新たな350cc/650cc単気筒モデルが来る!

BSA本格再始動! ブランニュー「バンタム350」「スクランブラー650」試乗インプレッション

BSA本格再始動! ブランニュー「バンタム350」「スクランブラー650」試乗インプレッション

かつて英国最大を誇ったバイクブランド、BSAが完全復活を高らかに謳った。2021年に完全新設計の「ゴールドスター650」を発売。そしてこのたび、新たな世界戦略車2台を発表。その発表会で感じた2つの新型車とBSAブランドを紹介する。


●文/写真/試乗:河野正士 ●写真:BSAモーターサイクル ●取材協力:ウイングフット

世界の二輪市場にBSA復活を知らせる2台の新型車

BSAブランドが再び動き出したのは2016年。自動車や二輪車、物流や不動産など多角的に事業を展開するインド/マヒンドラ・グループが、新たに起ち上げたクラシックレジェンズ社によって復活したのである。その後、英国のデザインチームとマヒンドラの二輪部門R&Dおよび製造部門がタッグを組み、2021年に新型「ゴールドスター650」を発表。2025年から欧州以外での販売にも乗り出した。それとタイミング合わせるように発表されたのが「バンタム350」と「スクランブラー650」だ。

「スクランブラー650」は2025年はじめに英国で行われたモーターサイクルショーで発表されたゴールドスター650をベースにしたスクランブラーマシン。価格を含めて詳細が発表されたのは、これが初めてとなる。

またBSAにとってバンタムと言うモデルは、1948年にデビューし、以来バリエーションを増やしながら1971年まで販売したBSAブランドを支えた小排気量スタンダードモデル。「バンタム350」は、クラシックレジェンズ社がインドで展開する他ブランドにも搭載される、排気量334cc水冷単気筒DOHCエンジンをアレンジして搭載。強豪ひしめく350カテゴリーに投入するスタンダードバイクに仕立て上げてきた。BSAの日本総輸入元のウイングフット社は、ゴールドスター650に続き、今秋を目処に2つのニューモデルを日本に展開する準備を進めている。

Bantam 350
●価格:69万8500円 ●国内取り扱い予定色:黒、青、赤 ●発売予定時期:2025年秋

主要諸元■軸距1440mm シート高800mm 車重185kg(装備)■水冷4ストローク単気筒DOHC 334cc 29ps/7750rpm 3.02kg-m/6000rpm 変速機6段 燃料タンク容量13L■タイヤサイズF=100/90-18 R=150/70R17 ※諸元は欧州仕様

Scrambler 650
●価格:117万9200円 ●国内取り扱い予定色:黄、灰 ●発売予定時期:2025年秋

主要諸元■軸距1463mm シート高820mm 車重218kg( 装備)■ 水冷4ストローク単気筒DOHC 652cc 45ps/6500rpm 5.61kg-m/4000rpm 変速機5 段 燃料タンク容量12L■タイヤサイズF=110/80-19 R=150/70R17 ※諸元は欧州仕様

かつて英国最大を誇ったBSAブランド

What’s BSA?

バーミンガム・スモール・アームズの頭文字を取ってBSA。アームズが武器や兵器を表すことからも分かるとおり、そもそもBSAは小型銃器の製造からスタートした。始まりは1854年、当時英国随一の工業都市だったバーミンガムで、14人の職人が銃器などを
製造する会社を設立。1861年に社名をバーミンガム・スモール・アームズとした。

そのBSAのなかにバイク部門が誕生したのが1903年。そして1910年に初の二輪車を発売した。以降二輪車は、工業国としての英国を象徴する工業製品であり、数多くの二輪
車ブランドが興り、高い技術力とデザイン力で世界の二輪市場を席巻していく。

BSAはそのなかにあって英国ブランドを牽引する存在であり、1950年代半ばにはトライアンフも傘下に収める英国最大の二輪車ブランドとなっていた。しかし1960年代に日本車が世界市場で注目を集め始めると徐々に業績が悪化し、1973年にBSAブランドは消滅したのだった。

苛烈を極める350カテゴリーに参戦するBSAの新たな世界戦略車「バンタム350」はド真ん中のネイキッド・シングルだ

「バンタム350」のコンセプトは、低価格で移動手段として使いやすく、なおかつバイクの根源的な楽しみに溢れていること。したがって、車体はとてもコンパクトだ。よりクラシカルなスタイルを求めたロイヤルエンフィールドのクラシック・シリーズや、ホンダGB350シリーズは、前後ホイール径が大きく、それに合わせて車格も大きくなっている。「バンタム350」が17インチホイールを採用した理由は、スポーティなハンドリングよりも、混雑した街中で生活する都市生活者の移動手段としてキビキビと走ることを目的としている。したがってデザインにおいても、ネオクラシックな装いと言うより、シンプルでオーセンティックという表現の方が合っているだろう。

Bantam 350

走りのパフォーマンスにおいても、そのコンセプトが貫かれていると感じた。排気量334cc水冷単気筒DOHCエンジンは、BSAブランドを管理するクラシックレジェンズ社がインドで展開する、チェコ生まれのJAWA( ヤワ) やインド生まれのYezdi( イェズディ) にも同系統のエンジンが採用されており、そのディテールを変更して搭載されている。DOHCを採用することで、幅広い回転域で扱いやすい出力特性を造り込んでいる。

今回の試乗ルートは、制限速度が低い(35~50km/h程度) ロンドンの街中が中心で、交通量が多く、舗装状況も変化に富んでいた。そんな状況であえて4~5速という高めのギヤを選択し、2000~4000rpmあたりを使うイジワルな走行したが、ギクシャク感も少なく、スムーズな走行ができた。低回転域で力強いトルクを感じるロングストロークエンジンのフィーリングとは異なる、軽やかなトルクが印象的だった。

わずかな距離だったが6000rpm以上エンジンを回して、速度を上げて走ることもできた。その領域ではDOHCというバルブの駆動方式、29psという出力も相まって、じつに気持ちが良い。エンジンの伸びが良く、パンチもある。高回転域を維持したスポーティな走りも、次回はぜひ試してみたい。

シート高は800mm。ややシートの角が張っている印象はあるが足つき性は良く、両足の踵が浮く程度である。(身長170cm、体重65kg)

バンタム350の元ネタは?

【D1 Bantam (125cc/1949 年)】ドイツDKW社から提供を受けた設計をベースに、BSAがレイアウト変更を加えた排気量123cc空冷2ストローク単気筒エンジンを、リヤ・リジッドの、クレードルタイプのフレームに搭載。フロントにはテレスコピックフォークを採用していた。

【D14/4 Bantam (175cc/1968 年)】DKW製エンジンの設計をベースに、BSAが改良を加えた排気量175cc空冷2ストローク単気筒エンジンを搭載したD14/4バンタム。輸出仕様車としてスポーツバージョンのほかオフロードバージョンもラインナップされていた。

スムーズかつパワフル。摩訶不思議なビッグシングル「スクランブラー650」

ゴールドスター650とプラットフォームを共有する「スクランブラー650」。排気量652cc水冷単気筒DOHC4バルブ・ツインスパークのドライサンプエンジンを、スチールパイプ製のダブルクレードルフレームに搭載。スクランブラースタイルに合わせて前後足周りや外装類を変更している。

そのエンジンフィーリングは、じつに表情豊かで扱いやすいものだった。1800rpmで最大トルクの約70%を発揮するよう躾けられたエンジンは、市街地を走る速度域であれば、どのギヤを使っていてもどの回転域からでも、アクセルを軽くひねれば車体がスッと前に出ていく。その挙動はじつにスムーズで力強い。これは、2つのカウンターバランサーが内蔵されていることも大きいだろう。

Scrambler 650

そして回転数を上げていくと、その滑らかさは維持したままパンチ力が強まり、エンジンピックアップが早まって、車速が乗っていく。旧車ビッグシングルとも、排気量が近い二気筒エンジンのフィーリングとも違う、ちょっと歩幅が広い、小気味良い加速感だ。

今回の試乗は、高い速度域やスポーツライディングを試すことはできなかったが、その領域でもビッグシングルエンジンの楽しさを垣間見ることができた。

スクランブラー650の元ネタは?

【B34 Gold Star Scrambles (500cc/1961 年)】当時、世界最高峰のスポーツモデルだったB34ゴールドスターのプラットフォームを流用したスクランブラーモデル。ヤマハSR500の前身XT500は、米国の砂漠を走る、このマシンのポテンシャルが開発初期のベンチマークとなっていた。

【A65 FIRE BIRD SCRAMBLER (175cc/1968 年)】BSAのツインエンジンシリーズ/ A7やA10を改良、ミッション一体型のクランクケースを持つツインエンジンシリーズ/A65 系エンジンを使い、ロードスターモデル/ライトニングロードスターのフレームに搭載したスクランブラーモデル。

バンタム350のディテール

エンジンは排気量334cc水冷単気筒DOHC4バルブ。事前情報では、クラシカルなスタイルを採用しインドで展開しているJAWA 350というモデルのプラットフォームを流用しているとの情報だったが、エンジンの外観はインドで展開している兄弟ブランドYezdi(イェズディ)がラインナップしている350 シリーズに類似していることから、両ブランドの良いとこ取りで価格を抑えていると考える。前後サスペンションはインド・ガブリエル製、ブレーキはBYBRE(バイブレ)製を採用する。細身のラジエターは目立たないが、市街地走行中は頻繁に電動ファンが回っていた。

バンタム350のカラーバリエーション

国内取扱予定のカラーバリエーション。左からオックスフォードブルー、ファイアクラッカーレッド、バレルブラック。

こちらは今のところ取扱予定なしのカラーバリエーション。左からアヴァロングレー、ビクターイエロー、ブランズウィックグリーン。

スクランブラー650のディテール

排気量652cc水冷単気筒DOHC4バルブ・ツインスパークのドライサンプエンジンは、ゴールドスター650と共有。軸配置などの設計はロータックス社から提供を受け、大学との協業によって新たにエンジンを設計している。クラシックレジェンズ社は英国にデザインスタジオを持ち、スクランブラー650 を含む新生BSA モデルはそこでデザインされている。前後サスペンションはインド・ガブリエル製、前後ブレーキはブレンボ製を採用。スクランブラースタイルに合わせて、フロント19 インチホイールに変更。タイヤにはピレリ製スコーピオンラリーSTRをセットする。

スクランブラー650のカラーバリエーション

左の2色は国内取扱予定のサンダーグレー、ビクターイエロー。右端のレイヴンブラックは今のところ取扱予定なしだ。

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