手に入れれば、生活のすべてが変わる可能性を秘めている。それがハーレーダビッドソンという乗り物だ。そんな暮らしを満喫中の個性派オーナーたちを、ハーレー専門誌『ウィズハーレー』が全国を渡り歩いてピックアップ。今回はショベル・リジッドチョッパーに乗るNAOMIさんのハーレーライフを紹介しよう。
●文:ウィズハーレー編集部(青木タカオ) ●写真:宮下豊史 ●外部リンク:NITA ANTIQUES
一筋縄ではいかないチョッパーを乗りこなす
極限にまで薄い、シンプルなサドルシート。その座面に膝立ちした左足は、すぐに腰の位置より後ろへ、真っ直ぐ高く振り上げられた。まるで何か、運動競技のフォームのように美しいから見惚れてしまうものの、時間にすればコンマ1秒とわずかでしかない。間髪入れず、左足が振り子のように反動をつけると、全体重が右足へかかり、キックペダルが勢いよく蹴り落とされていく。燃焼室で圧縮され、逃げ場を失った混合気に火が飛ぶと同時に、74キュービックインチ=1200cc のショベルヘッドが勢いよく目覚めた。
前後シリンダーから、それぞれに独立したエキゾーストパイプが伸び、後輪に差しかかるところで、揃ってバッサリと切り落とされている。スラッシュカットされた2本の口から不等間隔の排気音を轟かせ、車体全体を小刻みに震えさせている様子は、まるで生き物のようでさえあるから、不思議に思えてならない。
というのもその一方で、剥き出しのプライマリーベルトが規則的に回転する様子に目をやれば、これほどにまで機械じみた冷徹なものはないかもしれないと、相反する感情を持ち合わせてしまう。
機械の塊でありながら、どこかで血が通っているかのようでもあるから、ときには「鐵馬」などと呼ばれるのかもしれない。
手懐けて、乗りこなすのはNAOMIさんだ。ベンチュリーが短くコンパクトながら、大きく口を開けたS&SスーパーEのアイドルスクリューで始動直後の回転を整えた。京都・高雄のアメリカンアンティーク家具/古着/雑貨のお店「NITA ANTIQUES」の店長を務めつつ、ピーチチョッパーで走る日常をSNSで公開中。自らがデザインを手がけたアパレルやお店の様子など、彼女の世界観がそこには限りなく広がっている。
目を引くファッションコーディネイトととともに、見る者を強く惹きつけるのが、なんといってもピンクのチョッパーだ。リジッドフレームにスプリンガーフォーク、小振りなフューエルタンクには髪の長いキュートな女の娘が描かれ、703(NAOMI)とある。マグネトー/キックスタート/スーサイドクラッチ/ジョッキーシフト…、一筋縄ではいかないことは誰の目にも明らか。じつに興味深い!
しかし、猛暑だろうが極寒であっても構わず乗って走る。納車時、最初だけ手こずったものの「すぐに慣れた」と、本人はさらりと言う。不便に感じたり、悔やんだことはない。ピーチチョッパーのこの仕様を気に入っていて、満足している。
その様子は、フランスで30年以上続くアメリカンカルチャー誌でも紹介されたほどで、気がつけば国境を越えたインフルエンサーとなっていた。子どもの頃からクルマやバイクが好きで、モデルの仕事などをしていくうちに、ピンナップガールとして活躍するサビーナ・ケリーをアメリカの雑誌で知る。すると、持ち前の行動力で渡米。彼女が出演するカーショー『ビバ・ラスベガス』へ会いに行き、サインなどをもらった。2013年のことだ。
欲しいクルマがずっとある。エルヴィス・プレスリーが母親のグラディスにプレゼントしたピンク・キャデラックだ。アメリカンドリームの象徴とも言われるが、それもNAOMIさんならよく似合いそう。
日本であるとか、海外であるとか、垣根はない。やりたいことをやっていくだけ。だから、フォロワーたちはずっと見ていたくなる。魅了される人は後を絶たない。
動画はコチラ
ショベルヘッドエンジンをキック始動するNAOMIさんの姿、動画でご覧あれ!!
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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