青木宣篤の上毛GP新聞

元GPライダー・ノブ青木の”青き”青春グラフィティ〈ハルナ乗りの真実・後編〉

  • 2020/9/8
元GPライダー・ノブ青木の"青き"青春グラフィティ〈ハルナ乗りの真実〉

「独特すぎる!」と揶揄されながらも、自分を決して曲げなかった。ノブ青木が貫き続け、今もこだわるライディングフォーム「ハルナ乗り」。実は憧れの人をマネしたことが発端だった。だが、その「憧れの人」も、あるライダーに影響を受けていた。体と頭をイン側に大きく落とすフォームに隠れた真実に、今、迫る。

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時代はすっかり便利になったもので、なんとFacebookを通じて髙槗さんとコンタクトを取ることができた。さっそくLINEで通話。なんとなくIT最先端のイメージである……。

青木──僕が髙槗さんに憧れてハルナ乗りを始めたの、ご存じでしたか?

髙槗──いえいえ、全然! まさか憧れられてたなんてビックリだし、お恥ずかしい限りですよ……。

青木──髙槗さん、ズバ抜けて速くてカッコよかったから。

髙槗──いやぁ、そんなことないですよ。でも、あの頃の榛名のミニバイクレースは、ものすごくレベルが高かったですよね。遠征で埼玉や千葉の初コースに行っても、普通に勝てましたから(笑)。

青木──そうそう! 全国一と言ってもいいんじゃないかなー。ところで髙槗さん、あのライディングフォームはどうやって編み出したんですか?

髙槗──うーん、あんまり覚えてないんだけど(笑)、原点はフレディ・スペンサーだったかもしれないな。スライド走法と言われてたスペンサーだけど、僕の印象では「滑らせないライダー」だったんです。限界を超えてスライドして、それをどうにか滑らせないようにして走っていた。ミニバイクのノーマルクラスは、すぐに限界がやってくる。そこで滑らせていたら速く走れないんですよ。思ったより早く滑ってしまうから、その分を体でカバーしようとして、気付いたらあのフォームになってました(笑)。

青木──ハルナ乗りの元祖、髙槗さんがスペンサーの影響を受けていたとは! ってことは、ハルナ乗りはスペンサーが生んだ!?

髙槗──ははは、そう言えるかもしれませんね!

さすが、ワタシが憧れた人だけのことはある! 髙槗さんはサラリと話してくれたが、実はめちゃくちゃレベルが高く、なおかつ鋭い内容なのだ。

スペンサーといえば、ガンガンアクセルを開けて豪快にパワースライドし、向きを変える走りが特徴だった。だがスライドは横方向の動きで、前進することに対してはどうしてもロスになる。だからスペンサーもスライドさせつつ、「いかにスライドさせないようにするか」を考えていたはずだ。

速く走ることとは、常に限界を超えていくことだ。スライドは物理的な限界のように思えるが、実は本当の限界じゃない。その先の領域にどうにか辿り着こうとライダーは努力する。

スペンサーももちろんそうしていただろうし、そのことをズバリと見抜いた髙槗さんは、自らの環境にその考え方を当てはめて、ハルナ乗りを導き出したのだ。

そして少年時代のワタシは、意味も分からないまま髙槗さんのライディングフォームをマネして、それが自分のスタイルとして定着した。ロードレースにステップアップしてもハルナ乗りを続け、そのまま世界グランプリを戦うようになったのである。

元GPライダー・ノブ青木の"青き"青春グラフィティ〈ハルナ乗りの真実〉

世界グランプリを戦うようになっても、量産車を走らせても、基本的なライディングフォームは変わらずハルナ乗りのまま。実はフォームを変えるのは至難のワザなのだ。これをやってのけたのが、下で紹介するロッシだ。 [写真タップで拡大]

【ロッシだって(マネして)ハルナ乗りに…】︎’13年にモトGP参戦を開始したマルク・マルケスはまさにハルナ乗り。その速さに反応したバレンティーノ・ロッシはすぐフォーム改造に取り組み、モノにした。努力を怠らない姿勢が、ロッシを帝王たらしめている。

元GPライダー・ノブ青木の"青き"青春グラフィティ〈ハルナ乗りの真実〉

(左)ハルナ乗り進化型のマルケス (中)2005年のロッシ (右)2014年のロッシ

……と、さんざんハルナ乗りについて熱く語っておいてナンですが、実はワタシ自身はライディングフォームにそれほど重きを置いていない(笑)。フォームというのは速く走るための副産物であって、人それぞれでまったく構わないと思っている。体格も違えば体の可動性も異なり、走り方も考え方もまちまち。マシン特性も違えばタイヤも違うのだから、いろんなフォームがあっていい。

特にレースしているレベルのライダーは、スピードを求める結果として基本を押さえざるを得ない。自分独自のライディングフォームは、それよりずっと先のステップの話だから、誰かに何かを言われる筋合いはない。

ただひとつ言えるのは、「速く走るためには、努力が必要だ」ということだ。ライディングフォームは、努力が形になって見えているだけのこと。人としての生き様、文字通りの”姿勢”なのだ。

●監修:青木宣篤 ●写真:青木家所蔵
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