ツーリング前に唱えよ! バイクトラブルを未然に防ぐ魔法の言葉「ネンオシャチエブクトウバシメ」

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ツーリング前に唱えよ! バイクトラブルを未然に防ぐ魔法の言葉「ネンオシャチエブクトウバシメ」

いにしえからバイク初心者に伝わる、「ネンオシャチエブクトウバシメ」という伝説の呪文があります。・・・知ってる? むしろ耳タコ?? まあ、そうおっしゃらずに「わかったつもり」になってないで、チェックしてみましょうよ。知っているのと、実際にやっているのとでは大違い。快適なバイクライフのためにも、どうかご一読よろしくお願いいたします~!


●文:[クリエイターチャンネル] DIY道楽テツ

唱えてますか?「ネンオシャチエブクトウバシメ」

突然ですが、愛車の点検していますか? 「車検パスしてるから問題なし」「普通にエンジンかかって走っているから大丈夫」・・・と思っている、そんな貴方にこそぜひとも、この記事を読んでいただきたいのです。損はさせませんから!

見落としがちな「運行前点検」

さて、オートバイの「点検」と言っても3つあります。

  • 車検(自動車検査登録制度)
  • 法定点検(定期点検整備)
  • 運行前点検

車検と法定点検は、排気量が250ccを超えるバイクであれば、実施するタイミングが法律で定められています。一方、運行前点検については「毎回バイクを運転する前に行う簡単な点検」とされており、義務とはなっていません。あくまで、「事故を防ぐために推奨」とされています。

その運行前点検をわかりやすくまとめて、頭文字を並べたのが、タイトルの「ネンオシャチエブクトウバシメ」というワケなのです。どのような意味かは、下記の通り。

  • ネン:燃料
  • オ:オイル
  • シャ:車輪
  • チ:チェーン
  • エ:エンジン
  • ブ:ブレーキ
  • ク:クラッチ
  • トウ:燈火類
  • バ:バッテリー
  • シメ:締め付け(増し締め)

※呪文のイメージをAIで作成いたしました

じつはコレ、警視庁のホームページでも紹介されている、由緒正しい呪文(?)なのです!

1970年代には、すでに教習所で教えられていたようなので、知ってる方も多いことでしょう。いやむしろ、耳にタコかもしれません。でも、乗るたびにちゃんとチェックしてる方は、少ないのではないでしょうか。だけどね、コレがなかなかに侮れないのですよ。

どんなトラブルにも必ず「予兆」というものがあります。ゼロからいきなり発生するトラブルはないのです。予兆とは「昨日とはちょっと違う何か」なので、日頃からマシンの状態をちゃんと目で見て、手で触れて、耳で聞いて、肌で感じていれば「いつもと違う何か」に気付けるはずなのです。

とはいえ、オートバイは数多くのパーツがあるので、すべてをいつも点検するというわけにもいきません。そこで、重要なものだけに絞りに絞ったのが「ネンオシャチエブクトウバシメ」なのです。

バイクに乗ればその全体が目に入ってはいるものの、見るだけでは不十分です。「目に入る」のと「目視でチェック」は違う。さらに「触れてみる」はもっと違う。それでは、実際にバイクをチェックしてみましょう!

やってみよう! 運行前点検のチェックポイント

運行前点検のチェックポイント「ネンオシャチエブクトウバシメ」を実際にやってみましょう。

「ネン」燃料タンク

コレがなくちゃ走れない! 燃料、ガソリンです。さすがに、燃料を気にしてない人はいないでしょう~! ・・・でもね、燃料系やリザーブ警告灯を信用しきってしまうと、ちょっと危うい。傾斜などでバイクが傾いていると、燃料計が不正確な場合もあるからです。

ベストな確認方法は、給油口をあけての目視確認。または、バイクを揺らして、その音と振動で燃料の量を「感じる」のです。じつはこれ、日ごろから給油時の満タン状態や真ん中ぐらい、そして減ってきたときなどに、バイクを揺らしてみると、音や振動だけでだいたいの燃料の量がわかるようになります。しかもけっこう正確!

「オ」オイル

バイクにはさまざまなオイルが使われていますが、とくに重要なのがエンジンオイル。これはエンジンにとっての血液といっても、過言ではありません。減っていたり汚れていたりすると、トラブルの原因になります。平地でエンジンを停止した状態で、点検窓からチェックすれば、オイルの量と汚れ具合をチェックすることができます。

しかしこれもまた、できればオイル注入口のレベルゲージを使って、オイル量を目視でしっかり確認したいところ。とくにツーリングなどふだんより距離を走るときなどは、必ずチェックするようにしましょう。ちょっとでも不安があるときは、交換するのが吉。国産バイクならば、メーカーの交換サイクルを守っておくだけで、オイル起因の故障はほぼ未然に防げます。しっかりやっておきましょう。

「シャ」車輪

車輪ですが、これはホイールというよりタイヤですね。ふだん見ているつもりでも、よくよくチェックしてみると「思ってたよりも溝が減っていた!」なんてことは、よくあること(経験多数)です。溝は残っていても、真ん中ばかり減っていたりすると、本来のコーナリング性能は発揮できません。

タイヤの空気圧にも、注意しましょう。タイヤの空気は、ごく少量ながら自然に抜けていくもの。ほかにも、気温の変化によって、いつの間にか空気圧が減少していたということも、多々あります。ガソリンを入れたついでに、タイヤの空気圧チェックがもっとも効率よくて、確実な方法なのでオススメです! ガソリンスタンドなら、必ず空気入れがありますからね。

「チ」チェーン

いつも目についているはずのチェーン。よくよくチェックすると、ダルンダルンに緩んでいた・・・なんて経験ある人も多いはず(もちろん筆者もあります)。チェーンの緩みは、騒音や振動の原因になるだけでなく、チェーンそのものやスプロケットの摩耗を早めるので、要チェックです。

また、チェーンの給油が足りてないようであれば、チェーンオイルの給油も忘れずに。汚れが溜まっていたら、クリーニングも大切です。こうしてみると、チェーンだけでもチェックすることは多いのです。見過ごしていたとしたら、けっきょく損をするのは自分。気を付けたいものです。

「エ」エンジン

エンジンのチェックというと、「素人じゃわからないのでは」と思うかもしれません。でも、なにも分解しろというのではないので、意外と簡単です。「音を聞く」「アクセルをふかしてみる」これだけをすればオッケー!

日ごろからエンジンの音をちゃんと聞いて、時に(迷惑にならない範囲で)アクセルをふかしてみて、何かしらの違和感を感じれば、何かしらのトラブルが発生している証拠。何か変な音がしていたり、スムーズに回転数が上がらなかったり、ボコついたり。時にはアイドリングが安定しない、なんてこともありますね。

停車状態でもだいたいチェックできることばかりです。ぜひ日ごろから、エンジンの音に耳を済ませてみてください。

「ブ」ブレーキ

最重要保安部品のブレーキ。確認方法としては「握り代」「効き具合」「タッチ」「音」の4つが挙げられます。調子が良かったときよりも、ブレーキが多く握れてしまうとか、ブレーキの利きが悪くなってきたとか、レバーを握ったタッチが柔らかくなってきたとか、キーキー音がするとかしたら、全部黄色信号です。

また、ブレーキパッドが減ってくると、リザーバータンク内のブレーキフルードの量が減ってきます。点検窓からブレーキフルードの量と、そして色もチェックしてみてください。異常が見られたら、バイク屋さんにお願いして、整備してもらいましょう!

「ク」クラッチ

クラッチレバーの握り具合のチェックです。だんだん握るチカラがより必要になってきたり、握ったときに変な音がしたり、引っかかりがある時は、要注意。ワイヤー式だったら、クラッチワイヤーが切れかかっている場合もあります。また油圧式だったら、タッチがフワフワしてきたりとか、クラッチが切れるタイミングが変わってしまったら、危険信号です。

「トウ」燈火類

燈火類はヘッドライトだけでなく、ウィンカーやテールランプ、ストップランプ、ナンバー灯やメーターのバックライトやインジゲーター類も、含まれます。

ヘッドライトや前ウィンカーなら、比較的気づきやすいのですが、テールランプや後ろのウィンカーなどは、なかなか気づかないもの。そしてチェックも難しいものですが、暗い場所で壁ギリギリにバイクを近づけて、ブレーキランプやウィンカーを点滅させてみましょう。壁に反射する光で、チェックできたりします。

また、コンビニなどに立ち寄ったあと、去り際にガラスにバイクの後姿を映して、ウィンカー、テールランプ、ストップランプを順に点灯させてチェックするというのも、(ちょっと恥ずかしいけど)有効な方法なのでおすすめです!

「バ」バッテリー

バッテリーのチェックといえば、一昔前は「バッテリー液量のチェック」なんてのがありましたが、今はMFバッテリーが主流なので、チェック不要になりました。でもその一方で現代のマシンは、電子制御部品が圧倒的に増えたことによって、バッテリーの重要度は何倍にもハネあがってますよね。

燃料ポンプを使っているバイクともなれば、バッテリー上がりになると押しがけもできなくなるので、バッテリートラブルは避けたいもの。

チェック方法は、セルスターター回した時の「キュルキュル音」を聞くのが一番です。新品バッテリーと同様に、キュルキュル回っていれば問題ないですが、なんかエンジンのかかりが悪くなったり、「キュル キュル キュル・・・」と元気がなくなってきたりしたら要注意。「ギュル ギュ ・・・ ジジジジ・・・」となって、バッテリーが終わりかねません(←経験多数)。

冬になると、気温とともにバッテリーの性能も下がり気味になるので、エンジン始動するたびに、セルスターターの音をチェックしてみてください!

「シメ」増し締め

最後は増し締めです。じつはここをチェック!という決まりはなくて、ぶっちゃけた話、すべてのボルトが対象です。とくに、これまで外したことがある箇所や、調整する場所はとくに注意してチェックするようにしましょう。スマホホルダーなどの後付けパーツも、要注意です。

そして、これは筆者の経験ですが、振動が伝わりやすいためか、ハンドルまわりと足まわり、マフラーのフランジボルトやステー、そしてステップまわりのボルトは、緩みやすくなっています。このあたりも、チェックしておくと安心です。

また、何らかのチューンナップをして回転数が上がったり、パワーアップしたり振動が増えたバイクは、ノーマルよりもあらゆるボルトが緩みやすくなっています。「まさか!」と思うところが緩んでいたりするので…。ちなみにこれまで筆者がボルト緩みに気づかないで、走行中に「落としてしまった&外れてしまった」パーツの例は、下記のような感じです。

緩んだもの

  • ハンドルバー
  • 集合スイッチ
  • ミラー
  • スイングアームピポットシャフト
  • ブレーキキャリパー
  • ステップバー
  • シフトペダル

落としたもの

  • マフラー(サイレンサー)
  • ウィンカー
  • サイドカバー
  • ナンバー
  • キックペダル

・・・どうでしょう(汗)。もっとマメに増し締めしていれば・・・と後悔しても、あとの祭り。みなさんには同じミスをしないで欲しいと願うばかりです。もっとも、締付けすぎも問題なのは確か。ねじ切ったり、ネジ穴が舐めてしまうところまで、力をいれるのはやめておきましょう。

まとめ:「見て」「聞いて」「触れて」「感じて」チェック!

ネンオシャチエブクトウバシメ。頭文字だけ並べると、なんかかったるい点検項目のように思えますが、それぞれの大切さが理解できると、かなり重要な点検であることがお分かりいただけると思います。

また、お気づきかもしれませんが、どのチェックも「見て」「聞いて」「触れて」「感じて」チェックなので、メカニックの技術がなくてもできるものばかりです。増し締めだけは工具が必要ですが。

強くお伝えしたいこととしては、調子がいいときの「音」「振動」「フィーリング」は、いつも乗っているオーナーだからこそ、違いに気づけるものだということ。こればかりは、今これを読んでいるアナタにしかできないことだと、筆者は考えます。

ですので、「運行前点検」なんて肩ひじはらずに、ガレージから出す引き回しの瞬間から、クラッチとブレーキのレバーを握って、チェーンの回り具合を見て、エンジン始動しながらバッテリーをチェックし、走りながらブレーキの利き具合やエンジンの音を聞いて、洗車の時などにタイヤをチェックする、ぐらいの感じで「ネンオシャチエブクトウバシメ」を、実践してもらえればと思います。

この記事が、何処かの誰か様の参考になれば幸いです。今回もご一読ありがとうございました~!

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