’80s国産名車・ホンダNSR 250R [MC18]完調メンテナンス【ウィークポイントは経年劣化】

’80s国産名車・ホンダNSR 250R [MC18]完調メンテナンス

今も絶大な人気を誇る‘80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末永く楽しんでいくには何に注意し、どんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる本連載、今回は’80〜’90年代の2スト全盛時代を象徴する名車・ホンダNSR250R[MC18]を紹介。本記事ではきちんとメンテナンスしておきたいウィークポイントについて解説する。

●文:中村友彦 ●写真:富樫秀明/YM ARCHIVES ●外部リンク:モトールエンジニア

モトールエンジニア
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【取材協力:モトールエンジニア】来年で創立15周年を迎えるモトールエンジニアは、全国のNSRユーザーから絶大な支持を集めているメンテナンスショップ。創設当初は他機種も幅広く取り扱っていたが、代表を務める藤田氏の技術力が知れ渡るとともに、2ストを敬遠するショップが増えたため、近年では入庫車のほとんどがNSRになっている。●住所:神奈川県藤沢市遠藤2494-1 ●電話:0466-21-7881

耐久性抜群でも経年劣化は確実に起こる

現役時代は峠道とサーキットが主戦場…と言われていたNSR。となれば中古車では、転倒による車体各部の損傷や、エンジンを回し過ぎた末の焼きつきなどが問題になるのかと思いきや、藤田氏が近年もっとも気にしているのは経年劣化と長期放置だと言う。

「もちろん中には、峠道やサーキットで酷使された個体もありますよ。でもNSRはとにかく造りが丈夫で、フレームに問題が生じている車両はほとんどないし、足まわりはオーバーホルで性能が回復できます。世間で2ストの弱点と呼ばれているエンジンの焼きつきは、通常の使い方ならまず起こりません。でもゴムパーツや電装系は、どうしたって劣化しますからね。また、放置期間が長かった車両は、エンジン内のスチール製部品にサビが発生していることが多いし、定期的な交換を怠って劣化した冷却水は、エンジンと接する部分に腐食を発生させることがあります」

なおモトールエンジニアでは、エンジンから車体、電装系に至るまで、NSRに関するあらゆる作業を受け付けているものの、外装部品の補修や交換を行うことはめったにないそうだ。

「そこまでやっている余裕がないという理由もありますが、外装は私が作業するにはハードルが高いんですよ。まず損傷した純正の完璧な補修は難しいし、欠品になった純正の代替品としてオススメできるアフターマーケットパーツも現状では見当たりません。だから外装部品に関して、私のほうから提案することは少ないんです」

HONDA NSR250R

※写真は’88年のMC18前期 [写真タップで拡大]

クランクシャフト/センターシール:分解+消耗部品交換で本来の資質が取り戻せる

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【MC21/28は新品への交換を推奨】NSRのクランクは大別すると5種が存在する。いずれの仕様もOHは可能だが、MC21/28の場合、モトールエンジニアでは新品への交換を推奨している。なお同店と協力関係にある井上ボーリングのクランクOH+芯出しの費用は、工賃:4万7520円+部品代:3万8500円。

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【別体式シールでも抜けは発生する】’88年型のクランク中央部。ゴム部品である以上、’88年型以前でも抜けは発生する。なおセンターシールが注目を集めがちなNSRのクランクだが、サイドシール/ボールベアリング/コンロッド大端のニードルベアリング/スラストワッシャーなども消耗部品で、オーバーホール時にはすべて交換。

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【年式で異なるセンターシールの耐久性】クランクケース内を2つの部屋に分離するセンターシールの抜けは、NSR250Rの数少ない弱点と言われている。ただし抜けが生じやすいのは、シールとベアリングが一体式になった’89年型以降(右)で、別体式の’88年型以前(左)はそう簡単に抜けが発生するわけではないようだ。

シリンダー:よほどの損傷がない限り再メッキで性能が回復

HONDA NSR250R
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’89年型以前のシリンダーは六角形だが、丸型の’90年型以降と互換性がある。抜群の耐久性を誇る内壁のメッキは、扱い方によっては焼きつきや剥がれが発生。左は井上ボーリングによる再メッキ後で、柱の上の逃がしを忠実に再現している。 [写真タップで拡大]

コネクティングロッド:長期放置時のサビがダメージを及ぼす

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大端部の変形や磨耗と同等以上に、コンロッドで起こりやすいトラブルは、長期放置によるサビ。それが粉になってエンジン内を回れば、シリンダー/ピストンや各部のオイルシールなどにダメージが発生する。

キャブレター:真鍮製ニードルはアルミ製に交換

HONDA NSR250R
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ボディやバルブの新品は入手できないものの、ケーヒンTA20/21キャブレターはオーバーホールで本来の性能が取り戻せる。真鍮製のMC18用ジェットニードルは、段付き磨耗が発生しやすいため、対策品のアルミ製に交換したい。 [写真タップで拡大]

RCバルブコントローラー/PGM:サブコンの性能維持で安定した作動を実現

HONDA NSR250R
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’89年型以降と比べると、’88年型のPGM-CDI(左)は丈夫。ただし、RCバルブコントロールサブユニット(上写真の左。他2つはメインコントロールユニットとモーター)はトラブルが多いため、モトールエンジニアはリプロ品(3万4980円)を準備。 [写真タップで拡大]

トランスミッション:上質なオイルが各部の磨耗を抑制

HONDA NSR250R
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ミッション関連部品は非常に丈夫だが、オイルの品質によってはシフトフォークにダメージが発生。カウンターシャフトとドライブスプロケットの接面のガタはグリスの塗布で防げる。 [写真タップで拡大]

オイル:信頼と実績のホンダ純正GR2

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2ストオイルはホンダ純正GR2を推奨。ミッションオイルはモチュール300Vやワコーズ4CT/プロステージが定番で、乾式クラッチ車ではそれらに加えてワコーズWR7590Gが選択肢になる。

インテークマニホールド:バンドの締め過ぎに要注意

HONDA NSR250R
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インテークマニホールドでよくあるトラブルは、経年変化とバンドの締め過ぎを原因とするヒビ割れ。裏面に整流板が備わるMC18用(右)はすでに欠品だが、MC21/28用(左)の流用で対処できる。 [写真タップで拡大]

RCバルブ:カーボンが徐々に堆積

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状況に応じて排気ポートの高さを変更するRCバルブは、高回転域をほとんど使わず、低中回転域ばかりを常用しているとカーボンが溜まりやすい。もちろん堆積したカーボンは清掃で落とすことが可能。

チャンバー:高性能で高品質なドッグファイト

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チャンバーはドッグファイトレーシングが一番人気。全域でノーマルを凌駕するパワーが得られることに加えて、耐久性の高さや安定した供給状況など、同社の製品には数多くの魅力があると言う。

冷却水関連:劣化した冷却水が金属を腐食させる

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水まわりのトラブルと言うと、筆頭に挙がるのはホースとパイプの劣化だが、使用限度を超えたクーラント(理想を言えば2〜3年ごとに交換したい)が、エンジンに及ぼす腐食も深刻な問題。

レギュレーター/レクチファイヤー:独自のキットを設定

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レギュレーター/レクチファイヤーの仕事は、オルタネーターが発電した電気を変換/制圧すること。MC18用はすでに欠品だが、モトールエンジニアではMC21/28用をベースとするキットを設定。価格は1万7490円。

スパークプラグ:安易なキャブクリーナーの使用は厳禁

HONDA NSR250R
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吸気口に備わるリードバルブ(写真の製品は角が欠けている)も、補修時はMC21/28用を使うことが多い。キャブクリーナーを直接噴射すると、ゴム製ベースが変質/損傷することがある。 [写真タップで拡大]

マウントラバー:劣化で振動が増加

HONDA NSR250R
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MC18以降のNSRは、3点のエンジンマウント部にラバーを使用(右)。この部品の劣化は振動の増加につながる。左はMC18用燃料タンクマウントラバーの代替品で、価格は1540円。 [写真タップで拡大]

リヤショック:社外品ではFGを推奨

HONDA NSR250R
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リヤショックは純正のオーバーホールを行うことが多いものの、上質な走りを目指すライダーには、セイクレッドグランドが輸入販売を手がけるイタリアのFG(下)を推奨。仕様はセミオーダー式で、15万8000円。 [写真タップで拡大]

フロントブレーキ:ディスクとパッドは社外品で対応

HONDA NSR250R
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ブレーキマスター/キャリパーについては、モトールエンジニアではノーマルをオーバーホールすることが多いが、純正が欠品になったディスク/パッドに関しては、アフターマーケット製のサンスター/RKを推奨している。 [写真タップで拡大]

タイヤ:2種のダンロップが定番

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前後17インチのMC21/28と比較すると、17/18インチのMC18はタイヤの選択肢が少なめ。モトールエンジニアの定番品はダンロップで、スポーツ派にはα-14(写真)、街乗り&ツーリング派にはGPR-300をオススメ。

パーツ流通:高年式車用部品とリプロ品が不可欠

ガスケット/シール類/ベアリングといった消耗部品は入手できるが、MC18用の純正部品はほぼ壊滅状態。とはいえ、MC21/28用パーツの流用やアフターマーケットのリプロ品を視野に入れれば、本来の資質を取り戻すことは可能だ。

「ただし、MC18を取り巻く状況は年を経るごとに悪くなっています。だから実際にこのバイクのオーナーになったら、今後の維持を考えて、自分である程度の部品を確保するという意識を持ったほうがいいでしょうね」(藤田氏)

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【純正に現代の技術を注入】ピストン+リング+ピンはMC21/28用が流用可能。モトールエンジニアでは強度の向上と摺動抵抗の低減を実現する、WPC+ハイパーMS処理済みの製品を3万7400円で販売。

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【MC16用はリプロ品を準備】’89年型以降のPGMは修理を受け付けるモトールエンジニアだが、’86~’87年型MC16用CDIはリプロ品を準備。2個セットで4万6090円。なお’88年型のPGMはめったに壊れないそうだ。

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【長年の使用によるガタを解消】純正が欠品になったチェンジアーム/シフトロッドに関して、モトールエンジニアでは独自の代替品を設定している。価格は8140/2640円。MC21/28用は9130/3300円。

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【純正ブランクから出荷時を再現】中古車は汎用品に変わっていることが多いキーは、ブランク品を準備して、キーナンバーデータに合わせた加工を行う。価格は2750円で、同形状で複数を注文する場合は+2200円。


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