モトコンパクト、イーチョイノリ、Ninja e-1、TMWなどなど…
バイクの未来は電動で楽しくなる!? モビリティショーで見た期待の電動マシン7選

●文:[クリエイターチャンネル] 増谷茂樹
クルマの世界に比べて、電動化では遅れを取っているように見えるバイクですが、ここに来てようやく電動化の波がやってきたようです。先日まで開催されていたJapan Mobility Show 2023の会場には、メーカー各社が電動のマシンを出展。すでに市販化がアナウンスされているモデルもあり、期待感が高まります。会場で目にした期待のモデルをピックアップしてみました。
新時代のモトコンポ!?:Pocket Concept / Motocompacto
ホンダブースで一番目立つところに展示されていたのが、かつてのシティとそれに積み込めるバイクとして考案された「モトコンポを思わせるコンセプトモデル。4輪の方は「SUSTAINA-C Concept(サステナ・シー コンセプト)」、2輪は「Pocket Concept(ポケット コンセプト)」という名称ですが、明らかに1981年に発売されたシティとモトコンポをオマージュしています。
モトコンポは、コンパクトにシティに車載できるというのがコンセプトでしたが、クルマに積み込むことを考えると、ガソリンやオイルの漏れを心配しなくていい電動は向いているといえます。クルマに積んでおいて、いわゆる”ラストワンマイル”の足として使う。そんな乗り物がほしい人にはピッタリのマシンといえそうです。
モトコンポのコンセプトを受け継いでいるといえば、同じくホンダブースにあった「Motocompacto(モトコンパクト)」も同様。こちらはコンセプトモデルではなく、実際に北米で市販されているものです。最高速度が時速15マイル(24.1km/h)、満充電で最大12マイル(19.3km)走れるというスペックで、近距離の足になるという位置付け。価格は995ドル(日本円で約14万6500円)とのことですが、国内でも特定小型原付の枠に適合させて発売してくれたら面白そうですね。
電動はチョイ乗りと相性がいい:e-choinori
スズキのブースにも、電動や水素を活用したマシンが展示されていましたが、個人的に気になったのが「e-choinori(イーチョイノリ)」。同社が2003年に発売したシンプルな原付チョイノリを電動化したもので、パナソニックの電動アシスト自転車のドライブユニットとバッテリーを活用しているのが特徴です。
初代のチョイノリはリアサスのないリジッド構造や、タコメーターどころか燃料計もないシンプルな装備で5万9800円という低価格を実現していたモデルでしたが、愛らしいフェイスデザインもあって記憶に残っている人も多いはず。チェーン駆動を採用していたので、電動アシスト自転車のユニットも活用しやすかったのでしょう。
実は当時もこのチョイノリを電動化するカスタムパーツが存在していて、筆者はそれがほしかったのですが入手できなかった思い出があります。元々航続距離の少なさから”チョイ乗り”専用のバイクとして誕生したものですが、そのコンセプトって考えてみると電動と相性がいい。限られたサイズのバッテリーで、使い勝手を重視するならこういうカタチになるのは合理的かもしれないと感じました。
フルサイズの電動マシンも登場:Ninja e-1 / Ninja 7 Hybrid
電動というと、これまでは近距離のコミューターがほとんどでしたが、バイク好きとして気になるのは”走りが楽しめる”マシンがほしいところ。そんな期待に応えてくれたのがカワサキでした。ブースの最も目立つ場所にフル電動の「Ninja e-1」とハイブリッドの「Ninja 7 Hybrid」を展示。2モデルともフルサイズのスポーツモデルで、国内導入もアナウンスされています。どちらも「eブースト」と呼ばれる加速強化モードを備え、電動ならではの走らせる楽しさが味わえそうです。
Ninja 7 Hybridのエンジンとモーターを合計したシステム最高出力は69PSで車重は227kg
Ninja 7 Hybridに搭載されるのは2輪車では世界初のストロングハイブリッドシステム。これまでのハイブリッドバイクは、マイルドハイブリッドと呼ばれるACGスターターが駆動用モーターを兼ねる仕組みでしたが、このマシンではモーターのみで走行する「EV」モードも備えています。搭載されるエンジンは451ccの水冷並列2気筒で、モーターの動力をフルに活用するeブーストを使用するとリッターマシン並みの加速力だというから楽しみです。
これまでの国産電動バイクにはなかった本格的なスポーツマシンといえそう
Ninja e-1の最高出力は12PS。電動バイクは定格出力でガソリン車でいう排気量区分がされますが、おそらく日本国内では原付二種に該当する値とされるでしょう。車重は140kg、最大トルクは40Nmと400ccクラス並みなので、ミドルクラスに匹敵するような加速が楽しめそうです。価格や航続距離などはアナウンスされていませんが、電動でもスポーツライディングが楽しめるマシンとして個人的にはかなり期待しています。
カスタムマシンが示す電動マシンの可能性:E-FV / TMW
ヤマハは2002年に電動の「Passol」を発売するなど、早くから電動バイクに取り組んできたメーカー。今回のショーでも3輪EV「TRICERA(トライセラ)」を出展したり、壇上では電動のトライアルマシン「TY-E」を使ったパフォーマンスを行っていました。
オーナーを認識して自立する「MOTOROiD2(モトロイド ツー)」なども展示されていましたが、筆者が気になったのは参考出展されていた「E-FV」と「TMW」という2台。自作のカスタムマシンっぽい雰囲気がただよっていました。
E-FVは、かつて販売されていた「TZM50R」の車体に、TY-Eの電動ユニットを搭載したミニバイクサイズの電動マシン。製作したのは若手エンジニアの有志とのことで、手作り感のある仕上がりです。モーターやバッテリーなどは割と簡単に収まったそうですが、ガソリンタンクがなくなるためニーグリップ用のパーツを作ったりなどライディングポジションには試行錯誤の跡が感じられます。
ナンバーが取得されていないため、ミニバイクコースなどで走行させたようですが、電動化したことで変速操作が不要になり、よりコーナーリングに集中できて楽しいとか。ラップタイムで比べてもベースのTZM50Rよりも速くなっているというから乗ってみたくなります。
もう1台のTMWは、「TW200」をベースに3輪スクーター「トリシティ300」のフロント周りを移植し、LMW化されています。しかも、フロントの2輪にはそれぞれインホイールモーターが組み込まれていて、エンジン駆動と電動を組み合わせた変則的なハイブリッドマシンとなっているのが面白いところ。3輪全てが駆動し、しかもフロントにも太いタイヤを履かせているので走破性はとても高く、滑りやすい濡れた苔の上を走ってもまったくハンドルを取られることなく走破できたとか。オフロード向けのLMWはまだリリースされていませんが、このかたちで登場してくれればと思わずにいられません。
電動バイクというと、これまで国産メーカーでラインナップされていたのが、実用性重視のコミューターが主流だったこともあって、”面白くない”というイメージを持っている人も少なくないと思いますが、実際に乗ってみるとトルクの変動がなく、右手の動きでリニアに駆動力を取り出せる電動バイクは、実はエンジン車とは異なる操る楽しさがあったりします。そういう楽しさやメリットが感じられる電動モデルが増えると、バイクはさらに面白くなると思っています。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(増谷茂樹)
昨年の道交法改正によって生まれた新たなカテゴリーが特定小型原動機付自転車(以下、特定小型原付)。最高速度20km/h以下の電動モビリティを対象としたカテゴリーで、年齢が満16歳以上であれば、免許不要で[…]
クルマと比べると遅れはあるものの、徐々に電動マシンも姿を現してきているバイク市場。ですが、同じ2輪でも、電動化がクルマよりもはるかに進んでいる領域があります。それが電動アシスト自転車。 2022年の電[…]
ホンダは先日、2030年までに電動2輪車に合計5000億円を投資することを発表。同年までに30機種の電動モデルを投入することも合わせてアナウンスしました。ホンダはこれまで、電動バイクはリース販売という[…]
最新の関連記事(新型EV/電動バイク)
ついに見つけた、生存者……! 箱根、海ほたる、日光いろは坂など、ツーリングの名所を電動化したセローで2人の少女が巡る。誰もいない、ひどく荒れ果てた終末世界をバイクでトコトコ駆け回るツーリングコミック『[…]
「世界も滅んだし、セローで旅に出よう」…225改の電動セローで“終末ツーリング” 終末世界をトコトコと。箱根の山から都内へと抜け、人々の姿がなくなった都市を散策する。抜群の機動性を誇り、今なお名車と呼[…]
免許返納後もアクティブに楽しむための小型低速EV パワーユニットに自社の電動モーターを、バッテリーにホンダの「モバイルパワーパックe:」を採用した汎用EVプラットフォームをヤマハが初公開したのは、20[…]
根強い人気のズーマー 2000年代、若者のライフスタイルに合ったバイクを生み出すべく始まった、ホンダの『Nプロジェクト』。そんなプロジェクトから生まれた一台であるズーマーは、スクーターながら、パイプフ[…]
グローバルサイトでは「e-アドレス」「アドレス125」と表記! スズキが新型バッテリーEV(BEV)スクーター「e-ACCESS(e-アクセス)」、新型スクーター「ACCESS(アクセス)」、バイオエ[…]
最新の関連記事(カワサキ [KAWASAKI])
ラインナップ豊富な新生KLX230シリーズ カワサキは、KLX230シリーズをモデルチェンジするとともに、KLX230Sとしては3年ぶり(その他の無印やSMは2~5年ぶり)に復活させた。 KLX230[…]
シェルパの名を復活させたブランニューモデル カワサキは、KLX230シリーズのモデルチェンジ時点で、トレッキングモデル「KLX230シェルパ」をラインナップに加えた。シェルパの名を冠したバイクとしては[…]
「good TIMES COLLECTION」が手がけるオリジナルジャケットが対象 全国に展開するカワサキプラザでは、モーターサイクルライフの新たな提案として、ファッション性/耐久性/機能性/遊び心を[…]
待望のビモータ第2弾がいよいよ上陸、走行性能を極めたハイパーネイキッドを見よ! カワサキとビモータがコンビを組んだのは2019年。KB4を皮切りに現在では6車種をラインアップしているが、カワサキモータ[…]
2025新型「KLX230」「KLX230 S」について知るなら… KLX230シリーズの振り返りや、無印/Sについてまずおさらいしたいなら、こちらの記事をチェック。 カワサキがKLX230シリーズを[…]
人気記事ランキング(全体)
ナンバー登録して公道を走れる2スト! 日本では20年以上前に絶滅してしまった公道用2ストローク車。それが令和の今でも新車で買える…と聞けば、ゾワゾワするマニアの方も多いのではないか。その名は「ランゲン[…]
2.5次元アイドルがアンバサダー!? モーターサイクルショー開催概要 東京モーターサイクルショーの共通するメインテーマは、「いいね、バイク」。大阪のサブテーマには「バイク&ピース」、東京には「バイクっ[…]
15番手からスタートして8位でフィニッシュした小椋藍 モナコでロリス(カピロッシ)と食事をしていたら、小椋藍くんの話題になりました。「彼は本当にすごいライダーだね!」と、ロリスは大絶賛。「ダイジロウ・[…]
まず車間が変わることを理解しておこう! ツーリングでキャリアのある、上手なライダーの後ろをついてゆくのが上達への近道。ビギナーはひとりだと、カーブでどのくらい減速をすれば良いかなど判断ができない。そう[…]
その名も「V3R」と「V3R E-COMPRESSOR」だ! ホンダが全く新しい4ストロークV型3気筒エンジンのコンセプトモデルを公開したのは、2024年秋のEICMA(ミラノショー)でのこと。かつて[…]
最新の投稿記事(全体)
【岡崎静夏 おかざき・しずか】ルックスはキュートなバイク女子。走りは全日本ロードレース選手権J-GP3クラスでシリーズランキング4位を獲得する実力!! E-クラッチがもたらす超スムーズな変速に感動 今[…]
QBRICK(キューブリック):据え置き/持ち運びどちらもOK。多彩なボックスを連結して自分仕様の収納ができる 共通のジョイント機構により、多様な形状や容量のボックスを自由に連結、分割できるQBRIC[…]
新5色ラインナップとなった2022年モデル 2022年モデルが発売されたのは、2022年6月23日のこと。2021年のフルモデルチェンジの際には、新設計の水冷エンジンが4バルブの「eSP+(イーエスピ[…]
15番手からスタートして8位でフィニッシュした小椋藍 モナコでロリス(カピロッシ)と食事をしていたら、小椋藍くんの話題になりました。「彼は本当にすごいライダーだね!」と、ロリスは大絶賛。「ダイジロウ・[…]
筑波サーキット向けにカスタム中 「X350ウィズハーレー編集部号」は、2024年12月現在、サーキット、とくに筑波サーキットでタイムを削るためのカスタムを進めている。過去、全日本選手権に出場し、筑波サ[…]
- 1
- 2