「間口の狭いバイクはイヤなので、そこを重視しつつ上の領域も目指しました」
「実はこの機種を担当するまで250ccの4気筒には乗ったことがなくて、雑誌の記事を読んで『そういうエンジンなんやなぁ』ってイメージしていた程度だったんです。で、初めて先行試作車に乗った時、すごく面白かったんですね。これは車体もええもんにせなあかんなと気合いが入りました」
開発ライダーを担当した野﨑浩司氏は、ZX-25Rの試作車に初試乗した日のことをそう振り返る。世界中で高い評価を受けているニンジャ/Z650の開発も担当しており、特に車体の剛性バランスについては設計陣に対してかなり注文が多かったという。
「エンジンは回転フィールがきれいなんですよ。1000ccの4分の1のパーツが動いているという精密な印象も受けます。あと、サウンドもいいですね。音を作り込む部署があって、乗って聞くとやる気が出てきますから。
トラクションコントロールは3段階で、3は濡れた草や土の上でもほぼ空転しないぐらいにしました。2は推奨レベルで、濡れたマンホールを通過するときなど、いざというときに介入します。1はかなり攻めたセッティングになっていて、サーキットでガンガン開けて介入するかどうかですね。
クイックシフターは若手が担当したんですけど、かなり深いところまで進めてくれましたし、ダウン側のオートブリッパーまで含めて現状でのベストだと思っています。サーキットはもちろん、街中でもクラッチ操作がいらない快適さを味わってほしいですね」
フレームについては、山東氏の話にもあったように、最初からトレリスありきで進められた。開発ライダーの側から剛性の高いアルミにしてほしいという要求はなかったのだろうか。
「アルミと鉄とでは限界付近のフィードバックが違います。ZXシリーズでは10Rがアルミフレームですけど、レースライダーがサーキットで高負荷を掛けたときに初めて限界付近が分かるというレベルです。一般のライダーが公道で走っている分にはそんな領域に入らないですし、そこまで攻めたらリスキーですよね。だったら、スチールの方がもっと早い段階で限界が把握できるので、安心とも言えますね。
それと、山東からも説明があったように、ZX-25Rの重心は高めになっています。高くなるほどゆっくり倒れそうなイメージがあって、確かに低速コーナーでは”よっこらしょ”という感じになりますが、高速になればなるほど遠心力が加わるので、その分だけ切り返しでパタッといけるんです。10Rもそういう方向でセッティングしていますし、あと重心が高いと切り返したあとにもういっぺんタイヤを押しつぶす力が出るので、それも有利かなと」
標準装着タイヤはダンロップのオンロードラジアルGPR-300で、リヤにはニンジャ400と同じ150サイズをチョイスする。これらも開発の初期段階から決まっていたという。
「2気筒のニンジャ250との差別化を考慮しつつ、でもオールラウンドに使えることも意識しました。ライディングポジションはスポーツ寄りにはしていますが、肩肘張らずに楽しめるレベルに留めています。シートもかなり頑張りましたね。スポーツライディングができるようにしっかりさせてはいますが、あまりに硬いとお尻が痛くなるので、体圧が分散するように削ってはテストするという作業を繰り返して今の形になりました。ツーリングでの快適性もおろそかにしていません」
ブレーキは、野﨑氏ら開発ライダーの要求によって、現在のモノブロックキャリパーが採用されたという。
「ダブルの方が利くんですけど、このキャリパーにしてもらったら、過去のシングルよりもだいぶ利くし、コントロール性もあるんです。それにシングルの方がバネ下が軽い分だけハンドリングもいいですし、これで行こうと。
以前担当したZ650は、バイクの醍醐味であるスポーツライディングの取っかかりになってほしいとの思いから、ビギナーでも扱いやすいハンドリングを作り込みました。ZX-25Rはそれに匹敵するぐらい敷居を低くしつつ、さらに上の領域を目指せるように挑戦しました。ぜひ期待してください!」
●インタビュー:大屋雄一 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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