高回転化のためクランクまで変更

ホンダ「CBR600RR」4年ぶり復活! 121psでウイング装備、電子制御も満載|160万6000円

2016年を最後に国内仕様の生産が終了していたホンダ「CBR600RR」が、新たな武器となるウイングや、高回転化&パワーアップしたエンジンを携えて復活する。レースベース車としてのポテンシャルを誰もが楽しめるよう“操る喜び”を造り込み、もちろんウイングや電子制御といったトレンドも押さえている。発売日は2020年9月25日だ。

ホンダは、2016年以来となる600クラスのスーパースポーツ「CBR600RR」を発売すると正式発表。ホンダのティーザーサイトを含め、その姿は先行公開されてきたが、ついにスペックや価格、発売日が明らかになった。

CBR1000RR-Rが怪物的なハイパワーを見せつけているのに対し、CBR600RRのコンセプトははストレスフリーな“トータルコントロール”を謳い、プロダクションレースのベース車としての高いポテンシャルを日常でも思い通りに操れる、ジャストサイズのスーパースポーツとなっている。

エンジンは動力性能向上のため、クランクシャフトとカムシャフト、バルブスプリングの材質変更により高回転化を実現。シリンダーヘッドのポート形状変更やバルブタイミングの変更、スロットルボア径の拡大、スロットルバイワイヤ(TBW)の採用などにより、高出力と高いコントロール性を両立した。

この結果、最高出力は歴代最高の121ps/14000rpmを実現し、最大のライバルであるYZF-R6を上回った。アシストスリッパークラッチも採用し、レバー操作力の低減とリヤホイールのホッピングも抑制している。

車体は従来型をベースとし、型番もPC40を踏襲しているが、スイングアームは形状こそ変わらないものの各部の板厚を調整し内部構造の最適化を図るなどして、150gの軽量化と剛性バランスを向上を果たしている。また、フロントカウルにはダウンフォースを発生させるウイングレットを新設し、走行中のフロント荷重減少を抑制して旋回性能を高めたという。

電子制御は刷新され、TBWの搭載によりライディングモード(パワーセレクター、ホンダセレクタブルトルクコントロール、ウイリー挙動緩和、セレクタブルエンジンブレーキ制御)を追加。オプション設定ではあるが上下双方向対応のクイックシフターも採用したほか、5軸IMU付き2chABSも採用している。

価格は160万6000円、発売日は2020年9月25日。

HONDA CBR600RR[2020 model]

【HONDA CBR600RR[2020 model]】主要諸元■全長2030 全幅685 全高1140 軸距1375 シート高820(各mm) 車重194kg(装備)■水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 599cc 121ps/14000rpm 6.5kg-m/11500rpm 変速機6段 燃料タンク容量18L■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=180/55ZR17 ●価格:160万6000円 ●色:赤 ●発売日:2020年9月25日

HONDA CBR600RR[2020 model]グランプリレッド

逆スラントのカウルセンターにラムエアダクトを設け、その左右にLEDヘッドライトを配置。ロービームで外側2灯が点灯し、ハイビームで全灯照射になる。1対のウイングレットは、独自の先端形状により翼端流の発生を抑え、ロールモーメントの低減を図っている。

前後ウインカーにもLEDを採用。また、急制動を検知すると後続車にいち早く伝える“エマージェンシーストップシグナル”を採用した。マシンが急制動を判定するとハザードランプが高速点滅する。

エンジン解説

新型CBR600RRは、最高出力121ps/14000rpmを達成。従来モデルと比べると中速域は思い切って割り切り、高回転域に振っているのがわかる。従来型2013~2016)は国内仕様で78ps/12000rpm、輸出仕様で119ps/12600rpmだったので、パワーアップを果たしたうえで国内仕様初のフルパワーということになる。

吸気ポートは形状を変更し、吸気ポート容積を2.2%増加させることで吸気効率を向上。スローと部には非軸線加工を追加し、ポートの繋がりを滑らかにした。

バルブタイミングは、従来モデルに対し吸気バルブのクローズを5度遅らせ、排気バルブのオープンを5度早めた。混合気の吸気効率と排ガスの排気口率の向上を図ったもので、かなり高回転合わせの設定に見える。

スロットルボディは従来のφ40mmからφ44㎜に大径化。さらに吸気経路のスムーズ化とTBWの制御を合わせることで、高回転パワーの追求と、よりライダーの意思に沿った駆動力コントロールを可能とした。

プラグを従来のタイプから7mm長いロングリーチタイプとしたことで、プラグホール、エキゾーストバルブシート周辺のウォータージャケットを拡大。燃焼室、エキゾーストバルブシート周辺の冷却効率を向上させた。

エキゾーストパイプは各部のサイズを見直し、高回転高出力化に寄与。キャタライザーは大型化したものの、排気管各部の板厚適正化により重量増は最小限に抑えたという。

アルミカムのアシストスリッパークラッチを採用。クラッチレバー操作荷重を従来型比で32%軽減するアシスト機構と、シフトダウンに伴う急激なエンジンブレーキによる後輪ホッピングを軽減するスリッパー機構を備える。トルクを伝える側と受け取る側のアシストカムをアルミダイキャスト製とすることで軽量化も達成している。

車体解説

車体のディメンションは従来を踏襲しつつ、ヘッドライトやウインカー、ABSモジュレーターなどの軽量化を図り、マスの集中化を促進。

ライディングポジションは街乗りからサーキットまで対応する自由度を高さを実現しつつ、燃料タンクシェルターの上面を10mm低くすることで、ライダーが伏せた状態でのヘルメットの顎部分を固定しやすく、かつさらに低く構えられるようにした。

こちらが上面を10mm低くした燃料タンクシェルター(黒い部分)。CBR1000RR-Rも同様に、より低く伏せられるようなタンク形状となっている。

中空アルミダイキャスト製のツインチューブフレームは継続採用。

スイングアームは全体の剛性バランスを見直し、各部の板厚調整と内部構造を最適化することで従来型から150gの軽量化を実現した。

フロントにはφ41mm倒立フォーク(SHOWA製BPF)を継続採用しつつ、アウターチューブを延長することでセッティング幅を広げている。

フロントはφ310mmダブルディスクにラジアルマウントのトキコ製4ポットキャリパー、リヤはφ220mmディスクに1ポットキャリパーを組み合わせる。

IMUを用いた車体姿勢推定システムを搭載。車体の角速度、加速度を検出し、車体姿勢角演算はじつに1秒間に100回。この情報をもとにABS、ホンダセレクタブルトルクコントロール(HSTC/いわゆるトラコン)の制御を行う。ABSはコーナリング時のブレーキ操作の安心感を高めるスーパースポーツモデル専用タイプだ。

IMUからの加速度信号によりABSモジュレーター内のECUが演算し、車体挙動を検知。急制動時に後輪が浮き上がるのを効果的に抑制する。

ECUが算出した車体バンク角と、前後車輪速センサーからの車体減速度と前後輪スリップ率から、コーナリング中にブレーキを掛けた時のバンク角適した制動力をABSがコントロールする。これにより、旋回状態をなるべく保ちつつ自然な減速を行えるようにし、安心感が向上した。

電子制御の解説

電子制御の項目は大幅に増え、従来型よりもサーキットやワインディングにおいて走りを楽しめるように進化した。

MotoGPマシンのRC213Vも採用しているスロットルバイワイヤ(TBW)を搭載。アクセルグリップの操作をアクセルポジションセンサー(APS)で検知し、従来のケーブルを不要とした。このTBWの搭載により、ライディングモードやセレクタブルエンジンブレーキ、シフトダウンも可能なクイックシフターの採用を実現した。

こちらが新採用したライディングモード一覧。プリセット×3モードに加え、好みで設定できるユーザーモードを2つ選択できるようになっている。

パワーセレクターは出力特性とともに最高出力も制御するタイプ。レベル1とレベル2のみ最高出力が同じで、スロットル開度に対する出力特性が異なっている。

クイックシフターはオプション設定。TBW搭載により、シフトアップ/シフトダウンの両方に対応する。

フルカラーTFT液晶メーターを搭載。表示モードは3つあり、この写真はストリートモードとなっている。

ストリートモード。回転と速度が大きく表示され、周辺に距離計やライディングモード、各種インジケーターを表示する。

サーキットモード。中心にラップタイムが表示される。周回数、ベストラップとの差異も追加表示。

メカニックモード。デジタルタコメーター、ギヤポジション、グリップ開度、水温、バッテリー電圧を数値で表示する。

最新の記事