
2026年のMotoGPで圧倒的な強さを発揮しているアプリリア。そんな同社のミドルレンジを支えるフルカウルスポーツが、2020年末から発売が始まったRS660だ。誕生から5年半が経過した現在でも、ライバル勢とは異なる姿勢で運動性と利便性を追求したこのモデルは、唯一無二の魅力を維持していた。
●文:中村友彦 ●写真:富樫秀明
峠道が最高に楽しい一方で日常の足として普通に使える
最近の僕はミドルクラスのフルカウルスポーツを試乗すると、他機種とどこまで基本設計・部品を共有するか、最新の電子デバイスをどのレベルで投入するか、日常域の扱いやすさとスポーツライディングの楽しさをどのくらいのサジ加減にするか、などという感じでメーカーが迷っている?……と、感じることが少なくない。そんな中で唯一、迷いを感じない異例の存在が、アプリリアが2020年末から販売を開始したRS660シリーズだ。
何と言ってもこのシリーズは、アルミフレームや並列2気筒エンジンを含めたほとんどの部品が専用設計で(ただし2022年には、日常域を重視した兄弟車のトゥオーノ660と、アドベンチャーツアラーとして車体関連部品を新規開発したトゥアレグ660が登場)、兄貴分に当たるRSV4と同様の多種多様な最先端電子デバイスを採用し、利便性と運動性を絶妙の塩梅で両立しているのだから。
そんなRS660を久しぶりに走らせて、僕が最初に嬉しくなったのは、峠道での爽快感と高揚感だった。クラス最軽量となる183kg(今回試乗したエクストリーマは180kg)の車重や、クラス最短の1370mmのホイールベースを考えれば、右へ左へという向き変えが素早く行えるのは当然なのだが、このモデルは電子デバイスによるフォローを信頼して思い切った操作ができるし、スイングアームピボットをエンジン後部に設けた効果なのか、コーナーの立ち上がりでスロットルを開けた際のトラクションが非常にわかりやすい。
さらに言うなら、最高出力が100ps/10500rpm、最大トルクが6,83kg-m/8500rpmのエンジンは、わずか4000rpmで最大トルクの80%を発揮するので、回さなくても十分に速いし、その一方で慣性トルクを低減する270度位相クランクのおかげで、本領発揮となる7000rpm以上も臆することなく使える。
いずれにしても、峠道でスポーツライディングに没頭できるという面で、RS660に勝るモデルはなかなかないだろう。
もっとも、RS660の魅力はそれだけではない。RSV4に通じるアグレッシブなルックスからは想像しづらいけれど、このモデルの乗車姿勢はあまりスパルタンではなく(セパレートハンドルの設置位置はトップブリッジの上で、シート~ステップ間には適度なゆとりがある)、前後サスペションはサーキット指向ではないから、ライディングモードを日常域重視のCommuteに設定すれば、市街地の移動やツーリングにも気軽に使えるのだ。
ではRS660がどんな人に向いているのかと言うと、僕のイメージでは、スーパースポーツに疲れや難しさを感じているベテランや、400ccフルカウルスポーツからのステップアップを考えている若いライダー。と言っても、現在のミドルクラスにはそういうライダーの候補なりそうなモデルが数多く存在するのだが、峠道でのスポーツライディングを中心に据えつつ、最先端の電子デバイスの美点を享受しながら、さまざまな用途に愛車を使いたいライダーにとって、RS660シリーズは最良の選択になり得ると思う。
ちなみにこの原稿を書いている2026年5月現在、ピアッジオグループジャパンでは2025年型を対象としたウルトラクリアランスキャンペーンを開催中で、RS660のスタンダードは27万5000円オフの132万円、エクストリーマは38万5000円オフの143万円で販売されている。すでに在庫は残り少ないようだから、当原稿を読んでRS660シリーズに興味を抱いたライダーは、なるべく早めに最寄りのディーラーに出かけたほうがいいだろう。
RS660 の特別仕様となるエクストリーマは、SC プロジェクト製フルエキゾーストや、カーボン製フロントフェンダー/アンダーカウルを装備。重量はスタンダードより3kg 軽い180kg。
[RIDING POSITION]
ライディングポジションは、スーパースポーツとスポーツツアラーの中間より、ちょっとスーパースポーツ寄りという印象。820mmというシート高は、近年のミドルフルカウルスポーツの平均的な数値で、両足が接地するためには165cm以上の身長が必要(筆者は182cm)、とはいえ、車体が軽くて小さくてスリムなので、小柄なライダーでも極端なハードルの高さは感じないようだ。
【主要諸元】
- 全長:1995mm 全幅:745mm 全高:─ 軸距:1370mm
- シート高:820mm
- 車重:180kg
- エンジン:水冷4スト並列2気筒DOHC4バルブ659cc
- 最高出力:100hp/10500rpm
- 最大トルク:6.83kg-m/8500rpm
- 変速機:6 段
- 燃料タンク容量:15ℓ
- タイヤサイズ:F=120/70ZR17、R=180/55ZR17
- カラー:チェッカーフラッグ
- 価格:181万5000円(特別価格:143万円)
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