青木宣篤の上毛GP新聞

KTM、’20モトGP第4戦にて悲願の初優勝、その舞台裏【長年の熟成&育成が結実】

生粋の”鉄パイパー”新人ビンダーが優勝をもぎ取る

’17年からモトGPクラスへのフル参戦を開始したKTM。4シーズン目にして悲願の初優勝を果たした。しかも新人、ブラッド・ビンダーの手によって。これはもう、快挙と言うしかない。

今年25歳になる南アフリカ人のブラッド・ビンダーは、’16年のモト3チャンピオン。’19年はモト2でランキング2位につけている。

正直、鉄パイプフレームがここまでやるとは思っていなかった。長い時間をかけてのKTMの戦略がついに実を結んだのだ。

南アフリカ人のビンダーは、レッドブル・モトGPルーキーズカップの出身。一瞬アプリリアに乗ったこともあるが、KTMの鉄パイプフレームに慣れ親しんでいる生粋の鉄パイプ乗り、言わば鉄パイパーなのだ。

ロードレース界にあって、鉄パイプフレームに大きなアドバンテージがあるとは言いにくい。むしろ、独特な乗り味があるから、アルミツインスパーフレーム使いなら乗り換えに苦戦するだろう。

事実、チームメイトでエースのポル・エスパルガロは、ヤマハから移籍して4シーズン目にしてようやく上位につけるようになってきた。そこへきてビンダーは、生粋鉄パイパー。新人ながらいきなり優勝してみせた。

フロントに依存しないライディングで見事に優勝をもぎ獲った。今後の活躍にも期待!

なぜそんなことが可能だったのか。KTMの鉄パイプフレームによる走りは、フロントタイヤにあまり依存しない。もっとハッキリ言えば、フロントタイヤをさほどうまく機能させられていないように見える。言い方を変えれば、フロントタイヤを機能させなくても走れてしまうのだ。

ビンダーも、コーナー進入でのフロントタイヤはフレームに対して常にまっすぐのままで、リヤを振り出して走っていた。このスタイルでも、もちろんフロントタイヤで曲がっていく時間帯がある。でも、それはとても短い。フロントタイヤの仕事率が低い、と言えば分かりやすいだろうか。

逆に言えば、リヤタイヤへの負担は大きい。リヤタイヤが保ってくれることが大前提だ。第4戦ではタイヤチョイスやセッティングがビシッと決まったのだろう。今シーズン、ミシュランはリヤタイヤをアップデートしたが、その特性もKTMに味方しているようだ。

それにしてもルーキーが勝つのはいいものだ。KTMにとって、ルーキーズカップの創設以来おおよそ10年越しとなる「生え抜きライダー」の勝利は本当に喜ばしい。

今後も、タイヤとのマッチングがうまくハマッたレースではKTMの大活躍が見られそうだ!

チームメイトのポル・エスパルガロも、ザルコとの接触でリタイヤするまではトップ争いに加わっていた。


●監修:青木宣篤 ●写真:MotoGP.com/Red Bull ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

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