暴走族ブーム前の1970年代について当時のバイカーに聞いてみた【あの頃は純粋だった】

●文:[クリエイターチャンネル] 名城政也
先日、横浜で『疾風伝説 特攻の拓 展』がおこなわれていました。『湘南純愛組』『BADBOYS』などなど、青春時代にヤンキー漫画を食い入るように読んできた私にとって、この頃の漫画がスポットを浴びるのはとても嬉しく思います。
とは言いながらも、実際に漫画が流行っていたのは私の年齢(現在37歳)よりも少し前の世代。漫画で描かれている時代のヤンキーやバイクについて、リアルには知りません。
そこでふと思い出してみると…そもそも私がバイクを好きになったきっかけは現在70代になる父親の影響。今でも元気にハーレーをブイブイ乗り回している生粋のバイカーです。そんな父親に、彼がバイクを乗り始めて青春を過ごした時代、1970年代のリアルでヤンチャな事情について聞いてみました!
やはり現代よりは緩い。1970年代のルール
まず気になったのは、当時のルール。昔はノーヘルでスピードもガンガン出していた…なんて話もよく聞きます。「これこそ漫画を読んで憧れていたヤンチャなバイクの乗り方だ! 」と、興奮気味に当時のルールについて聞いてみました。
免許は「原付・二輪」のみ! 実地も超簡単
まず私が驚いたのが、バイク免許の種類。今では以下のように分かれています。
- 原付免許
- 小型限定普通二輪免許
- AT小型限定普通二輪免許
- 普通二輪免許
- AT限定普通二輪免許
- 大型二輪免許
- AT限定大型二輪免許
しかし、1970年代当時は大型・中型などは分かれておらず、原付と二輪だけだったそうです。二輪さえとれればハーレーにすら乗れてしまった当時…なんて羨ましいのだろう…。
免許取得も超簡単!
免許の取得方法も、今と比べてかなり簡単だったそうです。今では一本橋やバイクの引き起こしなどがあり「一本橋が苦手」「腕力がないから不安…」という人もいるかと思います。
しかし、当時は引き起こしをする必要もなく、一本橋などもありませんでした。カブでコースさえまわれれば二輪免許がとれた時代なのです。
それだけでハーレーに乗れてしまうわけですから、現代から考えるとすごい時代ですよね。
ヘルメットは努力義務。罰則もなし
今ではノーヘルなんて考えられませんが、1970年代はノーヘルは当たり前。正確には「ヘルメット着用の努力義務」はありましたが、あくまで努力義務。ヘルメットをかぶってなくても捕まることもなければ罰則もなしでした。
調べてみると、原付も含むすべてのバイクにヘルメットの着用義務化がされたのは1986年。父親がバイクに乗り始めたのは1971年あたりとのことなので、数年間はノーヘルで運転していても問題なかったんですね。ということは、ヤンキー漫画のノーヘルは、「ルールを破ってやる!」というよりも、当時の名残の方が強いのかもしれませんね。
スピードについても、120km/h位は公道で出していたそうです。「それで捕まらないのって本当凄い時代だよね」という私に、当時の事情を教えてくれました。
「速度に関しては規制があったから、120km/hはさすがにアウトだったけど、今よりも取り締まりがゆるかったんだよ。捕まるのは運悪い奴っていう感じかな(笑)でも、当時は点数制もなかったし、捕まっても罰金のみだったから、今と比べたらルール守らない人の方が多かったんじゃないかな。」
スピード違反で捕まっても免許を取り上げられないなんて、本当羨ましい時代です。
1970年代のバイカーはヤンチャではなかった
ノーヘルで速いスピード。これこそ私の求めていたヤンチャなバイカーの理想像!と鼻息荒く、「もっと当時の話を教えて! もっとヤンチャなエピソードないの!?」と父親に聞いてみたのですが、じつは1970年代のバイカーはヤンチャではなかったそうです。
1970年代はバイク漫画もバイク映画もまだ少ない時代
「きっと昔の人も、映画や漫画に影響されてヤンチャな乗り方をしていたに違いない!」そう思って当時のバイク文化について聞いてみたところ、「そういった影響は少なかった」という答え。
なぜなら1970年代は、今と比べてバイク漫画や映画がなかったから。映画『イージー・ライダー』の影響でハーレーに乗る人は増えたものの、当時の若者にとってハーレーはかなり高額で手を出せるようなものではありませんでした。なので、『イージー・ライダー』の影響で、ヤンチャな人が増えたという印象もないそうです。
また1970年代は、まだ「バイク=暴走族」のイメージになる前。父いわく、暴走族が流行ったのは1980年時代ですから、当時はまだ「ヤンチャな人が乗る物」というイメージではなかったのでしょう。
「ヤンキー・走り屋」の分類がない「バイカー」だけの時代
今でこそ、「ヤンキー系ならこのバイク」「走り屋系ならこのバイク」のようなイメージがありますが、当時はこれらの分類もなかったとのこと。バイクに乗る人はみんな「バイカー」でしかなかったそうです。ハーレー乗りはおじさんというイメージがあったそうです笑。
1970年代のバイカーは決して派手ではなかった
私がこれまで憧れてきたバイカーは、バイクそのもの・乗り方など、すべて派手なものでした。
ヤンキー系であれば、見た目を派手にして大きい音を出して乗る。峠を攻める走り屋系なら、アクセルをガッツリまわして膝すりをする。
これこそが私の憧れるかっこいいバイカー。しかし、父親の時代のバイカーはもっと大人しいものだったようです。
「じゃあその時代の人は何を楽しんでたの?」という私の疑問に、次のように答えてくれました。
「膝すりも俺が乗ってた後に流行ったんだよ。1980年代頃のオートバイレースが流行ってから真似し始めたんじゃないかな。俺らの頃はそこまでバイクを横に倒すこともしなかったしね。ツナギとかも着てる奴はいなかったね。本当、ふだん着でラフに乗る感じかな。バイク乗ってることがかっこいいっていうイメージもなかった時代だから、純粋な趣味で乗ってる奴ばっかりだったよ」
当時のバイカーは、私のように「派手な乗り方こそすべて!」ではなく、本当にただただ乗るのが好きだったんですね。
「昔のバイカー」を誤解していたのかもしれない
今回、父親の話を聞いて私が感じたのは「1970年代のバイカー、渋い! 渋すぎる!」でした。
「昔のバイカー=ヤンチャ」と勝手に勘違いしていましたが、決してそうではないんですね。むしろ1970年代のバイカーは、「目立ちたい」「速くなりたい」などの派手な楽しみ方ではなく、本当に純粋に乗ることを楽しんでいたのだと思います。
ヤンチャな話を聞きたかった私にとって少し刺激は少なかったものの、「純粋なバイク愛を持っている当時のバイカー、逆にかっこいいじゃん!」と思いました。
「荒く乗る、派手に乗る、速く乗る」これだけがバイクの魅力ではない。バイクの歴史に触れて、なんだかこれまでよりもさらにバイクを好きになりました。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(名城政也)
二輪免許こそない私だけれど、子供の頃から「特攻の拓」や「バリバリ伝説」のようなバイク漫画がとにかく好きだった。学生時代ともなれば、漫画から読み取れた知識だけで「バリバリ伝説の主人公、巨摩 郡みたいにC[…]
世の中は忘年会シーズン真っ只中。あっちに行ったりこっちに行ったりと、一次会や二次会などで都心を駆け回るビジネスマンをよく見かける。でも、忘年会の会場が駅や会社から離れた場所にあるときは、移動が面倒…。[…]
「いつかは旧車に乗り、自分専用のカスタムをしたい」と、憧れを抱いている筆者。その夢を叶えるためには、ひとつの大きなハードルがあったりする。そもそも、各部の名称や役割についてよくわかっていないのだ。そこ[…]
幼い頃、ファーストフードのドライブスルーを「自転車でもできるのかな!?」と想像したことがある。大人になった今となっては、もうそんなことはしないが、実際はどこまで可能なのだろうか? と考えたときに、ひと[…]
1分でわかる記事ダイジェスト 旧車とネオクラシックの違い、そしてネオクラシックバイクの特長や選ばれる理由を、知り合いのバイク屋に聞いた。 旧車とクラシックバイクの違いは? ほぼ同じ意味合いで、設計が古[…]
最新の関連記事(交通/社会問題)
意外と複雑な一方通行の表示 一方通行規制のおもな目的は、車両の相互通行による複雑で危険な交通状況を単純化し、交通の安全と円滑を図ることにある。とくに、道幅が狭く、歩行者や自転車の通行が多い住宅地や繁華[…]
[1] 7年目の高校生講習も秩父地域からスタート 埼玉県内を6地域に分けて全8回で開催される「令和7年度 高校生の自動二輪車等の安全運転講習」が2025年も始まった。 第1回目の講習会は、6月15日に[…]
レーダーでの速度取締の現場 赤切符と青切符の違いとは? 冬から春にかけては卒業や就職をひかえて新たに運転免許を取得する人が増えてくる時期です。自動車学校・教習所で習ったとおりの運転を心がけているつもり[…]
講習内容を検討する“指導検討委員会” が開催 2025年1月29日、埼玉県知事公館において「令和6年度 高校生の自動二輪車等の交通安全講習に係る指導検討委員会」(以降、指導検討委員会)が開催された。本[…]
なぜ二輪用エアバッグをテスト? 相変わらずバイクの事故は減っていなくて、死亡事故の件数もまだまだ多い。先日、取材に伺った日本二輪車普及安全協会でもそんな話が出て、二輪の死傷者数は減少してはいるものの、[…]
最新の関連記事(ニュース&トピックス)
2025年上半期の国内登録台数は3099台で販売新記録! 発表会の冒頭、BMW株式会社モトラッド・ジェネラルマネージャーの大隈 武氏が壇上に立ち、2025年上半期のビジネス概要/取り組みを発表した。 […]
カワサキ「W230」「メグロS1」の2026年モデルが登場【欧州】 カワサキが欧州で、日本でも人気のレトロバイク「W230」と「メグロS1」の2026年モデルを発表。とくに注目はW230のニューカラー[…]
5月まで数々の噂に揺れたKTMだったが── KTMの親会社であるピエラ・モビリティが戦略的経営再建計画を発表したのは、昨年11月26日のことだった。そして今年5月22日、KTMはインドのバジャジ(Ba[…]
バイク王公式アンバサダーに就任した虹色侍の“ずま” 今年2025年4月から始まったバイク王の新CMで、ハイテンポで歌い上げる「バイクを売るならGO〜バイク王〜」のフレーズに気づいたライダーも多いはず。[…]
スズキ ジクサー150試乗インプレッション 全日本ロードレースを走るレーシングライダー、岡崎静夏選手がスズキ「ジクサー150」の2025年モデルを試乗。彼女は想像以上にスポーティーな乗り味に驚いたと語[…]
人気記事ランキング(全体)
スマホ連携TFTやスマートキー装備のDX ホンダがミラノショーで発表した2025年モデルのPCX125(日本名:PCX)。2023年には欧州のスクーターセグメントでベストセラーになった同車だが、日本で[…]
ニューカラーにスマートフォン接続機能が進化 2026年モデルでパッと目を引くのは、やはりカラー&グラフィックの変更だ。「Ninja ZX-4R SE」は、パールロボティックホワイト×メタリックスパーク[…]
みんながCBを待っている! CB1000Fに続く400ccはあるのかないのか ホンダの名車CB400スーパーフォアが生産終了になって今年ではや3年目。入れ替わるようにカワサキから直列4気筒を搭載する「[…]
意外と複雑な一方通行の表示 一方通行規制のおもな目的は、車両の相互通行による複雑で危険な交通状況を単純化し、交通の安全と円滑を図ることにある。とくに、道幅が狭く、歩行者や自転車の通行が多い住宅地や繁華[…]
スズキ ジクサー150試乗インプレッション 全日本ロードレースを走るレーシングライダー、岡崎静夏選手がスズキ「ジクサー150」の2025年モデルを試乗。彼女は想像以上にスポーティーな乗り味に驚いたと語[…]
最新の投稿記事(全体)
高剛性高精度なアルミビレットパーツ続々登場! 高強度アルミニウム合金素材A6061-T6を高精度切削加工し、鮮やかな発色を維持する独自のアルマイト処理を施すことで変色や腐食を防ぎ、優れた耐摩耗性を発揮[…]
歴史遺産・油冷GSX-Rを完調状態で後世に バイクブーム全盛期だった1980年代から、はや40年以上。とっくに純正パーツの供給も途絶え、そのまま埋もれ去っていく当時の車両は数知れず。その一方で「愛車と[…]
ドロ汚れだけではなく油汚れにも効果てきめん。分解前には周囲の汚れ落としが基本 台風被害による河川越水時にエンジン腰下まで水没したカワサキW1‐SA。その後、放置期間がしばらく続いたが、嫁ぎ先が決まった[…]
「ワインディングの覇者を目指すならCB-1」のキャッチコピーだったら評価は変わった!? カウルを装着したレーサーレプリカが出現する以前、1970年代までのスーパースポーツはカウルのないフォルムが一般的[…]
軽量コンパクトなフルフェイスがカーボンモデルとなってさらに軽く強く! Kabutoのフルフェイスヘルメット『AEROBLADE-6』は、軽量&コンパクトな帽体を空力特性に優れる形状に仕上げたモデルだ。[…]
- 1
- 2