なんと…「94年前に誕生」ハーレーの三輪モデル。今の時代にはない剥き出しの機能美が印象的! 警察車両として重宝されたユニークな特性を解説。

なんと…「94年前に誕生」ハーレーの三輪モデル。今の時代にはない剥き出しの機能美が印象的! 警察車両として重宝されたユニークな特性を解説。

ハーレーダビッドソンは、その黎明期から警察の公式車両(ポリスバイク)として全米で重用されてきたことご存じの通りです。ハイウェイパトロールを引き合いに出すまでもなく、タフで信頼性の高いハーレーは、法執行機関にとって最良の道具となっているのです。そんなアメリカ警察の歴史において、特異な進化を遂げたモデルが、今回紹介する3輪モデル「サービカー(Servi-Car)」。なかでも1949年式のポリス仕様は、戦後アメリカの都市風景を支えた質実剛健な1台。現代のトライクとは一線を画す、その冷徹なまでの実用主義とメカニズムをご紹介しましょう。


●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotherbys

道具としての高い完成度により、警察車両として採用された

世界恐慌下の1932年に誕生したこのモデルは、本来、バイク乗り向けではなく自動車ディーラーや整備工場の「出張メンテナンス(サービス)用車両」として開発されました。これこそ「サービカー」という名の由来。

当時は、整備士がこれでお客の元へ向かい、到着後は後部を乗用車のリアバンパーに特殊な牽引バーでドッキング。そのまま客のクルマを運転して工場へ持ち帰る、という運用を想定していました。そのため、3輪ならではの抜群の低速安定性と、工具を積載できる頑丈なトランクが与えられたのです。

この「駐停車しやすく、荷物が積め、転倒しない」という道具としての完成度に目をつけたのが警察組織でした。出張サービス用の3輪車は、瞬く間にアメリカの街角をパトロールするポリスカーへと採用されていきます。

3輪のサービカーは1932年に発売され、ほどなく警察が導入。こちらは1949年モデルであり、世界最古のハーレーディーラーが納入した記録が残っています。

治安維持のために最適化されたサービスカー

心臓部は、45立方インチ(約750cc)のサイドバルブVツインエンジン。最高出力を競うユニットではなく、何より堅牢であること、そして冷却フィンを大きく設計している点が特徴です。夏の炎天下でノロノロ運転やアイドリングを続けても、オーバーヒートしづらい設計で、働くバイクとしての機能美すら感じられるもの。

49年当時はすでに初のOHV(ナックルヘッド)が発売されていたものの、信頼性を重視して、1929年デビューの750ccサイドバルブエンジンを搭載。

フロントにはビンテージバイクでおなじみの「スプリンガーフォーク」を装備。そして興味深いのが、左右リアホイールのトレッドが42インチ(約106cm)に設定されているところかと。これは当時の一般的な乗用車と同じ幅で、未舗装路や雪道が多かった時代、先行するクルマが作った“轍(わだち)”にぴったりはめてスムーズに走破するための、秀逸なアイデアとされました。

リヤトレッドを一般的なクルマと等しく42インチにして、積雪や悪路で轍を利用した走行ができるという実にスマートなアイデアを採用。

ポリス仕様のサービカーでは、スロットルグリップが左側に装備されています。すなわち、巡査たちはこれにまたがり、速度を微調整しながら、右手に持った長いチョーク棒で駐車車両のタイヤにマーク(駐車違反の取り締まり)をつけて回ったためです。あるいは、右手で素早く拳銃を抜くためとも言われており、それにともなってハンドシフトのレバーも右側に移設されました。また、サドル後方の大型スチールボックスには、違反切符や無線機を収納。フロントの赤色灯と機械式サイレンを含め、すべてが都市の治安維持という目的のために最適化されたガジェットです。

アクセル操作が左に移設されたことから、シフトレバーは右に配置。現代の感覚からすると、運転には慣れが必要かもしれません。

リヤの大きなボックスは、サービカーが出張メンテナンス車両からスタートしたことが伺えます。

今なお、ビンテージ市場で高値を維持

1973年まで生産されたサービカーは、今なおビンテージ市場で高い価値を維持している模様。現代の最新バイクのような絶対的なスピードも、バンク角もありません。が、手動の進角レバーを調整し、キックペダルを踏み抜いて目覚めさせ、ハンドシフトをガチャンと入れて走り出す――その一連の儀式と、サイドバルブが奏でるのどかな鼓動には、現代の乗り物が失った「濃厚な機械との対話」が凝縮されているはず。

警察車両とはいえ、ディテールはハーレーダビッドソンらしいデコレーションが施され、独特な雰囲気を醸しています。

こうしたアナクロな魅力、そして警察車両として実際に使い込まれたというポイントから、オークションでは5万4000ドル(約830万円)という高値で落札されています。効率や速さの追求から敢えて距離を置いたとき、この1949年式ポリスサービカーが持つ剥き出しの機能美は、メカニズムの本質を私たちに教えてくれるのではないでしょうか。

警察車両といえども、タンクには当時のハイドラグライドなどと同じく、ファイヤーボールと呼ばれるエンブレムを採用。

当時のパンヘッドにも共通するブルーフェイスのメーターは120mphまであるものの、実際は80mphも出なかったとか。

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