完全固着でビクともしなかったキャブが漬け込み徹底洗浄で回復!【固着キャブレターの分解再生】

スロットル操作ができない状態で購入した、モトグッチ ルマンIII。厳密には右側スロットルリンクが作動しないので、大敵は右側だと判断。動かないものをチカラずくで動かそうとしてもロクなことがない。無理やりスロットルをひねると、スロットルパイプのワイヤータイコの引っ掛けがパキッと割れてしまうこともある。メンテナンスにおいて大切な心得は、“決して無理しないこと”です。


●文/写真:モトメカニック編集部 ●外部リンク:ワイズギア

キャブレター完全固着でスロットル不動→無理しないで“熱”を利用して優しく分解

分解メンテナンスや分解オーバーホールしていたつもりでも、気が付いた時には部品にダメージを与えたり、最悪の場合、取り返しがつかないことになってしまった…。そんな経験、ありませんか? 

サンデーメカニックなら、誰にでもそのような経験はあるはず!? 以前に実際に見た(しかも何度か見た)例だが、デロルト36のメインジェットホルダーを無理やり取り外そうとしたのか、ボディ本体のホルダー根元からボッキリ折れていたキャブボディがあった。

もしもネジが硬くて緩まなかったら、まずはヒートガンで患部周辺を温めてから緩めてみるのが良いだろう。それでも硬くて緩まない場合は、水道水+少量の中性洗剤を鍋に入れて沸かし、ボディをしばらく煮てから分解トライしてみるのが良い。このような手順で作業進行することで、最悪のケースにはならないはずだ。

今回は、スロットル操作ができない状態で購入したモトグッチ ルマンIIIのキャブレターを漬け込み徹底洗浄することで回復を図った。

ガソリン残があるまま長期間放置したキャブレター内部は、このようなコンディションになっている。スプレーケミカルでブシューッとやるだけでは、決して良いコンディションにはならない。

「レンチを掛けられるから安心」これは大間違いだ。ジェットホルダーを外そうとしたら固着していて、ボディ側のネジ座を折ってしまったキャブを見たこともある。

ヒートガンで本体を温める時には、一か所ばかり狙い撃ちするのではなく、スロットルバルブの外周を全体的に温めることでスロットルバルブの固着が緩みやすい。

スロットルバルブが固着している場合には、円筒型バルブ外周とボディの隙間に防錆浸透スプレーを吹き付けて、固着ガソリンを溶かすように試みよう。これは必須だ。

スロットルバルブの固着が緩んで、ズルズル抜けてきた。走行距離が少ないだけあって、スロットルバルブの摩耗は皆無。こんなコンディションを見ると嬉しいかぎりだ。

車体からキャブレターを取り外し、作業開始してから30分。構成部品はおおよそ単品部品に分解することができた。メンテナンス時は熱の利用が極めて有効。

車体からの取り外しも含めて、ここまでの作業で利用したハンドツール類。一般的な工具ばかりだが、キャブ用ドライバーとピックアップツールはあると本当に便利。

取り外したキャブレターの洗浄

ベーシックなコンディションは至極良いものの、ガソリン残のまま放置され続けて30年だとこうなる。ここではワイズギアのスーパーキャブレタークリーナー【原液タイプ】を利用して、徹底的に洗浄しよう。

容器に洗浄液を作る前に、容器のサイズを必ず検討しよう。大き過ぎても、小さ過ぎても効率が良くないので、無駄な作業はしないこと。キッチリ入るサイズが良い。

容器がもう少し深ければ完全に沈めて効果的に洗浄できるが、今回は表裏ひっくり返しながら合計3〜4時間洗浄した。四角い寸胴容器があると嬉しいですね。

漬け込み型のキャブクリーナーで洗浄したら、さらにコンロにお湯を沸かして湯洗で各部品の油汚れを流すと、組み立て時にベト付かず、後々のコンディションが良い。

洗浄し終えた部品はすべてエアーブロー。パーツクリーナーで脱脂すると冷えて結露が出るので、やはり熱湯に通して油落としするのがベストだろう。

ドゥカティを楽しみ続けてきたので、デロルトPHM系スペア部品は相当数持っていた(つもり)だった。さすがに30年前にまとめ買いしたものなので、スペアも底を付きました。

ボディ色からも判断できると思うが、ベーシックなコンディションが本当に良かった。今回のオーバーホール時には、消耗品スペアパーツは間に合った。手元に新品部品があるのは嬉しいかぎり。

キャブレター本体はオーバーホール完了。燃料コックは、純正OEMでもあるVAP製新品部品をグッツィーノで購入。燃料ホースはホンダ純正のメッシュ巻を利用した。

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