川崎重工とヤマハ発動機は、2輪車における水素エンジンの活用について、共同研究の可能性を検討することで合意した。同内容についてはスズキやホンダからも合意を得られているとしており、日本の2輪メーカー4社が手を組み、カーボンニュートラル時代に内燃機関の生き残りを賭けて、水素エンジンの技術を共同開発するという衝撃の展開になりそうだ。
●文: ヤングマシン編集部(マツ)
大型スポーツバイクは今後も内燃機関?
この発表は、11月13日に開催された4輪レース・スーパー耐久(岡山ラウンド)の記者会見にて発表されたもの。4輪では水素エンジンカローラを走らせるトヨタ自動車が中心となり、マツダやスバルもカーボンニュートラル燃料を使ったレース車両でスーパー耐久に参戦することを発表。加えて以前よりトヨタと共に水素プロジェクトを推進している川崎重工から、新たにヤマハとのタッグが発表された。
ヤマハの日髙祥博社長は、「弊社は社名に“発動機”が入るように、エンジンへの思い入れが非常に強い。企業として2050年のカーボンニュートラルに取り組むのは当然だが、それを内燃機で実現できるのが水素エンジンだ」と述べ、2輪はスペースの問題などで4輪以上に実現のハードルは高いが、いままで一緒にものづくりをしてきた協力会社とともに、内燃機関を存続させる方向を探っていきたいとした。
同じく会見に参加した川崎重工の橋本康彦社長は「内燃機関は日本の技術力の結晶。水素を通じて残していく方策を探りたい」とし、水素タンクの技術など、川崎重工が持つ技術を共有していくことを表明した。
この会見の後には、ヤマハの日髙社長、カワサキモータースの伊藤浩社長、さらにスズキの二輪事業本部長・伊藤正義氏という3人による2輪メディア向けラウンドテーブルも開催。ホンダ関係者の出席はなかったものの、あらためて日本の2輪メーカー4社が水素エンジン活用技術の共同開発で合意していることが発表された。
この4社協業の動きは今年9月からスタートしたもので、具体的な協業内容やスケジュールはこれから検討されるという段階ではあるものの、燃料タンクや水素配管、吸気デバイスといったエンジン周辺機器をサプライヤーも含めた4社が共同研究し、エンジン本体はこれまで同様に競争領域とする方向が濃厚だ。
コミューター領域では電動化を推進している国内の2輪メーカーだが、その首脳陣が集まり“大型スポーツバイクは内燃機関ありきの乗り物!”という意思を改めて示したともいえる今回の発表は、近年の急速な電動化に困惑していたエンジン大好きライダーにとって、なんとも喜ばしいニュースであることは間違いない。今後どのような協業が行われるのか、我々も注目していきたい。
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