今も絶大な人気を誇る‘80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末永く楽しんでいくには何に注意し、どんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる本連載、今回は’80〜’90年代の2スト全盛時代を象徴する名車・ホンダNSR250R[MC18]を紹介。本記事ではきちんとメンテナンスしておきたいウィークポイントについて解説する。
●文:中村友彦 ●写真:富樫秀明/YM ARCHIVES ●外部リンク:モトールエンジニア
耐久性抜群でも経年劣化は確実に起こる
現役時代は峠道とサーキットが主戦場…と言われていたNSR。となれば中古車では、転倒による車体各部の損傷や、エンジンを回し過ぎた末の焼きつきなどが問題になるのかと思いきや、藤田氏が近年もっとも気にしているのは経年劣化と長期放置だと言う。
「もちろん中には、峠道やサーキットで酷使された個体もありますよ。でもNSRはとにかく造りが丈夫で、フレームに問題が生じている車両はほとんどないし、足まわりはオーバーホルで性能が回復できます。世間で2ストの弱点と呼ばれているエンジンの焼きつきは、通常の使い方ならまず起こりません。でもゴムパーツや電装系は、どうしたって劣化しますからね。また、放置期間が長かった車両は、エンジン内のスチール製部品にサビが発生していることが多いし、定期的な交換を怠って劣化した冷却水は、エンジンと接する部分に腐食を発生させることがあります」
なおモトールエンジニアでは、エンジンから車体、電装系に至るまで、NSRに関するあらゆる作業を受け付けているものの、外装部品の補修や交換を行うことはめったにないそうだ。
「そこまでやっている余裕がないという理由もありますが、外装は私が作業するにはハードルが高いんですよ。まず損傷した純正の完璧な補修は難しいし、欠品になった純正の代替品としてオススメできるアフターマーケットパーツも現状では見当たりません。だから外装部品に関して、私のほうから提案することは少ないんです」
クランクシャフト/センターシール:分解+消耗部品交換で本来の資質が取り戻せる
シリンダー:よほどの損傷がない限り再メッキで性能が回復
コネクティングロッド:長期放置時のサビがダメージを及ぼす
キャブレター:真鍮製ニードルはアルミ製に交換
RCバルブコントローラー/PGM:サブコンの性能維持で安定した作動を実現
トランスミッション:上質なオイルが各部の磨耗を抑制
オイル:信頼と実績のホンダ純正GR2
インテークマニホールド:バンドの締め過ぎに要注意
RCバルブ:カーボンが徐々に堆積
チャンバー:高性能で高品質なドッグファイト
冷却水関連:劣化した冷却水が金属を腐食させる
レギュレーター/レクチファイヤー:独自のキットを設定
スパークプラグ:安易なキャブクリーナーの使用は厳禁
マウントラバー:劣化で振動が増加
リヤショック:社外品ではFGを推奨
フロントブレーキ:ディスクとパッドは社外品で対応
タイヤ:2種のダンロップが定番
パーツ流通:高年式車用部品とリプロ品が不可欠
ガスケット/シール類/ベアリングといった消耗部品は入手できるが、MC18用の純正部品はほぼ壊滅状態。とはいえ、MC21/28用パーツの流用やアフターマーケットのリプロ品を視野に入れれば、本来の資質を取り戻すことは可能だ。
「ただし、MC18を取り巻く状況は年を経るごとに悪くなっています。だから実際にこのバイクのオーナーになったら、今後の維持を考えて、自分である程度の部品を確保するという意識を持ったほうがいいでしょうね」(藤田氏)
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