年に1度開催されるトライアルのワールドカップ「トライアル・デ・ナシオン」。スペインで開催されたこの大会に、2019年も男子日本代表チームが出場。世界2位という素晴らしい結果を残し、日本から応援に来ていたファンや観客からも大きな拍手が送られた。『オフロードマシン ゴー・ライド』から、この大会のレポートをお伝えする。
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藤波貴久選手、小川友幸選手、黒山健一選手。この3人が揃ってのデ・ナシオンにて、4位と表彰台を初めて逃したのが昨年2018年のチェコ大会。「チェコ大会終了後から、2019年のデ・ナシオンは始まっていた」と3人が口をそろえていうとおり、そのあまりの悔しさに、彼らはその直後に、デ・ナシオンの派遣を決めるMFJ(日本モーターサイクルスポーツ協会)に直談判。「必ず表彰台を取り戻すから、同じメンバーで戦わせてほしい」と願い出た。
もちろん、その申し出が簡単に通るような世界ではないが、現状では実力的にも彼ら3人がベストメンバー。MFJは今年のデ・ナシオンも同じメンバーを選出し、表彰台奪還を目指した。結果はすでにご存じだと思うが、日本代表チームは例年以上に強いチームワークを見せ、世界2位という素晴らしい成績を残した。
チームを引っぱったのは2004年の世界チャンピオンで、2020年でトライアル世界選手権フル参戦25年目となる藤波貴久選手。世界選手権のセクションに慣れている彼が、セクション下見時に全日本組の小川選手、黒山選手にアドバイスを送るなど、すべてにおいて試合の中心に立っていた。藤波選手はいう。
「これまでのデ・ナシオンも集中してレースに臨んでいましたが、今年はいつも以上に集中していました。なぜなら昨年の4位という結果が僕たちにとってかなり悔しかったからです。小川、黒山、藤波がそろっていて、表彰台を逃すということはありえないこと。だから今年は何がなんでも表彰台を取るという意気込みで、選手、スタッフ、チームとも一丸となりました。小川選手、黒山選手とは、何度も話し合いを重ね、レース中もお互いに声をかけあい、フォローし合っていました。
最後の最後、自分がクリーンをしなければ2位になれない可能性もあり、プレッシャーはありました。だからこそ、この2位という結果は心の底からうれしいです。他国からはおじさんチームなんて揶揄されていたりしたので、そんなおじさんチームでもまだまだ強いということを証明できたと思います。応援してくれたみなさん感謝しています」
最年長の小川選手は
「今年のデ・ナシオンへの意気込みはすごいものだったと思います。ライダー、スタッフ全員が一丸となりました。僕自身も日本からいくつかのパーツを持ち込んで、より自分に合ったマシンに仕上げて、レースに臨めるようにしたのです(小川選手は藤波選手のセカンドマシンを使用)。試合では自分の調子もよく、かつ藤波選手、黒山選手も同じように調子がよかったと思います。それに誰かが失敗したら誰かがフォローする。そういうことができたのもあり、全体的にみて、チームワークも走りもバッチリ。世界2位という結果を残せたと思います。応援ありがとうございました」
黒山選手は
「選手もスタッフも今年は何がなんでも表彰台という気持ちが強く、それに向かって準備してきました。試合では強豪・スペインチームを脅かすことができるぐらい好調な試合を展開できたと思います。途中、自分のマシンに小さなトラブルが起きたりしましたが、それもなんとか解決でき、振り返ってみれば全体的にどのセクションも果敢にチャレンジできたと思います。藤波選手、小川選手、チーム、そして応援してくれたみなさんにも感謝したいです」
今年は表彰台獲得という目標に向かい、まさに一丸となった日本代表チーム。それが世界2位という結果をもたらした。ただ、課題も大きく残る。他国は若手ライダーたちの成長が著しく、国によっては若手が揃うなど、代表の入れ替えが激しい。一方、日本代表チームは平均年齢40歳の藤波・小川・黒山を越していく若手が出ていないのが現状だ。そのため、将来を見据えれば、若手育成のためにメンバーをリフレッシュするといったことも考えなければならない時期にきているといえるだろう。
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