世界初:電子制御キャブ+マグホイールetc.
時代を切り拓いた革新のエポックマシン:ホンダNSR250R/SP【不動”最強”の座】
- 2020/5/7
●文:沼尾宏明、中村友彦
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’88 NSR250R/SP〈世界初・電子制御キャブレター+マグホイール〉飛躍的に性能アップ、「最強」の座が不動に
大ヒットした本格レプリカ・ヤマハTZR250の対抗馬として’86年10月、ホンダがNSR250R(MC16)を送り込んだ。その走りは衝撃的で、まさにレーサーRS250Rにそのまま保安部品を装着したような仕上がり。性能でライバルを圧倒し、爆発的なセールスを記録した。
しかしホンダは追撃を緩めない。’88年1月に早くもフルチェンジしたMC18を投入。強烈だった初期型を上回る「レプリカ決定版」として、NSRの座は不動のものとなった。
90度Vツインは各部を改良しつつ、世界初のコンピュータ制御によるPGMキャブレターを投入。空燃費の最適化によって全域パワーを実現し、歴代最強と呼ばれる性能を獲得した。さらに同年3月、市販車初のマグネシウムホイールを与えたSPを発売。WGP王者が駆ったロスマンズカラーもまとい、大評判を呼んだ。

【’88 HONDA NSR250R/SP】排気デバイスのRCバルブがIIに進化し、最大トルクは0.2kg-mアップ。5角断面フレームや大径φ41mmフォークも導入した。初代からより先鋭化し、歴代最強の呼び声も高い。■車重126kg(乾) 水冷2ストV型2気筒ケースリードバルブ 249cc 45ps 3.8kg-m ■当時価格:66万円 ※SP [写真タップで拡大]

エンジン回転数とアクセル開度を検知し、ソレノイドバルブでエアジェットを電子制御するPGM(Programmed)キャブレター。理想的な空燃費を維持し、低中速域でもスムーズなレスポンスを実現する。さらに点火系もコンピュータ制御となった。 [写真タップで拡大]

’88で初のSPを追加し、前後でSTDから約1.5kg軽量化したマグホイール(MAGTEK)を採用。レーサーの砂型鋳造に対し、金型鋳造とした。’89SPから乾式クラッチも標準に。 [写真タップで拡大]
’90 NSR250R:最大の宿敵ガンマに対抗してガルアーム採用
VJ22Aガンマが発売されたのは’90年1月30日。同年2月13日にリリースされた3世代目NSRのMC21もまた湾曲アーム(ホンダの呼称は「ガルアーム」)を新たに備えた。さらにMC21は、動的な剛性バランスに着目したのもトピックだ。先代までは高剛性を徹底追求してきたが、発想を転換。適度に横方向の剛性を抜くことで、自由度の高いハンドリングを手に入れた。90度VツインはMC18を踏襲しつつ、電子制御を高度化。吸排気系も刷新され、柔軟な出力特性を達成している。そのバランスの高さは歴代随一との評価も高い。

MC18(左)とMC21(右)。先代のMC18と比較すると、メインフレームやリヤアームの幅は薄く、旋回時に適度にねじれる剛性バランスとした。一方でフレーム全体の幅は広く取り、ブレーキング時に必要な縦剛性はキープ。さらにピボット周辺を大型化するなど、絶妙な操縦感を実現した。 [写真タップで拡大]
’94 NSR250R〈世界初・カードキーシステム〉マッピングまでも変更可能
片持ち式プロアームや洗練度を増した電子制御ユニットのPGM-IV、ボディを一新したTBキャブレターなど、4代目NSR250RとなったMC28は数々の新技術を導入。とはいえ、最も注目を集めたのは世界初のカードキーシステムだ。この機構は、単に既存のイグニッションキーをカードに変更しただけではなく、点火時期/RCバルブ/キャブレターのソレノイドバルブを調整するチューニングパーツとして使用することが前提で、ホンダのレース部門であるHRCは状況に応じたマップを入力した3種類のカードを設定。残念ながら実現はしなかったが、当時の同社はPCとカードリーダーを用いて任意でデータが設定できる書き換えシステムも検討していた。

カードキーシステムはマクセルとの共同開発。左上に収まるキーはタンクキャップとヘルメットホルダー用で、ハンドルロックは電磁式。フルパワー化を実現するHRCカードを装着すると、灯火類は機能を停止する。 [写真タップで拡大]

レーシングマシンならではのディティールを徹底追及した結果、アナログ式スピードメーターはコクピットから排除。HRCカード装着時のデジタルモニターには、速度に替わって水温が表示される。 [写真タップで拡大]

【NSRもプロアーム化】ワークスNSRと市販レーサーRSの機構を踏襲する形で、4代目NSRはプロアームを導入。ただし、レーサーのアームが右側だったのに対して、4代目のアームはVFRシリーズと同じ左側に配置。 [写真タップで拡大]
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