツ界も拍手喝采。多くのライダーたちが祝福のメッセージを寄せ、ペトルッチ自身もインタビュー中に感極まって涙…。
ペトルッチは幼少期からモトクロスに親しみ、モトGPライダーになってからもトレーニングでオフロードを走っていた。
オフロードライディングの下地があったからこそ成し遂げられた快挙。欧州を中心に人気のラリーレイドだけに、新たな”モトGP後”の道が切り拓かれた予感!
オフロードでトレーニングするモトGPライダー:滑らせてからが勝負
ペトルッチのダカールラリーステージ優勝は、なかなか象徴的な出来事だ。モトGPシーズンを終えたばかりで、十分な準備期間もない状況ながら初ラリーレイド参戦で結果を出せたのは、常日頃からオフロードライディングに親しんでいたからこそ。今のモトGPライダーたちの”生態”が浮き上がってくる。
モトGPライダーたちは、かなり積極的にオフロードライディングをトレーニングに採り入れているのだ。ケガのリスクはあっても、かなりガンガン走っている。
大きな要因は、モトGPが4スト化して以降、マシンを滑らせて走るのが当たり前になったことだ。彼らがオフロードでトレーニングしているのは、「滑ったらどう対応するか」というような消極的な話じゃない。「滑らせてから、さらにどうすれば速く走れるか」という、かなり攻めの姿勢だ。
ちなみに2スト時代は、基本的に滑らせてはいけなかった。だから滑るのが前提のオフロードライディングはオンロードとはうまくリンクしなかった。
でも今は、オンロードとオフロードが密接にリンクしている。特にタイヤがワンメイクになってからは、タイヤ性能の枠内で走っているだけでは話にならない。タイヤの限界を超えてからが勝負。ということは、「まずは滑るところまで行け。話はそこからだ」というわけだ。
これ、めちゃくちゃレベルが高い。2スト時代に比べると、ちょっと考えられないほどの話だ。モト3、モト2も4ストエンジン/ワンメイクタイヤという点では同じ。いやはや、今の若いライダーたちは本当にものすごい次元でライディングしている…。
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