スズキはYOUTUBEのグローバルチャンネルで、なんと新型ハヤブサに関する動画を一挙に8つも公開。そのうち6つは技術解説的なもので、ひとつはプロモーションビデオだった。そしてもうひとつは、開発者や鈴木俊宏社長のインタビューだ。そこで語られたのは数々のプロトタイプを経てたどり着いた回答だった。
大空を舞う隼のように 普段は鷹揚に大空を滑空するかのように、そしてイザとなれば獲物を狙う超スピードは生物界最速の猛禽類が隼だ。その生態をマシンコンセプトになぞらえ、1998年に登場したのが初代GSX1[…]
冒頭は鈴木俊宏社長からのメッセージから
「設計者、開発者が次の開発をどうやろうか悩みに悩んで、出てきた回答がこれだよねと。開発途中の車ということでどうかなと思ったけど、非常に乗りやすいバイクに仕上がっていると思いますね。
180km/hちょっと出てね、普段使わない領域でも安定しているということは、ああやっぱり変わってるよな、良くなったなということで、本当にお客様が満足するバイクになったんじゃないかなと思います。
本当にデザイナーは悩むんだよね。初代がヒットしただけに、次をどうしていったらいいかと。キープコンセプトという中でどういうふうに変化をつけていったらいいかと非常に悩む中で、やはり正常進化しているなっていうようなフォルムになっているんじゃなかな。
初代、2代目、そしてこのモデルと3台を持ちたいというお客様も出てくるんじゃないのかなと。それぐらい進化させて、あるいはそれぞれのモデルでそれぞれの特徴を持っていると思います。
最高のものが誕生しなんじゃないかなと思います。
ぜひ買ってください!」
新たな伝説をつくる! ……試作車から白紙に戻したことも
スズキのグローバルチャンネルが公開した、ハヤブサのエンジニアに対するインタビュー映像。以下は設計者や開発者が代わるがわるに述べていったコメントを抜粋したものだ。その中には、インタビューでここまで話してしまうのか、といった内容もある。驚くべきことに、6気筒やターボなど、噂されていた設計や試作が本当に存在していたことにも言及された。
「実はこの10年間、さまざまな新型ハヤブサの検討を行っており、試作車まで造って白紙に戻したこともありました。それらの中にはフレームが変更されていたりとか、エンジンの排気量が変わっていたりとか、エンジンの気筒数まで変わっていたこともあります。そういった数えきれないトライ&エラーを繰り返しながら完成度を高めていき、ついに新型ハヤブサを発表する時が来ました。
この新しいハヤブサは、今スズキが持てる最高の技術とパッションを盛り込んで作られた、スズキのスピリットを表している最高傑作だと考えています。
性能だけでなく品質や耐久性も含めて、本当に作り上げました。自分もいつかは手に入れたい1台です」
さっそく“エンジンの気筒数まで変わっていたことも”と語られている。スズキの多気筒エンジンといえば、“ここ10年”という時期にはかみ合わないが、2005年の東京モーターショーに出展されたコンセプトモデルの「ストラトスフィア」を記憶している読者もいるかもしれない。いや、スズキファンならご記憶の方のほうが多いだろうか……。
さらにエンジニアたちのコメントは続く。
「今回このエンジンの仕様にたどり着くまでに何仕様もエンジンを考えて、排気量だとか過給機をビューンを回すようなやつだとか、実際に作ったりしました。まあターボだったり排気量アップしたモデルだったり6気筒だったりというハヤブサを作ってもらって、たくさんのモデルが出来ては消え、という形でここ10年。やっぱり味的には現行のこのエンジンに勝てるものがなかった。やっぱりなんだかんだいって元のパッケージ。そこが一番バランスが取れていて良いというふうに僕らは判断したということです。
基本レイアウトを変えないということがアイデンティティなんじゃないか。その素性のよさを生かして20年後に最新の設計をする。このエンジンに勝てるエンジンを、このエンジンで作るんだと。今回それが設計の狙い、ポイントです」
「これとは全く違う構成のフレームを採用したものもありました。ハヤブサは2輪の世界ではスーパーカーだと思っていますし、フレームに対しても4輪のスーパーカーにも使われているような材料を継続して採用することができているので、これがベストだと思えるものを作ることができました」
エンジンや車体のほかにも、デザインや空力、車体などについて興味深いコメントが続いていく。
いずれにせよ、6気筒エンジンやターボモデルまでも候補に挙がってきたなか、それでも従来型をベースとしたところにスズキの矜持と、ハヤブサに対する思い入れと信頼を感じずにはいられない。
エンジンは全ての部品を見直し、同じに見えるものでも加工の仕方を変えたり、ボルトの締め方まで検討したりして耐久性を向上したという。空力に関しては、所有感を満足させるデザイン性と機能を両立したメッキパーツなど、デザイナーと解析チーム、その間を取り持つモデラーたちの協働とせめぎ合いに言及される。さらには、ハンドリングへのこだわりも感じさせた。
生物界最速の隼と同じく、獲物に襲い掛かる瞬間には強烈な動力性能と運動性を。それでいて、滑空する姿は鷹揚に。並列4気筒のスポーツバイクとしては異例の“グライド感”を味わえる稀有なメガスポーツがハヤブサだ。日本仕様についてのアナウンスはまだないが、その姿を見ることのできる日が待ち遠しくてならない。
「性能だけでなく品質、耐久性も作り上げました。長く乗ってください。10万km、20万km、なんなら50万km」という愛ある言葉が響く。そんな開発者の全コメントは、記事下の動画を参照してほしい。
※グライド感とは、主にアメリカの大型バイクや4輪でしばしば「滑空するように路面を進んでいく心地よさ」を表現するときに用いられる言葉。ハヤブサは、柔らかく力強い低中速トルクを使ってクルージングする際に、こうした感覚が味わえると評されてきた。
ハヤブサ|開発チーム公式インタビュー映像
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