最新機能がテンコ盛り! カワサキ「Z7ハイブリッド」試乗インプレッション

最新機能がテンコ盛り! カワサキ「Z7ハイブリッド」試乗インプレッション

自然吸気にスーパーチャージャー、モーターOnlyのEVに、量産バイク初となる今回のストロングハイブリッド。しかもオートマ技術も投入。他社に先駆け全方位スキなく固めていくカワサキの意気込みを、丸山浩は大いに評価した!


●文:丸山 浩(ヤングマシン編集部) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:カワサキモータースジャパン

本当に初速でZX-10Rを上回ると感じる加速っぷり

エンジンにプラスしてモーターの力で走るハイブリッド(HV)モード、モーターのみで走るEVモード、それに加えて自動クラッチにATミッションと、現在における新技術が全部詰まったようなバイクだ。

走り出すとHVではパラツインのパルス感と同時にキュイーンとモーターの音が響き、動力を補助しているのが分かる。HVにはAT/MTが選べるECOモードと、MTのみでパワーも上がるSPORTモードの2つを搭載。エンジン単体では58ps&4.4㎏-mと451ccとしては大したことはないのだが、そこにモーターの12psと3.7㎏-mもの大トルクが加わるとかなり強烈だ。

特に最大トルクが2800rpmと低回転で出るため、「SPORTモードでe︲ブーストを使うとZX-10Rより発進加速を上回る」という売り文句がまんざらではないと思える凄さ。峠でも立ち上がりが速いし、旋回中にe︲ブーストを使った際にはいきなりドッカーンと加速して、思わずスーパーチャージャーが付いているのかと錯覚してしまう。

一方、ECOモードは普段走り向け。ATでは停止するたびにアイドリングストップし、スロットルを捻るとモーターのみでスタートした後、エンジンが再び動き出す独特の動きを見せる。すぐにエンジンが動き出すのでハイブリッド感は薄いのだが、ゆっくり開けると18km/hくらいまではモーターのみで走り続けるのが分かった。

ちなみにATはクラッチの繋がりやチェンジショックの少なさに優れ、ホンダのEクラッチやヤマハのY-AMTのようなシステム名は付けられていないものの完成度はかなり高い。本来ならここだけでもセールスポイントと言えるデキだ。

モーターのみのEVモードも試してみたが高速道路での使用は無理だ。最高速は65km/hと速度不足となる領域で、バッテリーが無くなるのも早い。しかも、バッテリー切れからHVモードにしようとしてもすぐには切り替わらない。一旦バイクを停めてメインスイッチを入れ直さないとHVモードに切り替わらないのだ。したがって高速道路やすぐに停車できない場所でEVモードを使うのは避けるべし。このモードは街中の短距離移動向けと考えておこう。

SPORT-HV、ECO-HV、EVの3つのドライブモードに加え、停車時の取り回しをサポートする後進付きのWALKモードを装備。SPORTモードでは右手元のボタンを押すことで全域での出力が5秒間最大限となるe-Boost機能が作動する。ミッションは電子制御6速でクラッチもレバー無しの自動制御。SPORTではMTのみ、ECOではAT/MT切替可、EVではATのみとなる。

小回りではクラッチレバーが無いので一抹の不安が残ったが、前後進ができるウォークモードを使えば無理して小旋回をする必要がない。これは有利な点だ。

気が付けばバイクを乗りこなすというより、各機能の動きを発見して攻略していくゲームのような面白さを感じていた。まだ改善する余地はあちこちにあり、燃費も250ccクラス程度と驚くほどではなかったが、新しモノ好きが触れておくべきマシンであることは確か。個人的には、相当に面白いマシンだと思った。

ライポジはミドル排気量帯のネイキッドとして標準的。足も両足の腹までしっかり地面に着く。車重はリッタークラス並みの226kgで226kgで車体を傾けるとズッシリくる。【身長168cm/体重61kg】

KAWASAKI Z7 Hybrid

主要諸元■全長2145 全幅805 全高1080 軸距1535 シート高795(各mm) 車重226kg(装備)■エンジン=水冷4スト並列2気筒DOHC4バルブ 451cc 最高出力58ps/10500rpm 最大トルク4.4㎏-m/7500rpm モーター=水冷交流同期電動機 モーター最高出力12ps/2600-4000rpm モーター最大トルク3.7kg-m/0-2400rpm 変速機6段リターン(電子制御式マニュアルモード付オートマチック) 燃料タンク容量14L■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=160/60ZR17 ●価格:184万8000円 ●色:銀×ライムグリーン

市販車世界初のストロングハイブリッドバイクとしてフルカウル版のNinja7 Hybridと共に登場。451ccの並列2気筒+モーターで駆動する。

最新Zシリーズの“Sugomi”デザインでまとめられたシルエット。冷却ダクトの関係で下まわりに若干のボリューム感があるものの、全体的な車格はミドルクラス帯の範疇に収まっている。

LEDのヘッドライトは、上部2つのロービームと中央1つのハイビームで構成。その上にはカワサキのリバーマークが与えられている。

全モードでクラッチは自動となり、レバーは存在しない。クラッチ本体はホンダE-クラッチやヤマハY-AMTと異なり油圧式を採用している。

「6速マニュアルモード付オートマチックトランスミッション」とシンプル名称のATは、MTも左手元ボタンで操作。チェンジペダルは無い。

車体下部のエアダクトは右側がシート下にあるバッテリーに、左側がISG(スターター兼ジェネレーター)に導かれてそれぞれの冷却を行う。

駆動モーターは水冷式となっており、ラジエーターはエンジンと駆動モーター、それぞれを別に冷却するために2個装備している。

WMTC値の公称燃費は23.6km/L(SPORT-HVモード)で、250ccクラスと同等の燃費性能。タンク容量は14Lで満タンだと約330km走行可能だ。

シートはセパレートタイプでライダー側は前後を長めとして着座位置の自由度を向上。シート高は795㎜で良好な足着き性を実現した。

ライダー側のシート下にリチウムイオンバッテリーを搭載。パッセンジャー側には標準装備となるETC2.0車載器が収められている。

足まわりはオーソドックスで、フロントはφ41mm正立フォークにピンスライド2ポッドキャリパー+φ300mmディスクをダブルで装着。

リヤはリンク式のニューユニトラックサス。プリロード調整機構が備わっており、2人乗りや積載荷物に合わせたセッティングが可能だ。

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