
メーカー/ショップ/ユーザーによって、工具に求める機能や見解は異なることがある。だが、作業の内容に応じて工具を選び実践する際には重視するポイントがあるはず。ここではフットワークパーツを手がけるアドバンテージのプロのこだわりと、サンデーメカニックにとって参考になる作業実践を紹介しよう。
●文:モトメカニック編集部(田口勝己) ●写真:栗田 晃 ●外部リンク:アドバンテージ
フットワークのプロショップを支える作業環境と使い勝手の良い工具
少々のガタや渋さがあっても、どうにか作業を進めることもあるサンデーメカニックに対して、僅かな妥協や雑な仕事が致命傷となることもあるプロの世界。アドバンテージのツールキャビネットには、大量のプライヤーが収まる引き出しがある。
「以前販売していた当社のディスクローターのピンはスナップリング止めで、これを装着する際はクニペックスの精密プライヤーがベストでした」
…と語るのは、同社の中西昇代表。当時一般的だったのはEリングだが、円周上の開口部が大きくリング溝が深く、スラスト方向の荷重に弱いため、スナップリング固定を考案。
クニペックス製プライヤーは、鍛造製法の本体剛性が高くジョイント部のねじれが皆無で、超硬チップの先端の耐久性も抜群。「ヤワいプライヤーだとリングが滑ってローターを傷つけることもあるので、組み立てには使いません」と中西代表。
アドバンテージを代表する製品であるサスペンションも同様だ。スプリング交換で使用する油圧ジャッキ仕様のコンプレッサーは、スプリングホルダー部分を独自にモディファイ。
リングナットを回すフックレンチも、レーザーカットされた専用品を用意するこだわりぶり。「レートの高いスプリングを着脱する際は、利便性より確実にホールドすることが重要で、フックレンチのわずかなガタでお客様の製品を傷つけるリスクがあるのなら、と専用品を作りました」
クオリティの高い仕事をするために精度の高い工具を使う。そこにプロならではの明確が姿勢がある。
25年ほど前に購入したスナップオン製の大型ロールキャビネット。その引き出しの1段はプライヤー類専用。特定の工具ブランドにこだわるというより、作業ごとに確実な仕事ができるアイテムを選んで使ってきた。フローティングピンだけでなく、エンジン内部でも多用されるスナップリング用プライヤーは、クニペックス製に信頼を寄せている。
25年ほど前に購入したスナップオン製の大型ロールキャビネット。その引き出しの1段はプライヤー類専用。特定の工具ブランドにこだわるというより、作業ごとに確実な仕事ができるアイテムを選んで使ってきた。フローティングピンだけでなく、エンジン内部でも多用されるスナップリング用プライヤーは、クニペックス製に信頼を寄せている。
工具とメンテナンスリフトはカスタムマシン製作の必須アイテム
スペシャルパーツ開発と並行して、カスタムマシン製作も行うアドバンテージ。ハーレーダビッドソンも余裕で持ち上げる興和精機のメンテリフトは、単相200V仕様の電動油圧式。1000mm以上まで上昇するので、足まわりパーツの着脱も余裕。
スペシャルパーツ開発と並行して、カスタムマシン製作も行うアドバンテージ。ハーレーダビッドソンも余裕で持ち上げる興和精機のメンテリフトは、単相200V仕様の電動油圧式。1000mm以上まで上昇するので、足まわりパーツの着脱も余裕。
リヤショック用スプリングコンプレッサーは、サスペンションメーカー製/イタリアのアンドレアーニ/スタンドメーカーのJ-TRIP製を使い分ける。スプリングホルダーの一部はアドバンテージ製。フックレンチもすべてレーザーカットで製作したオリジナル。
組み立て治具もワンオフ製作
サスペンションにまつわる専用工具や治具も、必要に応じてその都度用意するため増える一方だが、これがプロショップとしての貴重な財産になっている。下のコンテナはベアリング圧入用にワンオフで製作した治具。精度に対するこだわりの表れだ。
スナップリングの組み立てはクニペックス製プライヤー一択
スナップリングとEリングではリング溝の深さが異なり、スナップリングの方が浅い=ピンの肉厚を薄くでき溝部からの切断リスクも低減する利点がある。だが、装着時のリングのねじれが締結力の低下や脱落につながるので、クニペックスプライヤーが必須だった。
アドバンテージ代表 中西 昇さん 「スナップオンもハゼットもPBも使いますが、どれもブランドだからというより、使いやすくて信頼できる物を選んだらそうなっていたという感じですね」と語るアドバンテージ中西代表。ただ、名の通ったメーカーの製品には信頼されるだけの実力があるものが多いと感じるそうだ。「無理をすれば自分がケガをするリスクがあるし、お客様にも迷惑をかける。それを避けるためにも工具選びは重要です」
アドバンテージ代表 中西 昇さん 「スナップオンもハゼットもPBも使いますが、どれもブランドだからというより、使いやすくて信頼できる物を選んだらそうなっていたという感じですね」と語るアドバンテージ中西代表。ただ、名の通ったメーカーの製品には信頼されるだけの実力があるものが多いと感じるそうだ。「無理をすれば自分がケガをするリスクがあるし、お客様にも迷惑をかける。それを避けるためにも工具選びは重要です」
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