“いいヤツ”モルビデリ初優勝【…の一方、クアルタラロは不安定】
モトGP第7戦サンマリノGPでは、フランコ・モルビデリが初優勝を遂げた。いつも冷静沈着な彼は、今回、いつもと違う走りをしたわけじゃない。今回は彼にとっての好条件がうまく揃い、「どんなコンディションでも安定して自分のペースを守り切る」という、いかにも彼らしい走りができただけだ。それに周りが付いていけなかった、ということだろう。
ミザノサーキットは路面を張り替え、グリップ自体は増している。だがギャップはそのまま(笑)。かなり大きなギャップもあり、多くのライダーが苦戦していた中、モルビデリは終始安定していた。
一方、チームメイトのファビオ・クアルタラロは同レース中に2度転倒し、ポイントランキングトップの座をドヴィツィオーゾに明け渡してしまった。狙い始めると歯車が噛み合わなくなるという典型例。人生、欲張るとうまくいかないんですよね、寂聴さん…。
下剋上&世代交代が本格化【ファクトリーを食うサテライト】
’20シーズンが始まってからというもの、サテライトチーム勢が熱い。6戦中4戦でサテライトチームのライダーが優勝しているのだ。
誰が勝つか分からないというドキドキの混戦模様は、いちファンとしてはたまらないものがあるが、常勝を義務づけられているファクトリーチームとしては「たまったもんじゃない」だろう。胃を痛くしているスタッフたちが目に浮かぶ…。
要因はいくつかあるが、サテライトとファクトリーで部品供給の差がなくなりつつあることが挙げられる。はっきり言って、今のレギュレーションの中では新しいネタがないんですよ。だからいいモノがどんどんサテライトに回り、結果、マシンの性能差がかなり埋まっているのだ。
そしてサテライトにはイキのいい若いライダーが多い。いいマシンと勢いのあるライダーの組み合わせって、モータースポーツ界では鉄板ですからね……。
ミル&スズキの躍進【ギリ、ラインを空けるロッシもスゴイ】
モトGP第5戦・オーストリアGPでは2位表彰台に立ち、続く第6戦・スティリアGPでは2位に3秒近くの差をつけてぶっちぎりの独走…。初優勝なるか、と思われたところでレースは赤旗中断。フロントの新品タイヤが残っていなかったスズキのジョアン・ミルは、残念ながら4位でチェッカーを受けることとなった。
惜しい! 惜しすぎる!!
いつもスマートなレース運びを見せるミルは、高い学習能力の持ち主。’19年モトGPにデビューした彼は、前シーズン後半にかけて徐々にリザルトを上げてきた。そして’20年、学習の成果が開花しようとしている。
スズキGSX-RRは乗りやすさとコーナリングスピードの速さが身上。ストレートスピードもまずまずだし、ミル&マシンのマッチングもかなりいいようだ。第7戦・サンマリノGPでは最終ラップでロッシをかわし、3位表彰台を獲得した。
「ロッシには申し訳ないと思ったけど、これがレースだから」と語ったミル。ワタシとしてはロッシ表彰台にも期待していたから複雑な心境だが、ロッシならではのシブい”抜かれ方”が見られたから、ちょっと満足かな…。
ホンダよ、どこへ行く…【絶対王者を欠いて迷走中】
マルク・マルケスの欠場が続く中、ホンダの混迷が続いている。最高峰クラス開幕以来6戦連続表彰台ナシは、ホンダとしてはワースト記録。ヘタするとこの記録、まだまだ伸ばしてしまいそうだ。「RC213Vはマルケススペシャルではない」と言い張るホンダ陣営だが、マルケスのスーパーハードブレーキングに耐えるため、フレームがカッチカチなのは確か。フレームやヘッドパイプまわりのたわみ感がないから接地感も薄く、苦戦するのは分かる。
しかもエンジンはイナーシャ(慣性モーメント)が軽く、スロットルの開閉に対して極めて敏感に反応し、エンジンブレーキもシビアとくる。ブレーキングでスキッドしやすく、カッチカチフレームとの組み合わせによって、恐ろしく扱いづらいはずなのだ。残念ながら結果がすべてを実証してしまっている。
返す返す、ダニ・ペドロサのホンダ離脱が大きく影響しているように思う。マルケスに対抗しながら何とか”乗れるバイク”を作ってきた唯一の男・ペドロサが、せめてテストライダーとして残っていれば……。
’20モトGP第5戦〜第7戦の結果
第5戦オーストリアGP@レッドブルリンク(8/16):A・ドヴィツィオーゾいぶし銀の優勝
1位 A.ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ)
2位 J.ミル(スズキ)
3位 J.ミラー(ドゥカティ)
4位 B.ビンダー(KTM)
5位 V.ロッシ(ヤマハ)
6位 中上貴晶(ホンダ)
第6戦スティリアGP@レッドブルリンク(8/23):M・オリベイラ初優勝
1位 M,オリベイラ(KTM)
2位 J.ミラー(ドゥカティ)
3位 P.エスパルガロ(KTM)
4位 J.ミル(スズキ)
5位 A.ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ)
6位 A.リンス(スズキ)
第7戦サンマリノGP@ミザノサーキット(9/13):F・モルビデリ初優勝!!
1位 F.モルビデリ(ヤマハ)
2位 F.バニャイヤ(ドゥカティ)
3位 J.ミル(スズキ)
4位 V.ロッシ(ヤマハ)
5位 A.リンス(スズキ)
6位 M.ビニャーレス(ヤマハ)
●青木宣篤完全監修 ●写真:MotoGP.com/Ducati/RedBull ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
あなたにおすすめの関連記事
(前ページより続く) 時代はすっかり便利になったもので、なんとFacebookを通じて髙槗さんとコンタクトを取ることができた。さっそくLINEで通話。なんとなくIT最先端のイメージである……。 青木─[…]
中学生の時、ミニバイクレースで注目を集め始めていたワタシだったが、速さだけが要因だったのではない。独特なライディングフォーム──インに大きく体を落とすハルナ乗り──によるところが大きかったように思う。[…]
生粋の"鉄パイパー"新人ビンダーが優勝をもぎ取る '17年からモトGPクラスへのフル参戦を開始したKTM。4シーズン目にして悲願の初優勝を果たした。しかも新人、ブラッド・ビンダーの手によって。これはも[…]
骨折マルケス、術後即参戦【先のことなど考えねぇ!】 いろいろと超人的だったのがマルク・マルケス(ホンダ)だ。第2戦スペインGP決勝5周目にコースアウト。約200km/hでランオフエリアに飛び出しながら[…]
(前ページより続く) 時代は、三ない運動真っ盛りだった。高校進学にあたり、公立は絶対にバイクNGだったので、「自己責任で」とうっすらバイクに乗れることになっていた私立の新島学園を受験することにした。そ[…]
最新の記事
- 「前時代的? な気合とド根性が現代のMotoGPをさらなる高次元へ」【ノブ青木の上毛グランプリ新聞 Vol.19】
- ミドルクラスの究極ドゥカティ!? 2025新型パニガーレV2/ストリートファイターV2登場
- [2024秋] いま売れ筋のバイクヘルメットTOP5【大型販売店で聞いてみた】1位はSHOEIのフラッグシップ
- 【限定3台】鈴鹿8耐 表彰台マシンのレプリカ「YZF-R1」をYARTが発表!!
- ヤマハが仏電動二輪メーカー「エレクトリックモーション」へ出資
- 1
- 2