
カスタムカーの祭典、東京オートサロン2026。そこには、既存の常識を打ち破る「怪物」たちが集結する。中でもひときわ異彩を放っていたのが、サーキット&ドリームス CLR(Circuit & Dreams CLR)が出展した「ツインエンジンカー 双竜 第2形態」だ。1990年代に登場したトヨタ・セラをベースに、日産とホンダのエンジンを前後1基ずつ搭載するというチャレンジングすぎる一台の全貌に迫る。
●文/写真:石川順一(ヤングマシン編集部)
「セラ」ベースにメーカーの境界を超えたコラボを実現
「双竜 第2形態」のベース車両は、トヨタが1992年に発表したEXY10型「セラ」である。この車の最大の特徴はなんと言っても、当時大きな話題を呼んだ跳ね上げ式のバタフライドアだ。製作者によれば、このドアの機構こそがこの車両をベースに選んだ理由であり、そのシルエットを活かしながら独自の造形を加えていったという。
しかし、その中身はもはや別物だ。フロントには日産のSR20、リアにはホンダのK20Aという、メーカーの垣根を超えた2基のパワーユニットを搭載している。これらはただ載せられているだけではない。フロントエンジンが前輪を、リアエンジンが後輪をそれぞれ独立して駆動させる仕組みとなっており、前後のエンジンが協調してひとつの車体を動かすという、極めて複雑な構成をとっているのだ。
1050馬力を超える圧倒的なスペックと個性的なメカニズム
スペックシートによれば、排気量は2基合計で4000cc(2000cc×2)に達する。各エンジンにはTD07-25Gタービンが装着され、その最高出力は1050馬力(5500rpm)という驚異的な数値を実現。吸気系には1000ccインジェクターを8本備え、制御には2機のMOTECを使用。エンジンの性格を揃えるため、ピストンなども海外から輸入した過給に耐えうるアフターパーツへと変更されている。
とくに注目すべきは、異なるメーカーのエンジンをどう同調させているかという点だ。製作者は「同調はミッションだけ」と語る。驚くべきことに、フロントのSR20にもホンダK20A用のトランスミッションを物理的に連結し、1本のシフトレバーで前後のミッションを同時に操作できるアナログなシステムを構築。電子制御に頼りすぎず、ハードウェアの工夫で解決する手法には、古き良きチューナーの魂を感じずにはいられない。
3Dプリンターが形にした「描いた夢」の具現化
外装の製作プロセスは現代的かつ野心的だ。大型の3Dプリンターを駆使し、カーボンファイバー材を用いたオリジナルボディを制作。思い描いた絵をそのまま形にしたというその姿は、かつてのセラの面影はほぼなく、まるでありあわせの鉄板を貼り付けたかのような、無骨な力強さを放っている。
テールランプ周辺のデザインはまだダミーとのことで、セラのテールランプを引き伸ばしたシールを張り込んでいた。内装にはJURAN製シートやCLRオリジナルのステアリング、DEFI製メーターなどが並び、戦闘機のようなコックピットがドライバーのやる気を刺激する。
製作期間1ヶ月半、不眠不休で挑んだCLRの挑戦
この規格外のモンスターマシンの製作期間はなんと、わずか1ヶ月半だという。もちろん作業はほぼ不眠不休で実施。「寿命が10年縮まった」と語るほどの過酷なスケジュールの中で完成に至った。
当初は配線トラブルなどに悩まされ、車が動かないという窮地もあったが、それらを乗り越えてこの形に結実させたという。走行性能の相乗効果については、独立した駆動系ゆえに未知数な部分も多いが、異なるエンジンがひとつの駆動系として機能すること、それ自体がこのマシンの存在意義であり、最大の売りと言えるだろう。
公道走行不可という割り切った仕様でありながら、CLRの技術力と情熱が凝縮された「双竜 第2形態」は、古き良きカスタムカー文化を感じさせてくれる一台だ。
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