サビまみれのネジ穴を修復する方法!【見ないふりはトラブルのもと】

  • [CREATOR POST]DIY道楽テツ

ボルトを締めようと思ったら、ネジ穴がサビてしまっていた…という経験はないだろうか? そんなとき、気付かないふりをしてそのままボルトをねじ込んでしまうのはNG。 ボルトを痛めるだけでなく、肝心の取り付けパーツの方が使用できなくなってしまうこともある。本記事では、バイクメンテナンス系ユーチューバー・DIY道楽テツ氏が、ネジ穴を切る道具”タップ”を用いてサビたネジ穴を修復する方法を解説する。


●文:[クリエイターチャンネル]DIY道楽テツ

ネジ穴のサビ、見なかったふりはトラブルのもとですよ??

バイクや家具を長期間放置していたらネジ穴がサビていた…。古いバイクに乗っていたり、昔の家具を手入れしようとしたことがある人なら、そんな経験があるのではないでしょうか? 穴が塞がってるわけじゃないし、強引に押し込めば回らないことはないから、そのまま行っちゃえ~! …なぁんて、見なかったふりをするのはNG。ちょっと危険な行動です。

ネジは本来、らせん状の溝がスムーズに噛み合うことでそのパフォーマンスを発揮できるようにできています。そこにサビなどの異物が入ると規定トルクで締め付けることができず、うまく取り付けられなかったり、振動などで外れやすくなってしまうこともあります。もちろん締めこんだネジ山も痛めてしまいますし、場合によってはネジ穴のほうが壊れて、取り付けたいパーツそのものが使えなくなる可能性も。ましてやそれがフレームだった場合、ネジ穴が使えなくなるなんて…。想像したくないですよね。

サビが発生して、ネジの溝が埋もれています…。ねじ込んだボルトを痛める危険なネジ穴です。要注意!

そこで登場する工具箱の守り神「タップ&ダイスセット」!!

そんなときにオススメしたいツールがこちら、タップ&ダイスのセットです。”タップ”は主に傷がついたり潰れてしまったネジ穴やナットの修復が行える工具で、一方の”ダイス”はボルトなどのネジ”山”の方を直す道具です。今回はこのタップを使って、サビが発生してしまったネジ穴の修正をやってみましょう。

筆者愛用のタップ&ダイスのセット。ところどころ入れ替えて今日に至ってます。わりと普通のグレードですが、いい仕事してくれてます!

こちらがタップとハンドル。ネジ穴を切っていくための道具です。

タップを使うにはちょっとした慣れとコツが必要になります。というのもタップは本来、溝のない穴を切り出してネジ穴を作る(ネジを切る)のに使う道具です。それだけ切れ味も鋭く切削力が高いので、ひとつ間違えれば全く違うネジ穴を作ってしまうだけの切れ味を持っています。なので使う前に、修正したいネジ穴と、使うタップのサイズとピッチ(ネジ山の間隔)が合っているかどうかの確認が必要です。ピッチゲージで測定するのが確実ですが、ボルトとタップを比べてみてもチェックできます。

ピッチの計測に使うピッチゲージを用いるのが一番確実。タップとボルト、双方のピッチが合致してるか確認しましょう。

手元にピッチゲージがなくても、タップとボルトを直に当ててみればチェック可能。とはいえ見た目だけだとかなり微妙な例(ミリとインチの違いなど)もあるので、ぜひとも確実に合わせておきたいところ。

まっすぐ、しっかり噛み合わせながらタップをねじ込みます

ネジ穴とタップのピッチが合っていることが確認できたら、さっそく溝を切り込んでいきましょう。気をつけなくちゃイケナイのは、まっすぐねじ込んでいくことと、既存のネジ穴にしっかり噛み合わせること。特に斜めに入れてしまうと斜めにネジ穴が切れてしまうので、穴に対してしっかり垂直に立てた上で、しっかり押し付けてゆっくりゆっくり感触を感じながら回していきます。

しっかり溝に噛み合えば回すだけでグイグイ入って行きますが、ここでもうひとつ注意点。ネジ山を切ったり修正するときには「削りカス」が出てきます。もともとタップはこうしたカスを排出しやすい構造になっていますが、作業中に溜まりすぎるとタップ本体に負荷がかかり、場合によっては折れてしまうこともあります。こまめに削りカスを排出するために、「3切り込んだら2戻す」というように、行っては戻るを繰り返してください。

今回の作業では、ネジの深さも浅く&貫通型なので、それほど神経質になる必要はありません。しかし、例えばネジ穴が行き止まりの構造で、奥にカスが溜まってしまうような形状の時は気をつけましょう。ちょっとでも抵抗が増したなと思ったら一度タップを全部抜いて、高圧エアーなどを使って内部の削りカスを全て排出するようにすると、タップが折れる危険性が減ります。

とにかく垂直に立てること。不安だったら、左右だけでなく上下からも目視でチェック。誰かにチェックしてもらえば完璧。3進んだら、2戻る感じで切っていきます。アノ歌だけでなく、タップ立てでも大切なのです。

ちなみに、今回の作業ではサビの進行がかなり激しかったようで、面白いように茶色い粉が出てきました。いや~、危なかった。このままボルトを締めていたらどうなっていたのかと思うと、ちょっとゾッとしますね(笑)。

そんなわけで、ネジ穴が復活しました! 溝が切り込まれているのが見てわかります。

潤滑剤は使う? 使わない?

タップでネジ穴を切るときは摩擦熱が発生したり、思わぬ負荷が掛かったりもするため、専用の潤滑剤やタッピングペーストと一緒に使うのが一般的です。結論から言いますと、今回のような場合もそれが理想ではあります。

ただし、潤滑剤などを併用した場合はネジの部分に湿り気を帯びるため、細かいカスが奥に付着して残りやすいというデメリットも。高圧エアーやパーツクリーナーなどが整っている環境では問題にはならないのですが、自分でメンテナンスしたりDIYをするときは、必ずしもそうした器具があるわけではありませんよね。それならドライ状態で作業して、最後に口で思いっきり息を吹き込んだ方がかえって削りカスを吹き飛ばすことができるのです。

電動工具などを使って連続使用するわけでもなければ、タップもそう簡単に折れるものではありませんが、そこらへんは自己責任で対応をお願いします。

タップとダイスはセット持ちがオススメ!

さて、今回使用したタップとダイスのセット。本記事ではタップだけを使ってダイスは一切登場しませんでしたが、もし購入するのであれば、ぜひとも「タップとダイスのセット購入」をおすすめいたします。

今回のようにネジ穴がサビてしまっていたり、使おうと思ったボルトが潰れていたり、ボルト/ナット/ネジ穴のトラブルは得てして突然発生します。事態が大きくなるのを未然に防ぐ…という意味でも、工具箱にタップとダイスのセットはあって損はありません! 最初から高価なものを買う必要はないので、使ってくうちに一番使うサイズやこだわりたいサイズなどをグレードアップしていけばいいと思います。私のタップ&ダイスのセットももう何十年前に買ったかわかりませんが、これまで何度助けられてきたか、数え切れません(笑)。

皆様の参考になれば、とても嬉しく思います。今回もご視聴ありがとうございました~!

よく使うM6とM8には、ちょっと高級品が入ってます(笑)。

動画解説はこちら↓

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