以前、ハーレースポーツスター883スーパーローのカスタムプロジェクトレポートをお届けしたが、今回はその試乗インプレをお届けできることになった。 一国サイクルワークス代表の梅島氏が創造するスポーツハーレーの真価とはいかなるものか。試乗した感想をお伝えしよう。
●文: 青木タカオ(ウィズハーレー編集長) ●取材協力:一国サイクルワークス ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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スポーツスター883スーパーローの潜在能力を引き出せ!
青木: まず驚いたのは、乗りやすいってことでしたね。足回りの変更でスポーツ性を上げると聞いていたので、サーキットやワインディングロードに特化した乗り味なのかなと思ってました。
梅島:それは昔散々やってきてね。確かにスポーツスターカップなどに参戦するためのノウハウ等は自分の中に生きてますけど、今回はもっと懐の深いスポーツバイクを目指しました。

一国サイクルワークス代表の梅島国彦氏は、これまで様々なカスタムバイクを製作してきた。そのどれもが、絶対にスポーツ性をスポイルさせないものばかりなのである。
青木: 特に、前輪を支える倒立フォークは、ハードに乗らないと動かないようなイメージがあるんですけど、しなやかですよね。それはリヤサスも同じだったな。
梅島: 高級なサスペンションでしっかりしているけど、よく動く。その理由はサスそのもののセッティングも重要ですけど、特にホイールがめちゃくちゃ軽いことが理由なんですよ。
青木:いわゆるバネ下の軽量化って、スポーツバイクの重要ポイントですもんね。
梅島:そして、ラジアル構造のハイグリップタイヤが装着できるので、スポーツバイクとしての性能はかなりのものだということです。
青木: 前後の足を長くしたことで、もちろんバンク角も増えているし、よく動くサスペンションはコーナリングに不安がない。装着されているメッツラーのラジアルタイヤも、乗り心地とグリップ力共に十分性能発揮していると感じました。これは抜群に楽しいですね。
梅島: 今回は、狙った路線が完全にストリートスポーツ。つまり、ベーシックなスポーツバイクということです。エンジンは883のまま、チューニングを施すことで、よりスムーズでパワフルなスポーツ性もアップさせています。ベースはスポーツスターの中で、最もローポジションな883スーパーローですが、その潜在能力は、他のモデルよりもスポーツ性を上げられるということに着目したのです。
青木: もうこれがスタンダードでも良いのではないかと思うぐらい、スムーズだし、軽快でした。ワインディングロードに連れ出せば、もっと楽しいでしょうね。
フロントフォークはオーリンズの倒立。リヤサスはオーリンズにてワンオフ。今後一国サイクルワークスにて販売予定。
フロントブレーキローターはブレーキング製。キャリパーはブレンボ484 。
883スーパーローのサスペンションを変更して一気にそのスポーツ性をアップしたカスタムバイク。しかし、ライダーが乗車した状態で適度に沈み込むサスペンションは足付き性も問題なさそうだ。青木の身長は175センチで体重は64キロ。座高は高いと笑うが、そんな彼がカカトまでべったり着くほどのシート高なのである。小柄なライダーでも、これならほとんど問題ないだろう。
ノーマルの超軽量ホイールを生かし、メッツラー製のハイグリップラジアルを装着したこの一国スペシャル。スポーツバイクとしての完成度は一級品だった。
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アップハンドル設定だが、上体はやや前傾。これが走行中は、絶妙なコントロール性能を発揮するのである。
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スポーツスターカップ全盛時代のレーシングXLHに比べると、まったく不安な要素のない足付き性能を確保している。
最高のスポーツパフォーマンスを発揮。メッツラーのラジアルタイヤを装着
ヨーロッパ製のタイヤメーカーとして老舗のメッツラー。その長い歴史はスポーツバイクと共に歩んだ歴史であると言ってもいい。歴代、様々なスポーツバイクに装着されてきた実績は、常に最高のポテンシャルを発揮させるためのノウハウを蓄積して、その企業ポリシーやコンセプトは普遍である。
先日、ハーレーを含むアメリカンスポーツバイク用のタイヤをリリースしたばかりのメッツラーだが、今回のカスタムバイクに装着したタイヤは、純然たるスポーツユーザーに向けて開発されたラジアルタイヤである。超ハイグリップで軽快な運動性を持つ、ラジアルタイヤが装着できるハーレーはそれほど多くない。そこだけに注目しても、このカスタムはかなりのポテンシャルを発揮することが想像できるはずだ。
梅島氏は、国産ラジアルではなく、メッツラーを選んだ。そこにはやはりグローバルなスポーツ性を追求するべきというカスタムコンセプトが、メッツラータイヤの持つ個性とコラボすることで実現できると考えたからだろう。その選択は、実に軽快で楽しいハンドリングを生み出したようである。
ROADTEC Z8 INTERACT
サイズは、純正と同じ120/70-18を装着。ウエットにも強いツーリングスポーツラジアルタイヤとして長年高評価を得ている。特に軽快なハンドリングが大きな特徴で、大型ツーリングスポーツへの装着率が高いタイヤである。
SPORTEC M7RR
サイズは純正と同じ150/60-17を装着。スポーツ性能を追求しながら、センター部分の耐摩耗性を上げたデュアルコンパウンドの採用で、ロングライフも手に入れたスポーツラジアルタイヤ。ドライからウェットまで常にハイグリップを実現。
初心者ライダーや小柄な女性向けと思われる883スーパーローをベースにする意味とは
ビルダーの梅島氏が最初に気付いたポイントは、ハーレーの足回りとは思えないほど軽量化された前後ホイールとラジアルタイヤが標準装備されていること。その2点は、スポーツバイクを製作する上でとても大きなファクターとなるのは十分理解できる。しかし、理由はそれだけではなかった。
「ガソリンタンクの形状が、古いショベル時代のFXEと似てるんですよ。このタンク横から見るとスリムだけど、上から見ると幅広くて容量もたっぷり17リットル。実は歴代のスポーツスターで時々採用されているタンク形状で、僕は個人的に好きですね。だから、グラフィックを少しレトロな当時のイメージにしてみました。なかなか良いでしょ」
なるほど、走りの性能はとことん追求しながら、ハーレーらしいデザインは残すという手法なのだ。機能面のパーツは徹底的に現代的なのだが、シートはレトロなイメージのタックロールデザインでワンオフ製作するなど、トラディショナルなシルエットを守っている。
ハンドルバーはオフロード系のイメージも持たせて、スクランブラーのようでもあるし、言わば、普遍的なオートバイとしての魅力を全体から放っているのだ。
外装のイメージは極めてオーソドックス。そしてハーレーらしい高級感のある仕上がりだが、エンジンはよく回る883をベースにインジェクションチューニングを施し、車体のセッティングからタイヤの選択まで、汎用性の高いスポーツマインドを閉じ込めたスペシャルである。
実際に押し引きしても軽い上に、走れば軽快なハンドリングと、アクセル操作に従順なエンジン特性が気持ち良い。そして、どのような条件下でもグリップの良いメッツラー製ラジアルタイヤに身を任せると、スポーツスター本来の楽しさがどんどんとライダーをかき立てていく。そんなファニースポーツなのである。
ガソリンタンクはノーマルをアザーサイドで再塗装。グラフィックはAMF時代のレインンボーラインをイメージする。
ノーマルタンクの容量は17Lと大容量。
シートもワンオフ製作。アトリエチェリーにて本革にタックロールを入れる。
ハンドルバーはオフロードタイプを使用。
エンジンは883ノーマルをインジェクションチューニングでセッティングする。
今回の試乗は、交通量の少ない幹線道路と都市部だけだったが、十分にその運動性能の向上を感じた。そのままワインディングロードに連れ出すのは最高だろう。
その他のカスタムポイント
エアークリーナーカバーは、一国オリジナル製
ドライブプーリーはメッキの上に塗装を施し、オレンジラインとショップURLをデザインポイントとする。リヤホイールにもオレンジライン。旋盤加工にて溝を掘って描くというきめ細かさだ。
マフラーはスリップオンタイプのターンナウト、一国オリジナル。
タンデムステップは、一国オリジナル。ベルトガードはワンオフ製作だが、生産予定である。
ブレーキマスター&クラッチレバーは、角度調整機能付きのRSD製。
ウインカーはサンダーバイク製の超小型LEDタイプ。ウインカーステーもワンオフ。フェンダーストラットは、ワンオフでスムージング加工している。
サイドスタンドエクステンションは、一国オリジナル。
インサイドステップは一国オリジナル。ビレット製で左右幅を詰めた優れものだ。
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