バイク通勤の人気が高まる一方で、2輪車による死亡事故が増加している。その致命傷部位で3割を占めるのが胸部の損傷だ。つまり万一の事故に遭遇した場合、胸部を護っていれば助かる確率が大きく上がる。備えあれば憂いなし、胸部プロテクターの効用とは?
●まとめ:沼尾宏明
安全なバイクライフを送るために必須のアイテム
クルマとは異なり、バイクは生身をさらし、風を感じて走る。これは大きな魅力だが、引き換えにリスクも高い。万一の事故が起きた際、生命に関わる重大事故に至るケースがままある。
下のグラフは、二輪死亡事故の致命傷部位を示したグラフ。致命傷となるのは頭部が35.7%で最も多く、胸部が32.1%、さらに腹部が21.4%と続く。意外にも胸部のダメージが原因で亡くなる人が10人に3人いることになり、胸部と腹部の合計では頭部より致死率が高い。特に心臓や肺の損傷は重大な生命危機に直結するが、これを防ぎ、被害を最小限に抑えるのが胸部プロテクターの役割だ。
胸部プロテクターはヘルメットと異なり、装着の義務はない。したがって必須となる製品規格も存在しないが、現在国内の主要2輪ウエアメーカーでは、EUの指定製品基準=CEで定められた2輪車用プロテクター規格「EN1621-3」を採用することが多い。
これは胸部プロテクターを対象とした規格で、肩/肘/膝/臀部の「EN1621-1」、背中の「EN1621-2」、エアバッグの「EN1621-4」といった規格も存在する。この規格をパスした製品を選べば安心だろう。
さらに胸部のCE規格には、レベル1および2のグレードがある。レベル2はレベル1の基準に加え、面剛性性能(衝撃や変形を”点から面”に変換し分散させられるか)までも追求。より防護性能が高い。
タイプに関しては、”アウタージャケットに装着する”もの(詳細は後述)と、”ジャケットの下に着る”方式がある。前者はプロテクター対応ウエアが必要だが、後者ならウエアを問わず、胸部を保護できるのがメリット。ベルトで留めるタイプや、インナーウエアと一体型の製品が選べる。
一般のウエアと比べ、装着感の違いや着脱の手間はあれど、何より大事な生命を護れる胸部プロテクター。バイクを乗る上でもはや必須のギアだ。
選び方1:CE規格相当品が安全&安心
欧州安全規格の「CE」は、購入の際の目安になる。胸部プロテクターのCE規格「EN1621-3」では、[1]乗員への保護面積/[2]人間工学への適応/[3]衝撃吸収性能/[4]面剛性性能/[5]加湿条件での性能の5項目を審査。[4]以外をパスした「レベル1」と、全項目を満たした「レベル2」がある。さらに国内では、市販マフラーの認証でおなじみのJMCA(全国二輪車用品連合会)が、CE規格に合致した製品の推奨制度を実施中だ。なお国内販売のみの製品の中には、CE規格未取得でも同等の安全性を持つものもある。
選び方2:ベルト型とインナー一体型がある
プロテクターを装着できるジャケットを持っていない場合、対応ジャケットを買うか、身体に装着するプロテクターを買う必要がある。後者は、ベルト型のほかベストなどのインナーウェア一体型が販売されている。ベルト型は価格がリーズナブルで、簡単に着脱可能。インナー一体型は、背中や肩など、胸以外にもプロテクターが装着されている製品が多く、広範囲を保護できるのがメリットだ。
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