
ニッポンがもっとも熱かった“昭和”という時代。奇跡の復興を遂げつつある国で陣頭指揮を取っていたのは「命がけ」という言葉の意味をリアルに知る男たちだった。彼らの新たな戦いはやがて、日本を世界一の産業国へと導いていく。その熱き魂が生み出した名機たちに、いま一度触れてみよう。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:山内潤也/YM ARCHVES ●取材協力:ZEPPAN UEMATSU
ライバルとは一線を画す独自の手法で効率を追求
妥協の気配が見当たらない。GS400のメカニズムを知れば、誰もがそう感じるだろう。
フレームはGS750と同様の本格的なダブルクレードルだし、気筒数が少ないことと振動緩和用のバランサーを設置したこと、ミッション段数が+1の6速になっていることを除けば、アウターシム式のDOHC2バルブヘッド・組み立て式クランク+コンロッド・ギヤ式1次減速といった、エンジンの基本構造もGS750とまったく同じ。
もっともそういった共通点は、生産効率を追求した結果なのかもしれないが、同時代に他の国産3社メーカー販売していた、4スト360/400ccツインでは如実だったコストダウンの痕跡が、GS400にはほとんどなかったのである。
なお’70年代以前の日本製並列2気筒は、クランクの位相角が360度なら実用性重視、180度ならスポーツ性重視と言われていたものの、スズキは振動緩和用バランサーが1本で済むという理由で、GS400では180度を選択。
とはいえ、初めて手がける4スト不等間隔爆発の調教には、予想以上の手間がかかったようで、試作エンジンの検討には半年以上が費やされることになった。
ちなみに、GS750のキャブレターが昔ながらの強制開閉式だったのに対して、GS400は負圧式を選択し、バランサーの駆動方式は開発途中でチェーンからギヤに変更されているのだが、おそらくその選択と変更は、4スト不等間隔爆発との相性を考慮した結果だったのだろう。
ENGINE:4気筒と2気筒で数値を共有
GS400が搭載する並列2気筒は、同時期に開発されたGS750の並列4気筒と数多くの数値を共有。
具体的なデータを挙げるなら、65mmのボア径(ストロークは400:60mm、750:56.4mm)、吸排気ともに30.5度のバルブ挟み角、IN:36/EX:30mmのバルブ径、30.32/28mmのクランクジャーナル/ピン径、120mmのシリンダーピッチ(GS750の外側は110mm)などはまったく同じだった。
余談だがGS550の数値は、56×55.8mm、35度、IN:32/EX:27mm、30.32/28mm、110mm。
ギヤ駆動の1軸バランサーはクランク前部に設置。始動はセル/キック併用式で、カムチェーンテンショナーは当初から自動調整式を採用。
キャブレターは負圧式のミクニBS34。当時のスズキは新時代の気化器に積極的な姿勢を示しており、’74年以降のGT750やRE-5にも負圧式を採用していた。
FRAME&CHASSIS:スポーツランが楽しめるシャーシ
ダブルクレードルフレームの基本形状は、初期のGSシリーズ全車に共通。ただし、400はクランクケース前部にバランサーが備わるため、エンジン搭載位置は750/550より後ろ寄りとなる(シリンダーとダウンチューブのすき間が広い)。
キャスター:28度、トレール:94mm、軸間距離:1385mmという車体寸法は、GS750の27度/106mm/1490mmと比較すれば、運動性重視と思えるものの、当時の400ccクラスの基準では安定指向だった。
ステアリングヘッドパイプ後方に3本のパイプ、トップチューブ+左右タンクレールが備わる構成は、背骨1本が普通だった当時の350~400ccクラスの基準で考えるとかなり豪華。
足まわりは同時代に販売された、350~400ccロードスポーツの定番と言うべき構成。フロントフォークはφ33mm、リアはサスはツインショックで、調整機構はリヤのプリロードのみ。フロントディスクはφ224mm、リアドラムはφ180mm。
背骨が3本の構成はGSシリーズ全車に共通だが、750の左右タンクレールが、緩やかなアールを描きながらスイングアームピボットに向かうのに対して、400の左右タンクレールはキャブの上方まで。そこから下は別のパイプを溶接している。
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